3.女子高生は速い
「あの。あのーーーーーー!聞いてます?」
顔をあげると目の前にキレる女子高生がいた。
ここは、かしわぎ駅前。日陰があるベンチである。
「だから、一緒に行きませんか?」
首をかしげる俺に彼女は言った。
「それですよ。それ」
俺が持つ紙を指差す。
「場所知ってるんですよね?行きますよ、ほら」
手を握られた、生まれて初めて女の子に……って速いは速すぎるぞ女子高生。俺の手を握り、走りだした彼女。俺の足がついていかない。
「曲がりますか?」
「ちょ、ちょっと休ませて」
公園のベンチに座っている俺。
久しぶりに走ったなあ。風をきる感じが何とも……。
冷たっ!
余韻に浸る俺の首筋に、彼女はミネラルウォーターを当ててきた。ニヒヒッと笑う彼女に俺はキュンと来そうになる。
そして手のひらを差し出す。
「女子高生はお金に余裕がないんです」
俺は、財布を出した。中は210円しか無い。帰りが160円だから。
「ごめん。金なかった」
「利子は高いよ」
またニヒヒッと笑う。顔を見ると可愛いかった。ショートカットがよく似合う女子高生は、俺の見た中でベスト3に入るだろう。
彼女は俺の横に座った。
「それで、どこにあるんですか?」
「えーと、それがさ。俺も」
「わかんないとか無いですよね?」
俺の弱点は敬語のようだ。
「あっちだったかな。」
俺は適当に指をさす。
「じゃあ、行きますか。」
また、俺達は走りだした。