1.就職先は?
石畳の道。それを挟むように建てられた西洋風の家。
行き交う人の多さが気にならないほど道は広く、様々な人たちが行き来していた。
金髪を見せびらかすように歩くお姉さんや、片眼鏡を付けたおじいさん。いい感じに日焼けしたマッチョなお兄さんたち、その後ろを猫耳を付けた……猫耳を生やした女の子たちが喋りながら歩いて行く。空を見ると箒にまたがって飛んでいる少女がいた。
そう……ここは”異世界”なのである。
きっかけは、夏のある日のこと。
働く気も勉強する気もなかった俺は、高校を卒業してニートになった。ニートと言っても萌えとかゲーム漬けな訳では無い。どちらかと言えば小説を読んだり、ネットサーフィンをしたりすることが多い。まあ最近はアニメも見るようになったけど。
そんな俺に母ちゃんは、
「いいの見つけてきたよ!」
なんて言ったりして、紙を押し付けてきた。
「知り合いの旦那さん公務員やっててね。それでもらったのよ」
君も公務員になろう!年齢・性別は問いません。内容…後日お知らせします。
と書かれている。
へえ、公務員か。あまり知らないけど安定してるとか聞くな。これもチャンスだ。
「受けてみるよ」
「本当!面接明日だから頑張ってね」
明日……。明日!なんだよもうちょっと早く言ってくれよ。スーツとか持ってないし、第一勉強してない……試験は無いのか。
――悩んでいるうちに朝になった。