第六十話 若さではないと思う
温かい。
柔らかな感触に包まれている。
そっと目を開けたら知らない天井だった……なんてことはない。 これは見覚えがある。
そうだ、メイベルの宿屋だ。 よく覚えてたな俺。
眠気半分でぼやぼやしていた頭も目を開けたらはっきりとしてきた。
記憶もはっきりしてくる。
あの変な女の子に襲われて、フランが……
「フランっ……んぎっ!? っつうう……い――――ってえぇぇぇぇ……」
フランの顔が頭によぎり、体を起こそうとしたら足と首に激痛が走った。
しかも右手が上がらない。
まるで重しが乗っているみたいだ。
「くっそおぉぉ、なんなんだよ……おっ!?」
見たらクラリスが俺の右腕の上で寝息を立てていた。
宿に向かおうとしていたのは覚えている。 でもここにたどり着いた記憶はない。
多分、俺たちを拾ってここまで連れ戻してくれたんだ。
それで看病してくれてたんだろうな。
心配かけさせちまったよな。 ちゃんと謝んねえと。
「クラリス」
「ん、んん……」
「起こすのは忍びないけど、クラリス!」
「ん、ん……え? あ、はい!」
枕にされている右手を揺らすとクラリスが跳ね起きた。
まだ寝ぼけ眼だ。 頬が赤くなってシーツのしわが跡になっていた。
いつもきっちりしているクラリスのこういうところを見るのは、なんか得した気分になってくる。
「おはようクラリス」
「あ、おはようございますリューマさん……」
しばらくじーっと半分だけ開いたような目を見つめていたが徐々にしっかりと開いていく。
「リューマさん?」
「おう」
「え? あ……え? リューマさん……っ!?」
流石公爵家次期当主、今の状況をすぐに理解したらしい。
真っ赤になった顔を隠しながら部屋を出ていった。
しばらくして赤い顔はそのまま、髪や服を綺麗に整えて戻ってきた。
「その、すみません」
「ああ、いやこっちこそ、いいのが見れてよかった」
右手もちょっと幸せを感じれたし、おつりが出るくらいだ。
「しあわせ?」
「いやいやこっちの話、で、聞きたいこといろいろあるけど、まずフランだ。 フランは? 無事なのか?」
「大丈夫ですよリューマさん、フランさんはご無事です。 昨日お二人を運び込んだ後、しっかりと回復魔法を使って治療いたしましたから」
「そうか……よかった。 ……昨日?」
え? 昨日ってことは一日前? なんか数日寝てたくらい背中が痛いけど、そんだけなの?
「何かが爆発するような音を聞いて、まさかと思って外に出たのです。 現場に着くと、道にあるものすべてが破壊されつくしたかのような状況でした。 その中に血の跡が脇道に続いているのを見てリューマさんたちを見つけたのです」
そうだったのか。
見つけてくれたのがクラリスたちでよかった。
「フランさんは回復魔法で治せましたが、リューマさんはそうはいきませんでしたから……。 手当をして安静に……。 出血がひどく、数日は目を覚まさないかと思っておりました」
「そんなにひどかったのか?」
「ええ、もう少し遅れていれば手遅れになると思うほどに……。 でも、こうして目を開けられて……、本当に良かった」
本当に、心から喜んでいると、微笑むその目が語っていた。
すごく恥ずかしい気分になってくる。 メッチャ照れる。
「しかしよく生きていられたな俺。 だいぶヤバいとこ切られたような気がするけど」
「はい。 どちらも出血は多かったですが、首は浅いこともありすぐに止血できました。 ただ、左大腿部の傷は深く、骨にはとどいていませんでしたが、完治に時間がかかると思います」
「どれくらいかかると思う」
「大体……一週間以上は安静にする必要があると思います」
完治にはもっとかかるってわけだ。
そりゃあそうだけど、そこまでになると足止めとかそういうレベルじゃなくなる。
やっちまった。 本当に、どうしよう?
