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サマーメモリー  作者: ぴぃ夏
9/10

勝利

どうも。9話目の投稿です。

さて、どんどん楓の事情が深くなっていきますね。

楓は一体何者なのか。

 敦司の家のプレハブに戻っても、七人はまだ興奮していた。

「あんなにうまく引っかかってくれるなんてな。」

 絢斗は笑いながら言った。

「いや~、牛糞に落ちた時は本当ヤバかったわ。な、譲。」

「見事に落ちていったからな。漫画かと思ったくらいだ。」

 敦司と譲は、またハイタッチをした。

「こっちも聴診器は絶対引っかからないと思ったのにな。」

「ね。賢そうに見えたのに超バカだった。」

 絢斗とみず穂はあの時のことを思い出して笑っていた。

「うちらも頑張ったよね、やっちゃん?」

「うん、めっちゃ投げまくったよ。」

 穂奈美と奈恵子はあの時、上の階から爆竹を大量に投げつける役をやっていた。

「それにしても、最初は楓は連れていかないはずだったのに、結局ついてきちゃったよな。」

「皆さんが頑張っているのに黙ってお留守番なんてできません。」

 楓はフンッと胸を張った。

「根性あるよなホント…。」

 敦司は苦笑いを浮かべた。

「で、これでしばらくは大丈夫なの?」

 みず穂が楓に向かっていった。

「しばらくは向こうからは手を出してこないと思います。あの二人も、神主さんにはこのことは報告しないでしょう。」

「報告しないってなんで言い張れるんだ?」

 譲が訊ねる。

「今回は失態が大きいからですよ。ただの人間に惨めにやられましたなんて恥ずかしくて言えません。下手すれば守護神解雇です。」

「確かにそれはダサい」

 奈恵子は少し笑いながら言った。

「よし。一段落ついたし、この後どうする?」

 絢斗は皆を見回して言った。

 時計を見ると、まだ十四時だ。これで解散は早すぎる。

「このまま遊ぼうぜ。詩好と龍駆はくるかな?」

「聞いてみろよ。」

 絢斗に言われて、敦司は二人に暇かどうかメッセージを送った。

 しばらくすると返信が来た。

「お、二人とも来れるみたいだ。」

「え、てことは全員集合じゃん。」

 久しぶりに全員が揃うことになった。

「にしても、龍駆が来るなんて珍しいな。」

「あの…そのリクって人って誰です?」

 楓は首を傾げた。

「あ、そうか。あの時は龍駆いなかったんだっけ?」

「そうだったそうだった。楓ちゃん。もう一人いつメンでいる人なんだけど、来たら紹介するね。」

「は、はい。」

 穂奈美に言われて、楓は少しワクワクした。

 二十分くらい経った頃、詩好がやってきた。

「うぃっす~。」

「お久~。」

 敦司と軽く挨拶をして、プレハブに入る。

「あ、楓ちゃん!久しぶり!」

「久しぶりです!」

 入って早々、楓と詩好はハグを交わす。

「愉快な奴らだねぇ。」

 絢斗は呆れていた。

 敦司がドアを閉めようとした時、お~い。と声がした。

「閉めないでくれよ。」

「おぉ、龍駆。久しぶりだな。」

「そうだな。」

 この少年―――山口 龍駆も、絢斗達いつメンのメンバーだ。

 高校三年になってからいろいろと予定が合わず、敦司とは何回かあったことはあるが、他のいつメンに会うのは本当に久しぶりだった。

「そうだ。新しいメンバーを紹介しないとな。」

 敦司はそう言って龍駆を中にいれる。

「新しいメンバー?」

「私です。」

 ヌッと楓が龍駆の前に現れた。

「うわぁ!びっくりした!」

「私、八雲 楓です。よろしくです。」

 龍駆が驚いていても、楓は構わず自己紹介を続けた。

「えっと。俺は山口 龍駆。よ、よろしく。」

 おずおずと自己紹介を交わした。

「いろいろと事情はあるんだけど、ゆっくり話すよ。」

 穂奈美が言った。

 龍駆はまだ戸惑いながらも楓の事情をみんなから聞いた。

 事情を話し終えると、その後は作戦成功のパーティみたいなものが開かれた。

 パーティといっても、棚の中に溜めてあるお菓子やカップ麺、ソフトドリンクしかなかったが。

 それでも夜中の八時過ぎまでは皆で盛大に盛り上がった。

 やがて、皆各々が家に帰っていくと、プレハブに残ったのは絢斗、敦司、譲、穂奈美、楓の五人になった。

「今日は楽しかったな~。」

 敦司がそういいながら、布団を人数分運んでくる。

「ホントそれな。久しぶりにみんなで盛り上がったよね~。」

 穂奈美も敦司が運んできた布団を敷きながら言った。

「ちょっと待て、この後この五人で泊まるのか?」

 譲は、現在当然のように行われてる作業に疑問を持った。

「ん?そうだけど?何をいまさら。」

 絢斗はキョトンとした顔で言った。

「いやいや、楓と俺たちはともかく、穂奈美まで?」

「そうだけど?」

 穂奈美もキョトンとしてる。

「いいのかよ。」

「夏休みだし、問題ない。」

 譲はガクッと肩を落とす。

 そうこう言っている間に布団は敷き終わり、皆寝る体制に入った。

「じゃあ寝るか。おやすみ。」

「おやすみ~」

 そう言って皆眠りに入った。

 だが、楓は一人考えていた。

(皆さんに伝えた方がいいのでしょうか…。いや、もうしばらくは皆さんともっと遊びたいです。)

 ふと、頬に暖かさを感じる。

 手で触ってみるとそれは涙だった。

「どうしてッ……。涙なんか流しちゃいけないのにッ……。」

 楓は静かに涙を流した。

 他の四人に気付かれないよう、必死に歯をかみしめながら。

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