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サマーメモリー  作者: ぴぃ夏
4/10

追手

徐々に現実離れしてきました。

新キャラもちょっと出ます。

 楓は朝の日差しで目を覚ました。

 あたりを見回すと、他の三人はまだ寝ていた。

 少し外の空気にあたろうと、布団をどかしてドアの方に進むと。

「ん…う~ん。」

 敦司が目を覚ましたようだ。

「あ、ごめんなさい。起こしてしまいましたか?」

「いや、別に大丈夫~。」

 敦司は半開きな目で楓を見ながら言った。

「今何時になるんだ?」

 時計を見ると朝の八時だ。周りは明るく、ポカポカしていてつい二度寝をしたくなるくらいいい天気だ。

「とりあえず、皆を起こしますか。」

 敦司は寝癖がひどい頭をポリポリ掻きながら立ち上がる。

「ほれ、絢斗。朝だぞ。」

「う~ん…もう朝か~。」

 絢斗は欠伸をしながら上体を上げてくる。

「ん、おはよう。」

「おはようです。」

「あとは穂奈美か。」

 皆起き始めている中、穂奈美はまだぐっすりと眠っている。

「穂奈美起きろ。もう皆起きてるぞ。」

 敦司が体を揺するが、全く起きようともしない。

「おいったら。」

「ん~…まだ眠い…。」

「起きろよ。」

 そこで絢斗が穂奈美の頭にアイアンクローをしかけた。

「いだだだだだ!起きる!起きるから!!」

 効果は絶大のようだ。

 穂菜実も一気に目が覚めただろうに。

「さて、とりあえず皆に今日集まれるか聞いてみるか。」

 早速敦司は携帯を取り出し、皆にメッセージを送る。

『今日集まれる人?』

 返信は誰からも返ってこない。

 そりゃそうだ。おそらくまだ皆は寝ているだろうから。

「起きるまで返信待ちか…。」

「それより朝飯どうする?」

「カップ麺なら棚の中にあるぞ。」

 絢斗は早速棚の中からカップ麺を取り出してくる。

「おぉ~、カレーと醤油とシーフード、担々麺もあるじゃん。」

「うちはカレーがいいな。」

「なんでもいいから、とっとと分けようぜ。」

 それぞれ好きなものを取っていき、絢斗は担々麺、敦司は醤油、穂奈美はカレー、楓は醤油になった。

「これは一体なんです?」

「え、まさか楓、カップ麺知らないの?」

「食べたことないです。」

 三人とも驚いた顔を浮かべる。

「ちなみにさ、楓は今まで何を食ってたの?」

 絢斗は恐る恐る聞いた。

「基本的には近くの山にあるキノコとかです。あと、たまにお墓におはぎとかお供えされているときはそれをこっそり。」

「後半の罰当たりだなおい。」

「てかすっごくサバイバルだね。」

 三人は驚きの表情を隠しきれなかった。対する楓は少し照れてる。照れるところではないのだが。

 そうこう話している間に三分が経った。

「お、できたできた。ほれ、食ってみ?」

「で、では、いただきますです。」

 楓は恐る恐る麺を口の中に含んだ。

「こ、これは!」

 楓の耳と尻尾がピンとまっすぐに立った。

「おいしいです!!」

 楓はズルズルと勢いよく麺をすすり上げる。よほど気に入ったらしい。

 それはそうだ、今まで聞く限りろくなものを食べていなかったのだから。

「ごちそうさまでした!」

 あっという間に食べきってしまった。

「人間はいつもこんなおいしいものを食べているんですか?」

「まぁね。」

 楓は目をキラキラさせている。

「あなた達と出会えてよかったです!」

「食い物一つでそんなこと言われてもなぁ。」

 敦司がそういうと、皆一斉に笑った。

 朝食を済まし、布団を片付け終わった時にグループメッセージに皆からの返信が来た。

 内容は譲と奈恵子が来れるみたいだ。

「譲と奈恵子が来ると。」

「了解。」

 皆にそのことを伝えて、机を囲むようにして四人は座った。

「さて、皆が来るまで何をする?」

 敦司が皆を見回しながら言った。

「家の方に入ってゲームとかは?」

「却下、午前中に家は親が嫌がる。」

 あくまで人の家。プレハブは敦司の親に迷惑がかからないから泊っていいことになっているのだ。

「じゃあ、トランプでもやる?」

「トランプとはなんです?」

 どうやら楓は人間の一般常識は何一つ知らないらしい。

 まぁ、当然といえば当然なのだが。

「じゃあとりあえずルール説明するから。」

「ありがたいです。」

 とりあえず今回は簡単なババ抜きから教えた。

 一通りルールを教え、ゲームが始まった。

「じゃあ、これを引きます……うわぁ!」

 楓の顔が一気に曇る。おそらく百%ジョーカーだ。

