階級五
「アハハハハハ!そりゃまた大変だったね!」
「あのな雫?笑い事じゃないと何度言えば分かる?」
雫がこんなにも笑っている理由はもちろん、
俺が昨日の一件の事をこいつに喋ってしまったせいである。
ちなみに昨日、
花道が急に泣き出したので、それをあやして、彼女を無事家まで送って、
そうこうしているうちに時間は過ぎていき、
宿題も半分程しか終わらせていなかったため、
すべて終わらせると、なんということか
5時が来てしまいそうな時刻になっていた。
そして俺が起きる時刻はいつも6時半と設定している。
どれだけ原子を操ろうが、時間の進みを変えることはできないし、
目覚まし用のスマホは、律儀に任務を遂行するし、
そして、生物というのは眠りにつくのに思いのほか時間を使うから、
満足に眠れたのは1時間程度である。
よって、この結果から生み出される俺の状態は……
「眠い」
ということになる。
キーンコーンカーンコーン
「ヤット、ヒルヤスミダー!」
「ナガレン?大丈夫?」
「ゼンッゼン、ダイジョウブジャナイ」
「昨日は動き尽くし、そして眠れたのは1時間程、そこから4時間の授業、
これは、いくら雪成君でもつらいでしょ」
(うん、つらいね)
長里さんがしっかりと理解してくれている。
これが思いのほか嬉しかった。
「にしても……なんで階級五じゃないんだろう?」
雫が呟くように言った。
「ン?」
「あ、いや、あの、
その花道さんって子の能力、
すごく便利そうなのになんで階級五じゃないのかな?って」
「ああ、その事だったら雪成君に聞いた方が……」
「階級五っていうのは定員制なんだよ」
階級五という位は全10名の能力者で構成されている。
階級四までは純粋な能力の強弱を表しているが、
階級五だけは、下剋上の制度を導入している。
俺はその中でも「階級五第四位」にある。
階級五内での勝負で勝てばその順位が上がり、
階級四以下が階級五との勝負に勝てば新たに
「階級五第十位」という位につける。
ちなみにこの順位の変動は「一対一」の戦闘でないと行われない。
つまり、「一人対団体」「団体対団体」では、
順位の変動が行われないということだ。
「そういうことなんだ」
「そう、だからあの女は俺を誘ったんじゃないか?」
「ふうん……」
(興味なさそうだな?自分から聞いておいて!)
「っと。そろそろ時間だし、戻ろうか?」
「ああ」
「そうだね」
長里の呼びかけに俺と雫は肯定の意志を表す。
(あー、眠いー!)
教室に帰ると、クラスの8,9割が俺に視線を向けた。
(ナニコレ、コワイ)
というなんとも気の抜けたことを考えていると、
クラスの女子が一人、こちらに近寄って、便せんを渡してきた。
「あの……変な人からこれを雪成君に渡してくれって言われて……」
(なるほど、またお誘いか)
にしても、最近の能力者は手紙が好きなのかねえ?
中身を確認すると、
階級五第四位、 雪成 流 殿
少し話したいことがあるので、
次の日曜日の昼に君の学校の屋上に来てください。
階級五第一位 より
確認し終えた直後、俺はこの紙を握りつぶしてポケットに突っ込んだ。
まったくもって憂鬱だ。憂鬱過ぎて眠気が覚めた。
くどいような、ひさしぶりなような台詞を言わせてもらう。
ため息しか出てこない。




