始まり
周りに流され続けて26年。工場勤務、彼女なし、実家暮らし、貯金0。友人からは残念なイケメンで定評のある新井悠汰はどうにかなるだろう精神で今日も退屈な毎日を生きていく。。。はずだったけど?、、、ここはどこだ?
コンビニから一歩外を出ると森の中だった!異世界に飛ばされてしまった新井悠汰の伝説級の物語が今、始まる!と思っていた時期が僕にもありました(笑) やる気0の転生者は、過酷な異世界生活に耐えられるのか!?
「えっと、、。」
振り返っても何もない。何もない筈がないのだ。
新井悠汰は小腹が空いたんでコンビニで夕食を買って出入り口から出たら、そこは木々の中。
もう一度振り返ると木、木、木。
――――ココドコ、、、?
「ココドコ!?どこだよ!!えっ!?ちょっと待って!!わけわかんないんだけど!!」
本気で焦ると女言葉になるのがコンプレックスらしいが、母子家庭で育った為、仕方ない事だと本人は納得している。
「やばい。やばい。やばい。やばい。暗い森に一人とかありえない。幽霊?心霊現象?動いていいのかな、、、?でも、動かないとあれだしな。あぁ、もう!めんどくさい!!!」
めんどくさいと思ってから行動に移すのがいつものパターンだ。
歩き出した悠汰は、コンビニ袋の中身をもう一度確認する。
おにぎりが2つとスパゲティにアメリカンドッグとカフェオレ。
そして、タバコがワンカートンとおまけについてくるライターだ。
早速、タバコを一つ取り出し、一本口にくわえ火をつける。
「、、、、ふぅー。」
山の中で歩きタバコをしているという自覚が悠汰にはない。
これは注意しなくてはいけない。
((歩きタバコはよくないぞ。山火事にでもなったらどうするんだ?))
悠汰の動きが止まった。いや、時間が止まったと言っていいほど止まった。
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悠汰の時間が動き出した。
吸っていたタバコを地面にぐりぐりと押し付けポケットに入れて、歩き出した。
何事もなかったかのように、歩き出した。
((無視するんじゃないよ。聞こえているんだろ?))
もう一度呼び掛けてみるも、悠汰は無言で歩いている。
ただ先ほどとは違い手足が震えている。
((だーかーらー。無視するんじゃないよ!!!!))
少し苛立ちを覚えたので、次は強めに怒鳴ってみたすると悠汰は辺りを見渡して、うん。と頷くと全速力で走った。
顔はぐしゃぐしゃに濡れて、ぁぁぁぁっと弱弱しく声を出しながら走っている。
時折、幽霊だ。聞こえちゃいけない声が聞こえる。等、おかしなことを言っている。
((あのー。幽霊じゃないから、一旦落ち着いてくれないか?止まって?))
悠汰は止まらない。
((止まって?))
悠汰は止まらない。
((最後の忠告だよ?止まって?))
悠汰は哀れな声で喚きながらも止まってくれない。
ならば、もう仕方がない、、、。
【止まれ】
ピタッと悠汰は止まった。だが口だけはパクパクしている。
((最初に呼び掛けた時みたく止まってくれればこうはならないのにさぁ。なんで逃げるの?))
悠汰は口をパクパクしている。
威圧の効果が強すぎたみたいなので解除する。
悠汰は操り人形の糸が切れたように崩れ落ちた。
「殺さないで、殺さないで、殺さないで・・・」
威圧の効果が強すぎた。
脈と一緒に悠汰の動きが小刻みに揺れている。
((あーっ。ごめんね?ちょっと威圧が強すぎたみたい。殺したりなんかしないから怖がらないで、悠汰。危害を加えるつもりはないよ?))
「本当ですか、、、?幽霊じゃないの?」
((幽霊じゃないよ。姿が見えないから不安なんだろう?))
「でも、耳を塞いでても声がちゃんと聞こえるし。現在進行形で、、、。」
((あぁ。それは念話だよ。あと、話してる最中に耳を塞ぐのはどうかと思うよ?))
「す、すみません。現実を受け入れきれなくて、、、。え?なんで僕の名前知ってるんですか?そもそも、これって現実なんですか?ゆ、夢ですよね!あは。あはははは!」
やばい。悠汰が壊れた。
((ちょっ!落ち着いて!そ、そうだ!私の姿を見せるよ!))
そう言って視認妨害を解き、姿を現す。
「あはははは!あは?チワワ?え?ルナちゃん?」