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あの花の匂い

作者: 渡辺 ゆき

私と君は…


女の子の人気者で、友達も多く、彼の周りには常に人がいて賑わっている。優しくてまぶしくてスポーツ万能で勉強も毎回学年トップ。そして、何よりもイケメンだ。


すれ違うたび、視線に入るたびになぜか、彼を目で追ってしまうし、廊下を通る君が気になる。だって、同じ匂いがするし、私がどこかで知った匂いと似ているから。


でも、私はそんな簡単に話すことができない。気になるけど、そんな簡単に人に近づいてはならないから。


俺は、彼女のいる教室の窓が開いている時、廊下から見える彼女がなぜか、目に入った。


入学早々、俺と同じような匂いがした人がいた。その匂いが気になり、その匂いを辿るとそこには、彼女がいて…俺は彼女と同じだと思った。でも…もし、違ったらそれは、知られてしまうと思い、近づくことができなかった。だから、彼女を見つけた時、どうしてもどんなにかわいい子がたくさんいても彼女が気になってしまう。


私は…


俺は…


人間ではないから。


言い忘れていたが、1日に3回、ある物を口にしなければならなかった。それは、柔らかくてグミみたいな透き通った緑色の丸いもの。それを水と一緒に流し飲む。それを決まった時間に決まった数だけ、3回飲まなければ、元の姿になってしまう。もし、本当の姿になってしまい、人間でないとばれた場合、その場所には絶対にいられなくなる。そういう決まりだ。


そんなある日のこと。


先生に廊下で会ってしまい、

「中村!」

の呼ぶ。私は、それは勘弁と思い、

「私、今からトイレに…」

と誤魔化すと、

「いいから、教室に早く持っていけ!」

と言われ、結局教室に運んだ。すると、彼がいた。私は、「やっぱり、同じ匂いがする!」と思った。彼とすれ違うと、運んでいた物をばら撒いてしまった。私は、「最悪…」と思っていると、彼が

「大丈夫?」

とばら撒いた物を拾ってくれた。私は、

「ありがとう。」

と言うと、彼は微笑んだ。その微笑みに私は顔が赤くなった。その後に、

「あのさ…」

と口を開く。しかし、私が、彼を見ると、彼は、

「やっぱ、なんでもない…」

と言い、

「俺、持って行こうか?」

と言う。私は、

「大丈夫!ありがとう!」

と返すと、

「あ、そう。」

と行ってしまった。


放課後のこと。


図書館で本を読んいた。静かで唯一私が好きな場所。時間を忘れてしまうくらい読んでしまった。そこの窓から見えるオレンジ色の夕日がまぶしくてきれいだ。私は、落ち着きぼんやりしていて気が緩んでいると、いつの間にかいたのか、隣の席が彼だった。

「ねえ、もしかして…」

と彼が私に言う。私は、

「うん?」

と言うが、なかなか、何も言わなかった。しかし、しばらく間が空くと、私を見て、

「やっぱり、ネコ?」

と言う。

「え?」

とつぶやくように言うと、彼は、

「お前…同じ匂いがする…」

と言い、私の口にキスした。その時、私は、「しまった!」と思った。だって…私は…ネコの姿になってしまったから。そう、人間とキスをした場合は何もならない。しかし、同じ種類の場合、こうなってしまうのだ。元の姿になってしまう。私は、今この時を疑った。そんな慌てた私を見て、彼は再び、さっきとは違った甘いキスをした。私は、彼を振り払おうとしたが、できず、目を開けると、彼の姿は…目の前のいた人が…私は目を疑った。だって…同じネコだったから。


すると、ドアが開く音がした。彼は止め、私の手を引っ張り、隠れた。近い…私は、その時、ふと、思った。「この匂い…」と。

「翔!」

と呼ぶ声。彼を呼んでいる。私は、彼に、

「どうするの?」

と聞くと、彼は戸惑っていた。そんな彼を見たら、額の汗がすごい。私は、心配になり、

再び、

「大丈夫?」

と聞くと、その後に、私は彼に

「薬、持ってる?」

と聞くと、彼は、

「ハァハァ」としている。私は、自分が先に薬を飲み、その後に、彼に薬を渡した。

「はい!飲んで!」

と言うと、彼は、私を見て、抱きしめた。彼は薬を飲み、その人のところに行った。その彼の友達は、

「お前、何してたんだよ!」

と言う。その後に、

「また、女とやったんだろう。」

と言ったのに対し、彼は誤魔化し、行ってしまった。私は、時計を見ると、6時を指していた。


次の日も私は放課後、図書館に行った。いつものように、静かで窓から入ってくる風が気持ちよく、気がついたら寝ていた。すると、彼が図書館に入ってきた。私のところに近づいて来る。寝ている私を見て、隣に座り、私の髪の毛を触った。その後に、私の耳を舐めた。それでも起きない私。それから、彼はずっと私を見ていた。私が目を覚めると、

「おはよう。」

と言う。私は、

「え?」

と寝ぼけていると、彼は、笑った。

「よく、寝たね!」

と言う。私は、寝ぼけながら、時計を見ると6時を指していた。私は、寝ぼけた目をこすり、

「6時…」

と自分でつぶやくと、ぱっと起き慌ててカバンを持ち、帰ろうとすると、彼は私の腕を掴んだ。

「もう、帰んの?」

と言う。私は、

「そうだけど。」

と言って立つと、彼は私の髪の毛引っ張った。

「痛いよ!」

と言うと、

「ねえ、覚えてねぇの?」

と言う。私は、

「え?なにを?」

と言うと、彼は、私の髪の毛を離さず、握ったまま、

「俺ら…」

と口に開く。再び、

「1度だけだけど、会ったこと、あるよね?」

と言う。私は、

「え?」

と言う。その時、お互いに、

「匂い!」

と重なった。


10年前のこと。


私はまだ、6才だった。その日は私の誕生日だった。しかし、両親は仕事で忙しく、私は1人で家で毎年同じように送るのかと思っていた。


そうしたら、叔父さんが来て、

「今日も1人?」

と言う。私は、コクっと頷いた。すると、

「じゃあ、いいところに連れて行ってあげよう。」

と言う。叔父さんは私をあるところに1度だけ連れて行ってくれた。


そこは、ある大きな家。クリーム色の壁に茶色の屋根。庭がきれいにされてある。おしゃれだ。中に入ると、そこには小さな男の子がいた。それが彼だった。私に叔父さんは彼を紹介し、彼も、両親が家にあまりいることがなく、1人でいることが多かった。そのため、お互いに最初は、なかなか、話せずにいたら、彼が急に、

「匂い…」

と言う。私は、

「え?」

と言うと、

「僕と同じ匂いがする…」

と言う。なぜか、その後にすごく彼と仲良くなり、打ち解け、話したり、ゲームしたり庭で遊んだり。夕方になって、彼が急に

「おめでとう!誕生日!」

と言った。私は、その言葉を聞いて目から涙が出た。すると、

「なんで、泣いてるの?」

と彼は言う。涙が止まらない私。私は、

「うれしいの!」

と言うと、彼は微笑み、私の額にキスした。


その時の彼だったのだ。私は、自分の目を疑った。


私は、その時、あの日のことを思い出し、涙が出た。彼は、

「なんで、泣いてるの?」

の言う。私は、

「うれしいの!」

と言うと、あの時のように優しく私の額にキスした。


そして、私と君に花が咲いた。その花の匂いは優しくて甘酸っぱいかった。でも、キラキラとまぶしかった。

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