正体
お久しぶりです。
久しぶりの投稿です
夕暮れの率土神社は、とてもいい雰囲気とは言えなかった。
神社の守護神である二人は、狐女だけではなく、人間にまでボロボロにされて気分がいいわけがなかった。
祭壇の前の階段に座り込んで、二人は茜色の空を眺めていた。
「なぁ、兄者…。俺たち惨めじゃねぇか?」
「口に出すな。勢いでお前を張り倒しそうだ。」
二人は顔の向きを変えなかった。
「まさか人間が組んでいたとは。しかもあの人間、見たことがあるやつだ。」
「本当か兄者?」
海は天の方を向く。
「一般人に聞き込みをしていた時にな。その時は楓の姿なんか見えなかったが。いや、なぜその時気付けなかった?」
天はそこで疑問を持った。
「ん?どういうことだ?」
海は天がなぜ疑問に思っているかが分からないようだ。
「考えてみろ。俺が行った場所に楓がいてもいなくても、臭いでわかる。だが、あの時そんな臭いは何もなかった。」
「人間に近い存在になってるからわかんなかったんじゃないの?」
「人間も一人一人臭いが違う。もちろん楓の臭いもな。だが、あそこには他の人間のいくつかの臭いしかしなかった。」
「え、それはおかしくね?」
ようやく海も疑問を理解したようだ。
「その話、詳しく聞かせてもらいましょうか。」
突然後ろから声がする。
二人が振り返ると、祭壇の奥から、この神社の神主――神代 悠汰が現れた。
「悠汰様!」
海と天は深々と頭を下げた。
「天が臭いをかぎ取れなかったと?」
やさしい口調で悠汰は言った。
「はい。あの時、楓とつながりのある人間からすらも臭いがしなかったのです。」
「なるほど…。」
悠汰は少し考え込むと、奥の部屋に入って行った。
「なんかわかったのか?」
「さぁ。調べ物をしているんじゃないか?」
十分ほど経った時、悠汰は奥の部屋から出てきた。
「なるほど。八雲神社の狐ですか。」
「何かわかったんですか?」
天と海は悠汰のことをじっと見つめる。
「結論から言いますと、八雲神社は潰れていません。」
「なっ!そんな馬鹿な!」
海は相当驚いているようだ。
「本当です。連絡をしたところ、ちゃんと繋がりました。」
「じゃあ、あいつは何者なんですか?」
天は海より落ち着いている様子だが、口調は少し焦った感じがあった。
悠汰は少し間をあけて答えた。
「彼女は妖です。おそらくこの神社を拠点として乗っ取るつもりなのかもしれません。」
「なるほど。それならあの時見つけられないわけだ。」
天は納得したように首を縦に振った。
「ん?なんでだ?」
海はよくわかっていないみたいだ。
「守護神なら神社に滞在してないとただの人間と同じになる。しかし、相手が妖なら人の姿をしていようとある程度力を使える。」
「なるほど。なら兄者が行ったときに妖術で隠れたってことか。」
「そう言うことだ。」
海もちゃんと理解したようだ。
「それよりマズいですね。一緒にいる人間が危ない。」
悠汰は少し重い口調で言った。
「なぜですか?」
「彼女がここを占拠するためには隠れ蓑が必要。しかし、いざという時の人質にもなるのです。」
「なっ…!」
思わず二人は絶句した。
「とにかく、彼らにこのことを話さなければ。私が直接行きましょう。」
「俺たちも!」
海は力強い眼差しを悠汰に向ける。
「構いません。行きましょう、時間が少ない。」
そう言って悠汰たちは楓の関係者のもとに急いだ。
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