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バスケットを持って、寝室に運ぶ。
ゆっくりとバスケットの蓋を開けると、すやすやと眠っているマーニャたちと、口元がどこかにやけているような気がするプーちゃんが入っている。
「プーちゃん、なんか嬉しそうだね。口元がニヨニヨ動いている気がする」
「そうね。なんか見ているとムカついてくるわ。マーニャ様たちに踏まれて寝ているなんて、なんて羨ましいのかしら」
おっと。マリアから殺気が漏れているような気がする。
「ま、まあ、寝ているみたいだからこのままバスケットの中に寝かせておこうか。起きたら自由に動けるようにバスケットの蓋は開けておこう」
「そうね。マーニャ様たちが目覚めてプーちゃんを見た瞬間が楽しみね」
そう言ってマリアが笑った。
目が全然笑っていないけど。
なんか、マリアの身体から黒いモヤみたいなものが漂っているような気がするんだけど、気のせいかなぁ?
「さ、マユ。化粧水を作ってしまうわよ。錬金釜を用意して?」
私は、寝室をあとにすると昨日買った錬金釜を取りだして、テーブルに置いた。
「錬金釜の中に薬草をいれて。そして薬草がヒタヒタになるくらいに山の湧き水をいれて」
私はマリアに言われたとおりに、バックから薬草を取り出して錬金釜の中にいれる。
それから、山の湧き水を錬金釜の中にいれた。が、まだまだバックの中には沢山の薬草と山の湧き水が入っている。
ちょっと採取しすぎたかしら?
「入れたら錬金釜を蓋して、魔力を錬金釜に込めてね」
「魔力をこめる?」
どうやって?
魔力の込め方なんて知らないんだけど。
「コンロの使い方を思い出して。あれも魔力を込めてコンロの火加減を調整したでしょ?あれと同じ感じで魔力を錬金釜に込めるのよ」
うーん。
よくわからないけど、コンロの時と同じ感じかぁ。コンロでも慣れるまでに時間がかかったんだけど、錬金釜はどうだろう?
うまくいくかな。
とりあえず、
「おいしくなぁ~れ」
と言いながら魔力を込めた。
ん?おいしくなぁ~れ?
あれ?化粧水って美味しかったっけ?
「マユ、化粧水は飲み物じゃないわよ?美味しくなれってのは違うのではないかしら?」
「ご、ごめん。思わず言っちゃった。料理とかだと美味しくなれって思いながら料理するでしょ?それと同じ調子でつい」
間違えた。
恥ずかしい。
これ、化粧水作るの失敗しないよね?
「まあ、いいけど。でも魔力はちゃんとに込められたみたいね。上出来だわ。これで数日間待つと化粧水が完成するわよ」
「結構簡単だね。待っている間は何をしたらいいの?」
「なにもする必要はないわ。ただ出来上がりを待てばいいのよ」
「そうなんだ。意外と簡単なのね」




