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お待たせいたしました。書きたい事がまとまらず、長くなりそうなので投稿しました。
「怜央、おはよう!」
「おはよ」
「佳暁どうだった?」
「は?」
「うっ…」
明らかに不機嫌モードの怜央に、伊音は言葉が詰まる。久しぶりの怜央の様子に、背中から冷や汗が吹き出ているのがわかる。
「このドス黒いオーラは、珍しく怜央ちゃん?佳暁誘えなかった??」
怜央に睨まれるが、笑顔のままいつも通りの大我。伊音は、自分の彼氏だが一番敵に回してはいけないと
改めて実感する。
「高丘君、バイトだって」
「うん。知ってるよ」
「知ってるのに、私に誘わせたの?」
「そうだよ。佳暁、怜央ちゃんが誘えば絶対OKすると思ったから」
私が誘って素直に行くって言うわけないじゃない!
口に出してしまったら、余分な事も言いそうで怜央はぐっと我慢する。
「プールに行く事伝えた?絶対伝えたらバイト休むよ」
「そんなわけないじゃない!」
「じゃあ、賭ける?」
「え?」
「佳暁がバイト休んで来るかどうか」
「そんな事して私に利益があるわけ?」
大我が、待ってましたと言わんばかりにいい笑顔を向ける。
「伊音の料理教室一週間休んでいいよ」
「のった!」
怜央は、勢い良く席を立った。
「じゃあ、佳暁にこっちに来るように呼ぶか」
「いいわよ」
「佳暁が行くって言ったらこっちのお願い聞いてね?」
「わかったわよ」
怜央は、 絶対に佳暁が誘いに乗るわけないと何故か信じ切っていた。人生はそんなに甘くはないという事をわかっていたはずなのに…。
当日…。
「行きたくない…」
「駄目だよ。怜央ちゃんいなきゃ意味がない」
「そうだよ!せっかく久しぶりに可愛い格好してるのにもったいない!」
「いつもそんな感じでもいいと思うけどなぁ」
「嫌!」
いつも襟シャツにパンツ姿の怜央が、鎖骨の見えるチュニックにショートパンツでいる。髪も編み込んでまとめられている。
賭けで負けた為、今日一日は大我と伊音の好みに染められているのだ。
「こんな怜央ちゃん見て、鼻血出さなきゃいいけどな」
「脚ばっか見て触りたくてウズウズしてる姿とか早く見たい!!」
「脚フェチのあいつには喜ばしい限りだな」
「見ないでってば!!」
怜央は、しゃがみ込んで脚を隠そうとするがそのせいで全員の目線が一気に集中する。
「怜央、これ以上無く最高の眺めになるからとりあえず立った方がいいよ」
「え?」
「胸。谷間がくっきり見えて超エロい」
皐月が、ニヤニヤしながら胸元を指差してくる。いつもなら隠れている怜央の大きめな胸が強調されている。
「やぁ!見ないでよ!!」
怜央は、あまりの恥ずかしさに脚を抱えて下を向く。そこに、遅れて奴がやって来た。
「お前ら何してんの?」
「佳暁、おはよ!」
「あんまりにも可愛いから、ついいじめたくなっちゃって」
「は?何言って…」
佳暁は、しゃがみ込んでいる怜央を見て言葉を失った。いつも見る怜央と明らかに違うからだ。
「すっ…すぎ…はら?」
「え?」
佳暁に名前を呼ばれ、顔を上げる。目が合った瞬間、佳暁のくっきり二重の目がより大きく開かれる。
「なんつー格好して!」
佳暁に腕を引っ張られて立たされた怜央。佳暁の着ていたシャツを羽織らされる。
「てめーらの仕業だな!」
「仕業って、サプライズプレゼントじゃない」
「着替えさせろ!」
「いいじゃない。どうせ知ってる人ばっかりなんだし」
「そう言う問題じゃない!」
伊音と佳暁の言い争いが続き、徐々に冷静さを取り戻していく怜央。
「今回は、挑発にのった怜央ちゃんも悪いんだし俺らだけのせいじゃないんだけどね?」
「はぁ?」
「そうよ。あんたが来なきゃこうならなかったのよ」
「何?」
「てか、さっさと行かないと道が混むから行こう。怜央の美しい脚を見て事故らないよう安全運転でよろしく」
「ちょっ!」
皐月に運転席に押し込められ、佳暁は不機嫌丸出しである。怜央は、怜央で助手席に座らされ微妙な空気である。
後部座席のカップル二組だけが楽しそうにしている。
出発して約一時間…。
「すっごー!」
「でしょ?完成した日に来た時、感動したもんね」
「きちんとキャラクターまでいるし」
「あのキャラクター、最終決定したの私だし」
「マジ?それで残念な感じなんだ」
「ちょっと、どう言う意味よ!」
佳暁と怜央をほっといて二組のカップルは、この状況を大いに楽しんでいる。
「ちょっと、そこのカップル早く来なさい!」
「は?」
皐月が、二人を手招きする。
「カップルってなんだよ」
「だって、彼シャツって流行ってるけど、リアルに彼シャツ着てる子初めて見るし」
そう、怜央はあれからずっと佳暁のシャツを着ているのだ。脱ごうと思ったのだが、佳暁に着ていろと言われ脱げないでいた。
「彼シャツって結構ヤラシイよな」
「うるせぇ!このままでいいんだよ!」
「独占欲の強い奴は嫌われるぞ」
「怜央ちゃん、かわいそ~」
「お前らだまれ!」
顔を真っ赤にして怒っている佳暁をいじってみんな楽しそうである。
しかし、怜央はこの後の事を考えてどんどん気分が沈んでいく。早く一日が終わる事を願うのであった。