崩れかけてゆく日常(前編)
翌日、俺は普通に登校していた。
いつもの道を、雫と一緒に。何事もなく。
俺達の登校時間はだいぶ早い。
だからと言って部活に入っているわけではない。
いつもクラスで一番早く来て、教室を開けて、
雫と一緒に話したり、ボーッと外を見たりする日常を送っていた。
だが、今年度はそうはいかないらしい。
教室の扉を開いたら、長里 冷実安が自分の席に座って空をボーッと見ていた。
まるで、いままでの自分を見ている気分だ。
そして彼女は俺に気づいたのか、昨日と同じような不気味な笑顔を浮かべて、
「あら、結構早いのね」
と、まるでお決まりのようなセリフを言ってきた。
(何だ、このイライラは)
「お前こそ、早いじゃないか」
「私はいつもこの時間だからね」
(お前昨日転校してきたばかりだろ)
と心中ツッコミをしながら自分の席についた。
ちなみに俺の席は一番窓際のど真ん中にある、
ついでに長里の席はその二つ後ろだ。
荷物の整理だけやって雫のクラスに行きたいのだが……
「そういえば、雪成君は知ってる?「天」への行き方」
そんなことを聞かれたら、体が動かなくなるのも無理はないと思ってほしい。
しばらく沈黙が続いた。と言っても数十秒程度の間だが。
俺は辛うじて言葉を出すことができた。
「それは易々としゃべれる事じゃないだろ。それに、俺はお前の能力を知らない。そんな情報が不確かな奴に簡単には情報のやりとりはできない」
「そういえば、言ってなかったね!」
(真面目に忘れてたのか?)
「いい機会だし、今のうちに教えておくね」
そして、長里 冷実安は淡々と告げた。
「私の能力は普通の肉体強化。ああ、でも、「階級」は四と結構高い方ね」
先程、彼女が言った「階級」というのは、
文字通り能力者間での個が持つ能力の強さの強弱を表している。
階級は一から五まであり、一が1番弱く、五が1番強い。
ちなみに俺の能力は五にあたるらしい。
何故知っているのか?と聞かれたらどうしようもない。
「知ってしまうのだから仕方ない」と答えるしかないのだから。
「なるほど、ひとまずスッキリした」
「そう?じゃあ教えてくれる?「天」への行き方を」
(そういえばそんな話をしていた気がする)
「あいにくと、俺は「天」への行き方を知らない」
「そうなの?階級五の君なら手がかりくらい知っていると思っていたのだけど」
「それは残念でした」
(階級五となれば、それなりに有名になるものだな)
「昨日みたいにしらを切る気は」
「ない。逆に俺はお前に聞きたいと思ってたところなんだが」
「おあいにくさま」
「そうか……」
あちらも知らないと来たか。こりゃあ打つ手が無くなってきたかな?
そうこうしていると、
ガララララ!
と擬音したくなる音が聞こえ、そちらに目を向けると、
少し怒ったような表情を見せる一雨 雫が教室の扉の前に立っていた。




