作戦
どうも。
今回で7話目です。内容が被ってるんじゃね?と思った方はその辺はスルーでお願いします。
「本当にそんな作戦で大丈夫なんです?」
楓は不安そうな表情を浮かべた。
「むこうは楓が俺たちといることを知らないんだろう?」
絢斗が楓に確認する。
「はい。あと、私のことを普通の人間と変わらない状態というのは知っています。」
「それでいい。それなら向こうは確実に油断する。」
「そこで俺たちが攻めればいいって話だろ?」
敦司が絢斗の後に続いて言った。
「でも、相手はあくまで狛犬。人間ではないんですよ?力の差があるのにこちらから攻めるなんて。」
楓は心配で仕方がないようだ。
「向こうの弱点を利用すれば何とかなる。一人一人に別れさせればもっと楽だけど。」
譲が言った。
「楓ちゃんは心配しすぎ。」
「私も心配だけどね…。」
奈恵子がそう言うと、皆一斉に笑った。
「大丈夫。今回は楓は連れていかない。」
「え?呼び出したのにですか?」
「失敗した時の保険だよ。」
「なるほど。」
楓は理解したようだ。
「近くの廃工場に呼び出して、できるなら二人を倒す。できなきゃ普通に逃げるだけ。」
「罠とか張るからそうゆう作業は手伝ってもらうよ。」
「え~、うちもやりたい。」
穂奈美は頬を膨らませていった。
「やりたい人はやってもらうよ。流石に男子三人じゃキツイ。」
敦司は苦笑いを浮かべながら言った。
「罠ってどんな?」
奈恵子が言うと、敦司は皆を外の物置小屋に連れていった。
「ここに入っているものを使えないかな?」
中にはネット、ライト、テントのシーツ、コンロなどキャンプ用品が詰まっていた。
もともと、敦司の父親がキャンプ用品に興味があって、気になったものはほとんど買っていた。
ちなみに敦司は家族でキャンプなんてしたことない。宝の持ち腐れというものだ。
「何とかなりそうだな。」
絢斗が感心したように首を縦に振った。
「問題はどんな罠を作るかってことだな。」
譲の言葉に皆考え込んだ。
廃工場といっても、中は何にもないところだ。かろうじて電気が通っているだけで、あとは文字通り何もない。
「とりあえず入り口に作ろうぜ。」
「どんな罠を?」
「ドアを開けると上からバケツが降ってくるとか。中にはめっちゃ臭いのきついのを入れて。」
「なるほど、それいいな!」
敦司は自分の意見を褒められて少し照れていた。
「曲がり角でいきなり照明オンは?暗いところでやれば目がやられる。」
譲も調子が出てきたようだ。
「採用。他は?」
絢斗は皆の顔を見回した。
「そういえば、あそこ屋根裏に入れるよね?上からなんかできない?」
「何かとは?」
「上から爆竹投げるとか。」
「穂奈美、それ結構危ないからな?」
「流石に当てないよ…多分。」
「後半の言葉何!?」
笑いながら危ないことを言う穂奈美と、それに突っ込みを入れる敦司。
もともとそうだが、皆は緊張感がないというか、楽観的というか。とにかく楽しそうなのだ。
まだ皆は18歳と19歳だ。大人になりつつある言っても器がでかすぎる。まるでゲーム感覚だ。
「皆さんはなぜそんなに楽しそうにできるんですか?」
楓は顔を伏せながら言った。
その一言に絢斗達は訳が分からないような顔をした。
「まだわかりません。こんなことに積極的になるなんて。」
楓はまだ顔を伏せている。
「さっきも泣きながら言ってたねそれ。」
「な、泣いてません!」
譲が言うと、楓はやっと顔を上げた。
「あのさ、俺らは楽しそうなら何でもいいんだよ。」
「そうだよ、しかも楓ちゃんは追いかけられてるのに、ほっとけないよ。」
絢斗と穂奈美が続いて言う。
「私は少し不安もあるけど、楓ちゃんのためだから大丈夫!」
「いつメンに入ったんだから見捨てないってさっきも言っただろ?」
奈恵子と敦司も皆に続く。
「でも…。」
「その話はもう禁止だ。いいな?」
敦司は強引にその話を終わらせた。
「罠を作るために、あとで皆に連絡しとけ。」
「はいよ。」
絢斗が敦司に言うと、皆は再び罠を考え始めた。
「………この人たちは絶対死なせちゃいけないです。」
楓はこれから待っているであろう展開に、静かに決心した。
絢斗達はそのことに気付かず、目の前の作戦に心を躍らせていた。
意見やアドバイスがあればコメントお願いします。