とりあえずゆっくり体を起こそうとするとまた体に激痛が走る。
それを耐えて無理やり上体を起こした。
よし、何とか耐えた。 これくらいは耐えれる。
「リューマさん! 無理はなさらないでください!」
「痛みになれれば何とか」
「なりません!」
なんて感じでいちゃついてたら、そこにドアを開けて人が入ってきた。
ハワードだった。 さらにフランも顔をのぞかせていた。
「ハワード。 フランも! もう大丈夫なのか!?」
「よかった、元気そうだね。 うん、聞いた話のわりにダメージが少なかったから、フランさんのメタルスキンが思いのほか防御してくれたみたい」
「うん、クラリスちゃんのおかげ。 リューマは、傷はもう大丈夫なの?」
「ああ、大体は」
頷いたらクラリスにそんなわけないと怒られた。
「リューマさん! そういう見栄を張るのは止めてください!」
「ごめん! 悪かった。 はぁ、そういうわけで、足の方がまずいことになってる」
「歩ける?」
「正直無理、傷が塞がってない」
「でも、基本的な移動は飛竜に乗って飛ぶから足の方は大丈夫なんじゃ……?」
ハワードの疑問にフランはすぐに首を振った。
「ダメ。 単純に飛んで降りるだけならできるかもしれないけど、飛竜への指示は手綱が2割、足が8割って言われるくらい重要なの」
フランの説明によると、騎士団などが保有する飛竜などに取り付けられる鐙は、馬と違って特殊な構造になっている。
足のくるぶしの内側が当たる部分には、飛竜の腹を叩くためのタップボールが付けられていて、これを飛竜の体に叩いたり、なぞったり、足の動きで細かな指示を出す。
これは騎龍兵が手に武器を持っていて、手綱による指示が難しいために編み出されたものだ。
そして、今の飛竜たちもほとんどが、それを想定した調教を行うという。
「しかも今は追われる身、空中戦になる場合もあります。 足のケガは相当な負担になるはずです」
クラリスもフランに賛成を示した。
空がダメなら馬車でも借りるか?
でも結局追いつかれるか。
「わりい、まさかこんなことになるなんて。 俺だけでも置いてくか?」
「バカなこと言わないでよ!」
フランがすぐにダメだと言い、クラリスとハワードも強く頷いた。
特にフランは珍しく怒っていた。
冗談で言ったつもりはなかったんだけどな。
「OK、もう言わない。 じゃあどうする? ここにとどまるか?」
「私はそれが良いと思います。 そもそも、私たちが逃げているのはカムイの槍から本を守るため。 ファイエット領へ逃げているのも、アンリ・ユベールが残した本の目的を探るため。 しかし、この状況は突発的に起きたことで、目的の真相は今すぐに必要と言うわけではありません。 ここに身を潜め、足のケガの回復と、騎士団が本格的に動きだすのを待つのも手だと思います」
クラリスは窓のカーテンを少し開いて外を見た。
昼前だろうか、太陽の光が閉じられて薄暗くなっていた部屋に光を差し込んだ。
「幸いにも、昨夜の騒ぎで騎士団がすでに警戒を強めています。 王都で起きたカムイの槍の事件がこちらに伝わっているかは分かりませんが、それも時間の問題でしょう。 こうなれば、相手もうかつに動けないでしょう。 数や質においても、騎士団の一騎士隊の方が上ですから」
その言葉に、昨日出会った同じ日本人の坂越さんの言葉を思い出す。
街の中では戦わない。
これを分かってたってことなら、やっぱりあの戦闘はあいつらにとっても想定外だったってことか。
待つのも手ではある。
騎士団が介入してくれればカムイの槍に勝ち目はないだろう。
でも、それをやつらが知らないはずがない。
カムイの槍を動かしているのは、騎士団の管理委員会の一人だったベルナールさんだ。
しかし、騎士団が来る前に別の行動を起こすことも考えられる。
どうするかと考えていると、部屋の外から複数の足音が近づいてきた。
その音の主が戸を開けると、サラとリゼット、メリッサにロイクだった。
全員着ていた服も変わっている。
「なんだ、目を覚ましていたのか」
「わんちゃん、傷はもう大丈夫なの~?」
「ああ、何とか生きてるよ。 みんなはどこ行ってたんだ?」
そう言うとロイクが手に持っていた籠を重そうにベッドに置いた。
なに入ってんだそれ?
