謎に包まれた教室
「……」
教室に静寂が訪れた。無理もない。
美人転校生がやってきたと思ったら、
学年でも結構ボッチな方の俺に話しかけてきて、
いきなり尋常じゃない速さのパンチをくりだして、
挙げ句の果てには俺の目の前に金属製の壁が現れたのだから。
逆に、この状況でのうのうとおしゃべりできる奴がいたら、俺はそいつに拍手を送りたい。
(ていうかこの女、この壁ぶん殴ったけど、手 大丈夫なのか?)
俺がボーッと、そんないらなさそうな心配事をしていると、
「聞こえなっかった?この壁は誰が造ったの?」
と、長里 冷実安がまた同じことを聞いてきた。
……もう一度言おう……
ため息しか出てこない。
「さぁな、誰かが造ったんだろ。」
俺はテキトーにそう返した。さっき心配して損した気分だ。
「あくまでしらを切る気?」
彼女は結構真面目に聞いてきた。
「ああ……あくまでしらを切る気だ。」
俺は少しぶっきらぼうに答えた。
自分で墓穴を掘ったわけではない。ただ、誤魔化すのが面倒になっただけだ。
彼女は俺のそんな答えを聞いて、
「そう……」
とだけ言った。
彼女はわざわざ突っ込まなかった。今この状況ではありがたい。
「……」
教室内の静寂は破れない。
彼女は自分で空いている席を見つけ、そのまま座ってジッとしていた。
少し右手の様子をうかがっている。
(やっぱり痛かったのか?)
俺はそんな呑気なことを考えていた。
そのままクラスの空気は凍りつき、
休み時間になるまで教室内は誰一人としてしゃべろうとはしなかった。




