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逃げ道は虎穴に

車から黒服の人が出てきた。スーツをスラッとスマートに着こなし、日も落ちたってのに馬鹿でかいグラサンをしている髪を一つに縛った人だけど、さっきジジイに連れてこられた時に一緒にいた。


おそらくジジイのボディーガード的存在だろう。



「おいアンタ。運転席から出てきたけどアンタだけってことはないだろう。ジジイを出せ。山ほど話があオゴッ!」



白い車体に隠れたかと思い、車の正面に行ったがいなかった。少しの間を置いて肝臓辺りに鈍痛が走った。



「痛っ! なんで殴ったんだ今!」


「確かに…とても硬い」


「硬い、じゃなくて喧嘩売ってるのかアンタは! というより近づくな! 今殴られてわかったけどアンタは」



視界に白が広がる。背中にある車のライトが点いたせいだ。


それと同時に黒服がサングラスを素早く外した。そして体が毒に犯される。



「ご、おぉ…」


「なるほど、これが貴方の持つ毒素。異性と目を合わせると全身の筋肉が硬直するみたいですね」



油断した。あまり言葉を喋らなかったし、何より見てなかったから気づかなかった。この人、女性だ。



「ゴラァ変態! 逃げようったってそうはいかな、って黒科さん? え? なにこの状況?」



この声は…恋か。後を追ってきたのか。



「恋か。袂様の話が本当かどうか確かめただけだ」


「かと言っていきなり殴るなんてどうかと思うんじゃがのお」



扉が開く音。それにこの声。しゃべることはできないが聞こえる。ここに連れてこられた元凶。



「学園長! 何でここにいるんですか?」


「鳴海の様子を見に来たんじゃよ。にしても黒科よ。いきなり殴りかかるのはちとアナーキーすぎないか?」


「袂様が肉体は頑健だ、鍛えているとおっしゃったのでつい。確かに素晴らしい肉体です」


「お前なぁ…と言うよりそろそろ目線を外してやってくれ。最悪死ぬ」


「グ!」



会話途中で鳴海は倒れ伏せる。



「ちょ、大丈夫なの変態!」


「大丈夫だ…言っただろクソジジイ。進展はあるって」


「驚いたのう。まさか自分で脱出する術を編み出したか」



編み出したというよりただ単なる根性論だ。まだ硬直しきらないうちに全神経をまぶたに集中して無理やり目を閉じるだけのこと。



「アンタ、学園長と知り合いなの?」


「俺のクソジジイだ。オイ! 何でこんなところに連れてきた! ここは女学園なんだろう。女性しかいないところで俺が生きて行けるわけないだろ!」


「今までだって普通の学校に通ってある程度の生活していたんじゃ。ある程度の生活はできるじゃろう。だが、やはり治すには荒治療を敢行すべきじゃ。その様子だと早速脱走仕掛けたみたいだが、せっかくお前のために建てたペンションとメンバーじゃというのに」




やはりそうか。薄々おかしいと感じていた。建物のメンバーは全員なにかしらがある。


だけど、1番謎なのが…そばに寄ってくれている恋だ。



「いいかクソジジイ。俺は絶対にここから抜け出してやる! 四六時中異性の目があるなんて考えただけで体が凍る」


「じゃがお前とて今の状況じゃろくな生活は送れん。何。サプライズも用意してある。明日は日曜日。ペンションのみなと親交を深めとけ。クラスの籍も用意しておく。きちんと準備をしておくんじゃな」


「待てクソジジイ! それだけか! それだけを言いに来たのか!」



怒号も聞き入れられたのかわからず、ジジイは車に乗り込み来た道を戻っていった。



「何だったんだよ! クソ!」



行き当たりのない怒りは草に対して発散。虚しすぎる。



「アンタ。学園長の、天宮龍の一員だったんだ」


「違う。俺は最初から天宮龍じゃない。いや、そんなことはどうでもいい。君も見てわかったと思うけど俺は女性と目が合ったと意識すると全身の筋肉が硬直する特異体質がある。だからこの学園から出ようとしてるんだよ」


「まあ、何となくわかった。けど、アンタの言う脱走ってのは無理よ。ここがどこだか知ってるの? 整備されてるとはいえ山奥よ。逃げようったって無理があるし、警備だって尋常じゃないのよ」


「それは俺だってわかってる。でもこのままこの学園で生活なんて…それこそ行く当てがない。だから地元の男子校を選んだってのに」


「ふーん。つまりアンタはどんな危険があってもここから抜け出したいってわけね。なら今は従っておきなさい」


「従っておいて…ここに居つけってのか?」


「私が協力する」



その言葉に…一呼吸の間ができた。



「君が?」


「私とアンタの利害は一致してるでしょ。それに気が変わった。戻るわよ。『私たち』の部屋に」



と言ってはこちらに背を向けてペンションに歩き始める。今一理解できてないけど、それでも彼女のあとについていった。

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