「目ぇ覚ましてて何よりだぁ…よ、ほれっ」
「おおっと、パン?」
籠から取り出したのはパンだ。
しかもたくさん入ってる、種類も豊富。
「買い物行ってたのか?」
「おう、目を覚ましたら腹減ってるだろうと思ってな」
「外は大丈夫なのかよ? 俺このざまだぜ?」
「問題ねえよ。 ねえメリッサさん」
一息ついてパンを食べたメリッサが口を開いた。
「ええ、外の騎士隊が警備を強めているのはもう聞いた?」
「ああ、クラリスから」
「外での戦闘で街が結構ダメージを受けたから騎士団も警戒を強めてる。 そんなところにのこのこ出てくる悪党はいないわよ。 酔っぱらいの怒鳴り声にも過剰に反応するくらいだったし」
「そんなことあったのか……」
「おかげで俺たちは安全に買い物できたってわけよ」
ロイクはへへんとドヤってるけど、しかしとサラが話を続ける。
「大通りを外れれば、こそこそと動くものが何人か。 騎士隊の動向を執拗に監視していると思われます。 幸い、私たちは変装もしていたのでつけられることはなかったのですが」
「街を出るときはさすがにまずいかもしれませんね~」
リゼットもふわっと言葉の中に緊張感を含ませていた。
みんなが言葉をなくすとクラリスが立ち上がる。
「とりあえず、今は静観すべきです。 リューマさんの足が治っていない以上、これ以上の移動は危険です」
「ですよね、俺も賛成。 悪いけどしばらくここに止まりましょうよ。 ったく声かけてくれりゃあ俺も手伝ったってのに」
「悪かったよロイク」
仕方ないとみんなが頷き、これからどうするか、その先のことを話し出す。
「まあ兎にも角にもって、腹が減っちゃあれだろ? 食え食え」
「おいこら、ポイポイ投げんなって」
さらに3つパンを受け取って腹の中に入れていく。
美味い、肉が入っている。 こういうの好きだわ。
「んぐっ?」
のどに引っかかりかけた。 水が欲しい。
ちょっと離れた台の上に飲み水用の水差しが置かれてある。
くそう、微妙に手が届かねえ。
「ほっ」
「ああリューマ、私がとるって」
水を取ろうとしてフランも水差しに手を伸ばす。
片足で立って取るだけなら大して負担にならないだろうと思って手を伸ばしたら傷にびりっと来て、思わずつんのめってしまう。
「のわっ!?」
「うひゃあっ!?」
案の定こけた。
「ああ龍真! フランさんも、大丈夫?」
「お、おおう……」
「もう、動かなくていいって」
前のめりに突っ込んでフランにぶつかった。
倒れそうになるのをフランに支えてもらって、なんとも間抜けだ。
「おいおい、こんなとこでいちゃつくなよ~」
冷やかすなロイク!
「アホいうな」
「わ、わたひは、いいと思います……」
リゼットは上を向いていた。
「ハワード、あれを」
「はいこれ」
あれ? サラとハワード、もう慣れてる?
「いやんリューマったら大胆」
「お前も乗るな」
フランを支えにベッドに戻ろうと力を入れる。
腕に力が入ってフランをちょっと抱きしめる形になった。
くそう、ちょっとドキドキしたじゃねえか。 ドキドキというか熱くなるというか。
「あはは、ごめんごめ……ん、……はれ?」
「え? おい、ちょ、フラン!?」
「フランさん!?」
座ろうとしたその時だった。
フランが突然倒れた。
一瞬で血の気が引く感覚がする。
すぐに体を起こしてフランを上体を支える。
「フラン! フランっ!!」
「おいおいどうしたよ!?」
「姉さま! 回復を!」
「ええ!」
すぐにクラリスが手をかざし回復魔法を唱える。
淡い緑の光がフランに降り注いでいく。
「フラン!」
「う……ん、リューマ……」
少ししてフランが目を開けた。
「よかった、本当に、よかったフラン、大丈夫か? まだ治ってなかったんじゃ」
心配するとフランがゆっくりと首を振った。
「ううん。 昨日のは、もう大丈夫。 でも、なんか、急に……すーっていうか、ぽんっていうか」
「はぁ?」
「とにかくね……、急に体の力がなくなっちゃったの……」
クラリスの回復魔法が効いてきたのか、だるそうに話していたフランの顔色も徐々に治ってきた。
支えもいらずに体を起こしていられる程度には回復していた。
「ダメージが残ってて、急にぶり返したとか?」
「考えられると思いますが……」
クラリスもなぜ突然フランが倒れたのかよく分かっていないようだった。
なんにせよ、フランもしばらく休ませとく必要があるな。
「なんかごめんね、急にこんなことになっちゃって」
「言うなよ、それなら俺もだ。 ほれ」
「あはは、ありがとう」
フランの手をつかんで立ち上がらせる。
そのまま部屋に戻って寝ろと言いかけて、おや? と止まる。
フランもあれ? とこっちを見て止まっている。
「あん?」