 そういえば楓は隠し事が苦手だった。はじめてあった時も自分からいろいろ自爆していたし。

「お前はもうちょっと顔に出さないことを覚えろ。」

 絢斗は呆れながら言った。

 結局、楓は一勝もすることができなかった。

「トランプって難しいです…。」

「お前にはまだ早かったみたいだな。」

 みじめとしか言いようがない。

 そんなことをやっていたらもう昼過ぎになった。

 その時ドアをノックする音がした。ドアを開けると譲が立っていた。

「よう。」

「やっと来たか。」

 ちょっとしたら奈恵子もやってきた。

「これで全員揃ったか。」

 敦司はその場にいる五人を見ていった。

「全員揃ったので言いますが、私じつは追手に追われているんです。」

 その場の時間が一瞬止まる。そして一斉に楓の方を見る。

「「「「「はい?」」」」」

 五人は一斉に声を上げた。

「まてまて。そんなこと昨日話したか?」

「いえ、まったく。」

「話せよ!」

 敦司は頭を抱えながら声を上げた。

 一旦皆は落ち着いてから譲が質問した。

「追手って誰なんだ?」

「率土神社の者です。私と同じく人間ではなく、狛犬です。」

 今度は狛犬か。言っていることが現実離れしすぎていてついていけない。

 いや、目の前に狐の少女がいる時点ですでに現実的ではないが。

「なんで追われているんだ?」

 今度は絢斗がきいた。

「それは、よそ者を受け入れるわけにはいかないからですよ。あなた達も、勝手に知らない人が家族にしてくださいって言ってきたら怖いですよね?」

 なるほど、確かにそれはもっともだ。

「ん?てことは、これは楓が悪いんじゃないか?」

「はい、九割ほど。」

「全部悪いんだよ!」

 敦司はまた声を上げる。さっきから突っ込みどころが多過ぎる。

「てか、俺らはそれの手助けをするわけだよな。」

「そうなりますね。」

「すごい罪悪感が出てくるんだが。」

 絢斗も頭を抱えている。

「そんことより…」

 突然、奈恵子が真剣な顔を浮かべる。

「どうした?」

「楓ちゃんの尻尾をモフモフしたい。」

 皆一斉にガクッとなった。楓だけは尻尾を隠してぶるぶる震えている。

「やめろ奈恵子。昼間からR-18は却下。」

「そんなぁ。」

 敦司に却下され、奈恵子はがっくりと肩を落とす。

 その時、ドアを誰かがノックした。

「ん?親か?」

 敦司がドアを開けた先には、身長約180センチくらいの浴衣のような恰好をした男が一人立っていた。

「突然失礼ですが、このあたりで着物の女性を見ませんでしたか?」

 敦司は一瞬ビクッとした。

 楓のことだ。つまりこいつらが追手ということか。

 見た感じ普通の人間にしか見えない。

 敦司はチラッと後ろを振り向くと、既に楓は隠れたみたいで見当たらない。

「いや、見てませんね。」

「本当ですか?」

 やけに突っかかってくる。手ごわそうな人だ。

「本当ですよ。なぁ、皆。」

 敦司は振り返って皆に言った。

「知りませんよそんな人。」

「昨日はここに泊っていたんで。」

 皆首を横に振りながら言う。

「そうですか。失礼しました。」

 男は軽く一礼すると帰って行った。

 ドアを閉めた後、皆一斉に肩の力が抜けた。

「はぁ~、まさか早速来るとわ…。」

「めっちゃ緊張した。」

 絢斗達が溜息をついていると、どこからか楓が姿を現した。

「いや~、助かったです。」

「逃げるの早えよ!」

 今度は絢斗が声を上げる。

「あれが追手なんだ…。」

 穂奈美が真剣な表情でつぶやく。

「はい。あれが追手の一人、率土 天というやつです。」

「一人?何人いるの?」

「もう一人、率土 海って言うやつがいます。」

「二人もいるんだ…。」

 奈恵子は不安な表情を浮かべた。

――――あれが追手。二人もいるのに、楓を守り切れるか…。

 五人は同じことを考えていた。こっちは普通の大学生や社会人の集まり。特別な力なんて何もないのにどうやって守ればいいのか。

「今は対策を考えるしかないな。狛犬だっけ?そいつらの動きに注意しながら。」 絢斗はそう言った。むしろそれしか言えなかった。大きすぎる不安はちょっとしたミスに繋がり、相手にすぐ見つかってしまうから。

「今日はどう対策するか六人で話し合おう。」

 そう言って、会議が始まった。そしてこの時から戦いも始まっていた。凡人が現実離れしたものから守るための戦いが。

誤字やアドバイスがあればお願いします。

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