表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
サマーメモリー  作者: ぴぃ夏
8/10

反撃

遂に約束の日。絢斗達の作戦が開始されます。

狛犬二人組を撃退することはできるのか…。

 8月15日。ついに約束の日がやってきた。

 その日も相変わらずの猛暑で、約束の廃工場まで歩いていくのは辛いものがあった。

「暑っつい!こんな日に外を出歩かなきゃならん理由が分からん!」

 海は早速愚痴をこぼしていた。

「文句を言うな。さっさと行くぞ。」

 天は足を止めることなく、手紙に入っていた地図を頼りに進む。

 10分ほど歩いたところで、目的地に着いた。

 見るからに、もう誰も使っていないかのような建物だ。

 外の壁は風化していて小さな穴が目立ち、窓らしきものはヒビが入っているか、完全に割れている。

 そして、目の前にはスプレーで“Welcome”と書かれたシャッターが半開きになっていた。

「ここから入れってことか。」

 見るからに怪しい。天は真っ先にそう思った。

「怪しんでもしょうがないし、入ろうぜ兄者。」

 そう言って、海はシャッターをくぐって進んだ。

 その時、何か紐のようなものに引っかかった。

 次の瞬間、バシャーンと音とともに、上から思いっきり何かの液体をかぶった。

「うぼぉぉぉ!いきなり罠かよ!てか、くっさぁぁぁぁ!!!!」

「バカ!何を被ったんだ!外まで臭うぞ!」

 ラベンダーやらハーブやら、とにかく色んな香りのものが入り混じった臭い。

 鼻が利く二人にとっては最悪な攻撃だった。

「うおおおおお!臭い!臭いぃぃぃ!」

 海は自身の体の臭いに鼻をつまみ、あたりを駆け回った。

「落ち着け!まだ入り口だ。この先もっとひどい罠があるかもしれないから慎重に行くぞ。臭いは我慢しろ。」

「そんなこと言っても……。」

 涙目で天を見るが、天も相当臭うらしい。顔をしかめて必死にこらえている。

「進むぞ。」

「うん。」

 二人は入り口から通路に沿って進んだ。

 少し歩くと、二つに分かれた道になっていた。

 目の前には看板が刺さっている。

『光→

 闇←』

 と書かれている。

「どっちに行く?」

「暗くても俺たちは別に支障はない。闇でいいだろう。」

「明るさを言ってるのかこれ?」

 天は迷うことなく闇に進んだ。

「ちょっ!ホントにいいのかよ!」

 海は不安で仕方なかった。

「嫌なら別行動でもするか?道はちょうど二つだしな。手分けして探すのも手だぞ。」

「なるほど。」

 確かにそれはいい考えだと、海は思った。

「じゃあ、俺は光に行ってみる。何かあったら引き返してくるよ。」

「分かった。」

 そう言って、二人は別々の道を進んだ。

 光と書いてある道に進んだ海は、サクサクと進んだ。

 途中で曲がり角を曲がると、『押すな!』と書いてある箱があった。

 よく見ると、小さなボタンが一つ出ている。

「何だこれ?」

 押すなと書いてあるし、なんかあるのかと思った海は躊躇なく押した。

 その途端、カメラのフラッシュが目の前で光った。

「うわっ!眩しっ!」

 思わず目を覆った。

「目がぁ!見えない!」

 目を抑えながら悶えていると、いきなり足元の地面がなくなり、落ちていった。

 落ちた先は泥みたいな感覚が広がる場所だった。そしてそれはすごく臭い。

「うわぁ!なんだここ!」

 必死に出ようと思ったが、周りが見えない状態で、しかも足場が悪い場所で思うように動けなかった。

 海が悶えている姿を上から敦司と譲が見下ろしていた。

「暗いところでいきなりフラッシュを見ると少しの間目が見えなくなる。視力がいいアンタたちには効くだろ?」

「ちなみにその泥みたいなやつは、敦司の爺ちゃんが世話している牛の糞だ。」

 敦司たちが立っているところから海がいるところまでは約五メートルはある。

 いくら狛犬でも、この状態で上がってくるのは不可能だ。

「一匹無力化成功!」

 敦司と譲はハイタッチをした。

 その頃、闇と書いてある道を進んでいる天は慎重に進んでいた。

 辺りはさっきよりも暗くなっているが、天には問題なく見えていた。

 少し小さい広場に出ると、突然上からガサッと音がした。

 ハッと上を向くが、何もない。

 紛らわしいと思って視点を戻したとき、後ろから突然爆発音が聞こえた。

 何事だと思って振り返るが、後ろには誰もいない。床が少し焦げた跡が残っているだけだ。

「あいつは爆発物まで持っているのか?どこでそんなものを…。」

 一気にあたりを警戒する。

 そして、いきなり一気に前後左右から爆発音がいくつも聞こえる。

 身の危険を感じた天はその広場を走り抜けた。

 広場を抜けると、目の前の扉に聴診器の耳につける部分がぶら下がっている。

 その先はドアの向こうにあるみたいだ。

 そして扉には『懺悔の言葉を聞きたくばこれを付けろ』と書いてある。

「明らかに罠だが、付けるしかないか。」

 疑いながらも、天はそれを付ける。

『これを聞いているもの。よく聞きなさい。』

 女性の声だ。もしかして楓か?と思った瞬間。

『キャアアアアアアアアアアアアアアアア』

 つんざく悲鳴が聴診器越しに響く。

「うおおおおおおおおおおおおおお!」

 思わず聴診器をはずすが、耳がキーンとなって全く聞こえない。

 そして次の瞬間。後ろから絢斗とみず穂が後ろから布団で天の体をす巻きのようにしてロープで縛った。

「よし、オッケー。」

「大成功だな。」

 二人は拳をコツンとぶつけ合う。

 絢斗は携帯を取り出し、グループトークに連絡した。

『一匹無力化完了。』

『ちょうどこっちも完了した。』

 すぐに敦司からの返信も返ってきた。

「向こうも終わったみたいだから、とっとと出るか。」

「うん。」

 そういって、皆に脱出のメッセージだけ送って出口に向かう。

 外に出ると、敦司、譲、穂奈美、奈恵子、楓の全員が揃っていた。

「作戦大成功!」

 敦司がそう言うと皆一斉にハイタッチした。

 不安で仕方なかった楓も、皆の楽しそうな笑顔を見て、とても興奮していた。

コメントやアドバイスがある方はどんどんお願いします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