フランどころかみんな俺を見ていた。
そうだ、フランが俺を見上げているんだ。
フランはちっこい。 俺の頭一個弱ほど下だ。
近くによるといつもつむじが見える。
「龍真? 足は?」
「あし? 足……、立ってる」
「……立ってるね」
俺は立っていた。
自分の足で。
フランと一緒に転がって、抱き起こして、そんで引っ張り上げて。
「なんで?」
足が痛くない。
きれいさっぱり。
「ああっ!? リューマさんなにを!?」
俺は足に巻かれた包帯をびりびりと破って、自分の足をさらけ出す。
そして手に水をぶっかけて、足に黒くこびり付いている乾いた血をぬぐい取った。
「ない……」
「うそ……」
傷がきれいさっぱりなくなっていた。
確かにさっきまで、俺の足には激痛が走っていた。
昨日の夜、あの女の子との戦闘で左足にナイフが深く切ったのも覚えている。
「あんた、前からやけに傷の治りとか早いわよね? スラムの時のとか」
「あ、ああ……ユーロンさんは、医者なんだけど、若いっていいなあとか」
「若さとかそういうの通り過ぎてるわよ」
メリッサは呆れたように頭を抑える。
わが身のことながらちょっと怖くなってきた。
なに? 俺の体に何が起きてるの!?
「で、でもさ! これでリューマの傷は治ったんだから良しとしようよ!」
「そうそう! フランの言う通りだ! これで一番のネックはなくなったんだ! あとはフランを休ませて終わり! 騎士団が動いたら、俺たちもファイエット領に移動しよう」
クラリスがそうですねと頷き、とりあえずその場を収めた。
一体どうなってんだ? 俺の体は回復魔法は効かないはずだ。 それはこの世界に来てすぐに身をもって経験している。
左わき腹を触ると、他と違って柔らかくなっている部分がある。
ガラハッドさんをかばって矢がぶっ刺さったところだ。
触ればすぐにあの日のことを思い出す。
強引だけど矢を引き抜いて、すぐに治療しようとしてくれた。
しかし、一緒にいたガウェインさんの回復魔法は俺には効かなかった。
なのに、昨日受けた傷が今はもう跡さえ残らず消えている。
ひょっとして……、何か俺に新たな力が目覚めたとか!?
超回復能力! 的な。
「へへ…………だったらいいなぁ」
「なにが?」
「なんでもない」
とりあえずフランを休ませるために部屋へ戻そうとしたら、突然後ろから声をかけられた。
「おうおう、ずいぶん元気そうやのう」
「うおっ!?」
びっくりして振り返ると、そこには意外な人がいた。
「ロッティ!?」
「ようリューマくん! ロッティやでぇ!」
「え、ええ!? ランスロットさん!? どうしてここに!?」
突然現れたランスロットさんに俺とクラリスは思わず飛び上がった。
王都を飛び出す数日前、魔物化した人間との戦闘で手を貸してくれたランスロットさん。
ガラハッドさんとモードレッドさんの同期らしい。
「ひどいやっちゃでえハイディも。 やっと時間取れて久しぶりに会うたっちゅうのに、いきなりザントライユに行ってくれやってえ? アホちゃあうんあのアホんだら」
「な、なんでザントライユに?」
「知るかいな!? まあ、大まかな流れはかいつまんで聞かされたけどな。 そんで着いたら見たことある顔がおるやん?」
ちらりとロッティがメリッサに視線を向けると、メリッサはプイッと視線をそらした。
「見られてたのね……」
「詰めが甘いってこっちゃ。 まぁ、んな事よりもや、そんでリューマ君らがおるで大体のことは察したってわけや。 それで? まだあの変な連中に追い回されとるんやろ?」
変な連中とはもちろんカムイの槍のことだ。
「はい、こちらにも事情がありまして……」
クラリスがロッティに今までのいきさつを説明しているとロイクが突いてきた。
おいなんだよ、左足をつつくな治っててもびっくりしただろうが。
「ランスロットって言や龍特戦のじゃねえか!? 団長副団長にモードレット卿といいどういう知り合いよ!?」
「王都の事件でちょっとな、手貸してくれたの」
「お前の知り合いの範囲エグいな」
「んなこと言われても」
こそこそとそんな話をているうちに説明が終わったようだ。
「どん底か這い上がっただけあって、ベルナールの行動力はすごいなぁ」
「ベルナールさんがどうかしたんですか?」
「昨日な、あんたらが飛び出した後、ハイディらがベルナールの邸宅とカムイの槍の拠点と思われる場所を一斉捜査したんやが、どっちももぬけの殻やった。 城の連中を巧みに使って連絡が上がらんようにしとったらしい。 食わせもんやであいつ」
「もぬけの殻……」
ベルナールさんは家や活動拠点を全て引き払ってまで行動している。
教会での別れ際、あの人は最後の勝負と言った。
なら、終わった後あの人は……?
