少女との戦い
暗かった、寒かった、怖……くはなかった。
「子供がこんな時間になにしてんだ?」
「子供じゃないもん!」
(いや、子供だろ)
「いい?私はあなたに決闘を申し込んでいるのよ!
私はあなたの敵なの!分かってる?」
(その言い方が子供っぽいということに気付いているのか?)
「ああ、よーく分かった。まあ、君のことも一応知ってるからな」
花道 祈
能力は「空間接続」階級は四。
空間に穴のような道を作り出し、
その穴に物を通すことで別の場所に移すことができるらしい。
どこでこの情報を聞いたのかは覚えていない。
「で?君は俺の敵ってことでいいのかな?」
「ええ、そうよ。私はあなたと戦いにきたの」
「そっかー」
じゃ、遠慮なく。
俺は即座に剣を2本作り出して、彼女に向けて打ち出した。
だが、2本の剣は彼女から1メートル程離れた所で姿を消し、
俺の頭上に現れた。
俺はすぐに剣の動きを止めて、空気に戻した。
「へえ、あんまり驚かないんだ」
「想定内のことに驚くことはないと思うのだが?」
「ま、そうだろうね」
そう言うと花道は、自分の能力で短刀を取り出した。
(おお、便利!)
そんなことを考えてるうちに、
花道は能力による「穴」を無数に作り出し、
それらを俺に向けていた。
「私の家系は結構お金持ちでね。
私の能力にあわせて沢山の武器を持ってるんだ」
それを言った途端、彼女は少し笑って、
「どれだけ防げるかな?」
そう言った瞬間、目の前から無数の刃物が高速で飛んできた。
何かのゲームかアニメでこんな戦い方をする奴を見たことが……
あるような無いような……
最後に一つ聞かせて。
(何故短刀を1本取り出した?)
無数の剣は俺の体を容易く貫き、俺はその場に倒れ込んだ。
静寂が訪れた。
雪成 流はその場で横になっており、腹部や背中から血を流したまま、
ビクともしなかった。
「……何よ。階級五とか言って、全然強くないじゃない!
まったく呆れるわ!」
その瞬間、
「まったくだ!
俺の情報がこんなにも広まってないと思うと、
呆れを通り越して笑えるよ!」
「……?!」
雪成 流は何本もの剣を体に刺したままムクリと起き上がる。
「そんな!あれで生きてるわけが……!」
「まあ、普通に考えればね」
そう言った途端、雪成に刺さっていた剣が、
雪成の体に刺さっていた分だけが無くなったかのように、
バラバラと床に落ちていった。
「どういうこと?」
「俺の能力が原子操作ってことぐらい知ってるよな?
俺はお前の剣を消したり再製したりしたんだよ。
体に当たる直前にな」
「そんな!どれだけ莫大な計算を?」
「計算?そんなこと一々やらなくてもいいじゃん」
「え……?」
鳩が豆鉄砲を……というのはこの事を言うのだろうか?
「いいか?
能力者はな、能力を使った後のことを計算するんだ。
能力の使用事態には計算はいらない」
花道はいわゆる点目状態、だが俺はそのまま喋り続ける。
「あと、お前の能力。あんまり自動性はないらしいな
さっきの攻撃の中で俺の作った剣で2~3本弾いたけど、
お前の能力に回収されなかったし」
花道は図星を突かれたかのように押し黙っている。
俺はそれをいいことに喋り続ける。
「お前の能力、五感で認識していないものには反応しないものだな?
お前の後ろにある剣をどうにかしようとする気配も感じないし」
「な……!?」
花道は後ろを向く。
そこには俺の言うとおり、少し大きめの剣が花道に向けられていた。
花道は自分の顔を恐怖で染めて、その場に座り込んだ。
「お前、近所のお嬢様中学校の生徒だろ?
そんな奴が無駄に戦いを挑むんじゃねえ」
真の戦場を知らない者が、
それを知ってしまった者に戦いを挑むことが、
……どれだけ無謀なことか……




