能力者
先程の自己紹介に、嘘偽りはない。
だが、誤解を招きかねないので、少し補足をしておこう。
名前は雪成 流、今年度から高校二年生の普通の男子生徒だ。
だがそれは、俺の持つ「原子操作」の能力がなければの話だ。
俺は生まれつきこの能力を持っている。
一般的な人間は、「自分が魔法や超能力を持っていたらな」なんてことをよく考えるのだろうが、俺は「こんな能力はいらない」と常日頃のように思っている。
この世界には俺以外にも能力者は何人かいるらしい。その中で「異能な力を持っているから」というような勝手な理由でバケモノ扱いにされるということも少なくはないと聞いたことがあるからだ。
つまり何を言いたいのかと言うと、俺は普通の人間として生きていたい、
ということだ。
誰の平凡も壊さず、自分の人生が何か特別なことがあるわけでもない。
だがそれは、かなわぬ夢なのかもしれない。
教室内が騒がしい。無理もない。
「原子を操る雪成 流がいると聞いた」「雪成 流はどちらですか」
みたいなことを転校生である長里 冷実安がいきなり言ってきたのだから。
俺は正直迷っていた。このまま名乗り出るか、それとも黙秘を続けるかを。
どちらにしても、見つかるのは時間の問題だ。
名乗るのも面倒なので俺は黙秘を続けようと思った。その直後に、
「雪成君の席はそこだよ」
と、担任がいらぬことを言ったせいで、彼女は即座に俺の席の真横へ歩いてきた。
そして彼女は俺の方を向き、少し不気味な笑顔を向けてくるので、俺はそんな彼女を座ったまま睨みつけた。
「はじめまして、雪成 流さん。そんなに睨まなくてもいいじゃないですか」
彼女の不気味な笑顔は変わらない。
「原子を操る?人違いでは?」
俺はしらを切った。厄介事には首を突っ込みたくはないからだ。
そして彼女が、「へぇ……」と一言つぶやいた後
シュッ
という擬音が似合いそうな音をさせながら
人間では到底出せそうもない速さで拳がとんできた。
目と鼻の先とも言えそうな至近距離で、だ。
「……人違いなら……」
彼女は少し間をおいて、呟くように聞いてきた。
「……今、あなたを守っている金属の壁は誰が出したのかしら?」
……ため息しか出てこない。




