束の間の楽しみ
雪成君は階級五第三位に昇格している設定です。
(今回は直接関係があるわけではありません)
方向使いとの一件も終わり、
世間はゴールデンウイーク……と言いたいところだが、
何分やることも無く、ただただ怠惰な時間を過ごし、
気付けば学校が始まっていた。
今現在ホームルームの時間であり、
「生徒の不安を取り除く」事と
「雪成君ともっと仲良くなる」という謎じみた目的から、
「腕相撲大会をします!」
と、ホームルーム長が声高らかに宣言する。
(……は……?)
俺は心の中で素っ頓狂な声を出す。
そんなこんなで始まった腕相撲大会。
皆してキャーキャーワーワーうるさい。
長里はお得意の身体強化で無双中。
(人間の力って何だっけ?)
そんな事を考えているうちに俺の番が来たらしい。
ちょうどいい、皆を黙らせるにはもってこいだ。
対戦相手と対峙する。
向こう側が何かをほざいていたが、覚えていない。
手を取り、肘をつく。
審判役の先生が合図をする。
その瞬間、
相手の右手が一瞬で机にダイブする。
「…………」
辺りは静けさで溢れていた。
何が起こったのか、簡単だ。
手を組んだ相手側の空気を抜き取り筒状の真空空間を創り出す。
真空空間の側面になる空気を止めてやれば勝手に相手の腕は倒れる。
相手は「押された」と言うよりも「引っ張られた」と感じるだろう。
俺は無言で自分の席に着く。その瞬間、
「「うおおおおお!!!」」
と、むしろ、うるさくなってしまった。
という風に時間は流れていき、決勝戦。
俺 対 長里
というなんとも「うん、知ってた」と言わざるを得ない組み合わせである。
長里の方も苦笑いだけして何も言わない。
仕方なく準備をする。
「レディー……ゴー!」
と先生が合図を出す。
俺はいつも通り真空空間を創り……出したはずなのだが……
(こいつ本当に人間か?)
なんと、長里の右手は真空状態の空間に引っ張られる力に反抗して
その場に佇んでいる。
俺は再度考える。
(人間の力って何だっけ?)
その後の結果は誰も知らない。
と言うのは冗談で、流石に力尽きた長里が負けを認めた。
(お前、階級五になれよ)




