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朝の5時59分59秒。
僕は枕元にある目覚まし時計の鐘が鳴るか鳴らないかの瀬戸際の所で僕は目覚ましを止めた。
すると、階段を登ってくる音が聞こえた。
その音を聞いただけで僕は嬉しくなってきた。
スリッパのペタペタという音がどんどん近づいて来ていた。
あと、6メートル、5………4………3………2………1………0。
その時僕の部屋のドアは開いた。
そこから現れたのは天使だった。
かなり大きい僕の使わなくなったパジャマを着ていて、その上に真っ白なエプロンをつけている。
右手にはお玉、左手にはしゃもじをもっている。
髪は艶があり、古き良き日本の未来に残すべき至宝の黒髪であり、体はまだ発展途中だが、それでも所々に小学生とは思えない色気をわずかに感じる。
僕の大好きな妹がそこに立っていたのだ。
「おにいちゃん。早く朝御飯食べないと遅刻しちゃうよ」
僕は弁当や朝食を作るべく、ベットから抜け出して台所に向かった。
トースターに食パンを二枚放り込んで、僕は朝食の準備を始めた。
妹は目玉焼きが大好きなので今日は目玉焼きでも作るかな?
僕はそう思って冷蔵庫の中を確認した。
冷蔵庫の中にはほとんど食材が入ってなかったのだ。
今日は学校帰りにスーパーに寄らないとだめだな。
僕は目玉焼きをさっさと作り、トーストを皿に乗せてリビングのテーブルまで運んだ。
「咲は今日は何のジャムがいい?」
「いちご!」
「了解、じゃあ取ってくるね」
僕はそう言ってジャムを冷蔵庫から取り出した。
『いただきます』
僕と妹の咲は二人で朝食を食べている。
そう、二人でだ。
両親を2年前に亡くした僕たちは親戚に引き取られた。
そこの人達は優しくしてくれていた。
しかし、妹の咲はそれを拒んだ。いや、拒絶したのだ。
まだその時は妹は5歳だ。まだ親に甘えたくて仕方のない時だっただろう。それなのにその甘えたい両親がいないなったのだ。
そして、別の他人が両親のように接して来たのを咲は拒んだのだ。
そして、僕に甘えてきたのだ。唯一の肉親の僕にだ。
僕も妹のためになるならと思い甘えさせてきた。
しかしそれが失敗だった。何故ならば僕も妹を好きなってしまったからだ。
兄に甘えている妹と、妹を溺愛している僕はどうなるのだろ。
少しだけ不安を覚えたのだった。
僕と妹は朝食を食べ終わると学校の準備を始めた。
妹は小学校に、僕は高校に通っている。
僕と妹は雑談をしながら登校していた。
妹を小学校の前まで連れていった。
妹は嬉しそうに登校していた。
多分楽しいのだろう学校が。心のそこからたのしんでいるのだろう。
そんな妹には不自由をさせたくない。
妹の笑顔を守るために普通の事をさせてやりたい。
僕はそう思っている。そのためにも頑張らないとな。
僕は高校に向かって歩き出した。
「お早う、徹」
学校の自分の教室に入ると友達が声をかけてきた。
そこそこの顔立ちをしているがあまり女子にはモテない。まぁ、それにも理由があるのだが……。そんな友達だ。
僕の親友と言ってもいいほど中のいい友達の要だ。
「お早う、要。今日は早いないつもは遅れて来るくせにな」
「おうよ、実はな昨日なウチのクラスの連中が例のコスプレカフェに行ったんだよ。そしたらな凄い可愛い娘がいたらしいんだ。それでそいつらが写真を取ってきてるから。今日の朝見せてもらうんだよ。だから早めに来て1秒でも長くこの眼に焼き付けようと思ってな。どうだ?徹も気にならないか?」
僕の親友?の要はかなり女の子のことについて積極的すぎる。そのせいで女の子にかなり引かれているのだ。本当なら彼女の1人くらいはいてもおかしくないのにな。
「ごめん、要。僕はあんまり興味がないな。確かにコスプレって聞くと興味はそそられるけど。僕はそう言うことには興味がないからね」
「そうだったな。徹は極度のシスコンだったな」
「うるさいな。ほっとけ!」
僕と要がそんな風に話をしていると何人かの男子が教室に入ってきた。それを見ると要はそいつらの元に飛んでいったのだ。
どうやら彼らが例のコスプレ美少女の写真を持っているのだろう。
しかし、僕には嫌な予感がしてたまらない。
「おい、例の写真を早く見せろよ」
要がそう言うと写真を取った奴は要に携帯の写真を見せた。
「へぇ~。これは凄いな。コスプレも合ってるし、何より可愛いな。おい、徹も見てみろよ」
要は僕の方に携帯を渡してきた。その画面を見ると僕の嫌な予感は的中した。
某魔法少女の格好をしていた美少女がそこには写っていた。
金髪のカツラをしていて、髪型はツインテール。黒い鎌のようなディバイスの模型を両手で持っている姿は本物そっくりだった。
そして、その顔には見覚えがあった。
いや、この顔が分からない訳がない。何故ならば僕自信だからだ。
僕はバイトをしている。
そのバイト先はコスプレカフェなのだ。
元々はここにはいないとある先輩に強制的に行かされた時に店長に気に入られて、先輩にも脅されて断るには断れず今のバイトをしている。それにかなり時給もいいのだ。
それに最近ではコスプレが楽しくなって来たのだ。
しかし、これはマズイ。さすがにバレるか!
僕はバレないかドキドキしていた。
「しかし、可愛いな。今度みんなで見に行こうぜ!」
どうやらバレていないようだ。
僕はこの日の授業の内容が頭に入ってこなかった。