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「我輩を眠りから覚ませたのはお前たちかーーー?」
我輩は眠い目をこすりながら尋ねたお。変態紳士の名に恥じぬよう、極力ジェントルメンな聞き方をしたお。
「くそっ…悪魔神官め、自分を生贄に邪神を復活させたぞ!」
「みんな、最後の戦いよ!」
そしたら何故か、いきりたったDQN4人に囲まれたお。クラブ仕様になってる海の家の前を通った時ぐらいのドキドキ感だったお。あっという間にボコボコにされたお。
「えっ、ちょ…」
DQNのリーダ格のチャラ男が何やら輝く玉を懐から取り出し、瀕死の我輩に向けたお。
「邪神よ、異次元へ吹き飛べ!」
「えええ…」
こうして理不尽に吹き飛ばされた我輩、邪神。51歳の秋のできごとだったお。
「我輩、寝てただけなのに酷いお…いきなり4人がかりでフルボッコにされた上、こんな異世界の島国まで飛ばされて…ツライお…」
新しい我輩の拠点、日本にある一軒家「よこしま邸」で今日も昼酒がすすむお。「よこしま」というのは世を忍ぶ仮の名前だお。
「こちらは丸腰なのに、バフもデバフも盛りだくさんでしたよね」
我輩を慰めてくれるのは一緒に異世界に飛ばされてきた水の眷属みっちゃん。清楚な黒髪セミロング。巨乳だお。今は人間に紛れてOLをやってるお。大切なことだからもう一度言うけど巨乳だお。
「DQN怖いお。もう外に出たくないお…」
「20ターン一方的に痛めつけられましたもんね」
みっちゃんは話がわかる女だお。さすが巨乳だお。
「涙が止まらないお」
我輩がさめざめと泣くと、みっちゃんは頭をナデナデしてくれるお。ぶっちゃけ、コレが目当てで異世界に飛ばされて半年間、毎日泣いて暮らしてるお。
「邪神様、そろそろ悪いお酒になってきたから、今日はこの辺にしましょうか」
みっちゃんは優しいお。巨乳ボイスが耳に心地いいお。ペロペロ。
「ちょっと、みっちゃん!邪神の服とアタシの服、一緒に洗わないでっていったじゃん!」
ちっ…耳をつんざくような貧乳ボイスだお。廊下をドタドタ走る音も下品で貧乳感全開だお。この貧乳女は火の眷属だお。ピンクのツインテール女子高生とか何世代前の流行だお?とりあえず育乳しろって感じだお。
「ひぃちゃん、そんなこと言っちゃダメでしょ?」
「みっちゃん、こんなギャル丸出しの小娘に優しくすることないお!火の眷属は火の眷属らしく、どっかの掲示板か何かで炎上でもしてればいいお!」
小娘にも優しく言い聞かせるみっちゃん。乳どころか懐までデカイとは恐れ入ったお。でも、こんな女には塩対応で充分だお。小娘が我輩を睨んでいるお。乳が貧しいから心も貧しいようだお。哀れな女だお。
「無職のオッサンのクセにうっせーんだよ!」
「ーーーー!」
小娘の心無い一言に我輩は目を見開いたお。我輩の表情を見てみっちゃんが顔をしかめたお。
「ひぃちゃん!」
実は我輩、目を見開いたのはみっちゃんの怒った顔が見たかっただけなんだお。巨乳は怒った顔もオツなもんだお。
「ってかこっちに来てからの邪神の喋り方なんなの?キモいんだけど」
まったく、細かいことをグダグダと…乳も器も小さい女だお。
「“お”をつけるのが人間界のメジャーな喋り方なんだお!」
世間知らずの小娘には、こういった一般常識までレクチャーしないといけないから面倒臭いお。
「語尾に“お”とか…もはやネットですら化石の語り口調じゃないですかぁ〜?」
「あら、フーくん。お帰りなさい…って邪神様にそんなお口のききかたダメよ」
いきなり会話に入ってきたこいつは風の眷属だお。小学生とか義務教育も終わってないくせに一丁前の口を叩くオスガキだお。呼んでもいないのにとんだKY野郎だお。男には貧乳以上に用がないお。眷属面接の時に巨乳変化していたから採用したけど、とんだ詐欺だったお。経歴というか経乳詐称で訴えたいくらいだお。髪が緑なのもスカしてて生意気だお。
「マジで今どきVIPPERでもそんな喋り方しねーっつーの」
「でっすよね〜」
ガキが2匹集まると、とんでもなくうっせーお。魔界イチ温厚な我輩でも声を荒げたくなるお。
「やかましいおぉ!眷属の分際で口答えすんなおぉ!」
「…」
「…」
ふひひ。我輩のバリトンボイスにビビったのか2匹とも静かになったお。いい気味だお。
「…ひぐっ…ひぐっ」
「フーくん?」
なんと、お灸が効きすぎたのかオスガキが泣き出したお。それはそれとしてオロオロしてるみっちゃんも可愛いお。
「怖いよぉ〜…」
我輩の邪神としての才能が恐ろしいお。でもガキがチビるとみっちゃんの洗濯物が増えるお。
「フーくん、大丈夫よ。泣かないの」
みっちゃんの母性はとどまるところを知らないお。ガキがチビらないように優しく抱き寄せ…。
「って我輩の乳になにやってんだおぉぉ!」
今!まさに!クソガキがみっちゃんの乳を独り占めしてやがるおぉぉ!八つ裂きにしてやるおぉぉ!
「クスッ」
「あぁぁぁ!今コイツ笑ったおぉぉ!」
「邪神うっせーよ」
「貧乳は黙れおぉぉ!」
「テメー…燃やすぞこの野郎」
バカめ。我々の魔法は既にあのDQN4人組に封印されてるんだお!小娘はただの女子高生、オスガキはただの小学生、巨乳はただの美人すぎるOL、我輩はややポッチャリキュートなナイスミドルとして今後の人生をまっとうするんだお!
…………我輩、あの頃に戻りたいお。