「そんでや。 ここにとどまるんやったら、何日か後にハイディらも来るらしい。 なんか分からんけど、いろいろつかんだみたいでな。 こっちからも話し通しとくで?」
「ロッティは知らないんですか?」
「元騎士でも今は部外者やからな。 ざっくりした情報だけでも、もらえただけ好待遇やで。 で、どうするんや?」
俺は全員と顔を見合わせる。
アンリが残した手紙からも、魔法の本当の目的に関する手掛かりはザントライユにある。 ファイエットへ行くのはその足取りを追ってだ。
本当なら十分な準備をして捜索するはずだったのに、カムイの槍の乱入でここまで来た。
でもまあ、来たんなら仕方ない。
「ファイエットに行きます。 この際だから、やっときたいことは片っ端からやっていきたいと思います。 クラリスも、いいか?」
「私は構いませんが……フランさんは」
「クラリスちゃん、私は大丈夫だよ。 パンも食べたし元気満タン!」
ポンポンとお腹を叩くフランの膝の上を見ると、パンを包んでいた袋が俺の手元にある数より多い。
おおぅ、いつの間に……。
「おし分かった。 そう言うんやったら止めはせえへん。 わいはとりあえずやらせる主義やさかいにな。 ファイエットのお嬢ちゃんらがおるんやったら、戦闘面も問題ないやろ。 すぐに行くか?」
「この時間に出れば、飛竜に乗って、敵と戦闘になっても昼過ぎには付けると思います。 行きましょう」
「うん!」
一抹の不安だったフランがそれを払拭するかのように元気に頷いた。
あれ? もう一袋増えてる……? 食ったなこいつ。
「おっしゃ! じゃあここ出るまで協力したる。 わいは今から騎士団とこ行って部隊動かしてもらうさかいに、敵がたじろいどる間に飛んでいき」
「部隊って……、できるんですか?」
「なぁに、知り合いがおるでな。 へへへ……」
あ、なんか悪い顔したぞこのロッティ。
「それなら、街の中じゃなく外をお願いします。 あいつらは街中では襲ってこないので」
「そうなんか?」
「はい、敵と、話したので……」
「……、分かった。 城壁の外を回るよう頼んでくるわ」
「飛ぶには準備がいりますが、フランさん」
「私が先に行って準備する」
「だったら俺も行く。 ハワード、リゼット、頼めるか?」
俺とフランは飛竜の準備をある程度できる。 教えてもらったからな。
それに加えて、魔法に長けるハワードとリゼットについてきてもらう。
同じ轍を踏むわけにはいかないからな。
「分かった」
「時間が惜しいので、着替えずにまいりますね」
リゼット立ち、変装していた買い出し組も着替えるために部屋を出る。
「また切られんなよ」
「うっせえ」
軽口を言うロイクを見送り、俺たちは部屋を出る。
「サラ、着替えよろしくね~」
「分かっている、襲ってこないというのは信じられないが、気を付けろよ」
「大丈夫よ~、ワンちゃんがいるもの~」
そんな目で見られても昨日の件で自信がなくなっちゃいそうだから見るのやめて?
俺ほんと魔法に弱い。 魔法と言うか強化。
「仕方ありません、常人では強化兵相手には無力ですから。 私たちは騒ぎをおこさないよう荷物をまとめてチェックアウトしてから行きます。 お気をつけて」
「龍真が無茶しないよう僕が見てるから、安心してください」
「俺そんなにリードあった方がいい?……。 まあそういうこった、クラリスたちもな」
「はい」
なんかロッティがにやにやしてる。
「ふふふ……」
「なんすか?」
「いやなに? 学校時代思い出してな。 ワイらも相当やんちゃしたもんやでな、悪いけど楽しゅうなってきたで」
他人事みたいに言ってくれちゃって。
まあ他人事か。
とにかく、半分に分かれて準備組の俺たちは宿を後にする。
さあ、脱出part2といきますか。




