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遅くなりました!
これから、もう少し早く投稿出来るようにします。これからも、よろしくお願いします!!
結婚して二週間。佳暁との生活に少しずつ慣れて来た。と言っても、佳暁は毎日遅くまでバイトをしていて話す事がない。
学校では、学科も違うしサークルに入っていない怜央とサークルをしに大学に行っている佳暁が基本会う事はないのだ。
会ったとしても佳暁は、女の子を侍らせているので話しかける気にもならない。
「おはよう」
「おはよう。朝から疲れてるね」
「そう?昨日の伊音には、驚かされてさぁ…」
「今回は、何したのよ」
「鍋の蓋が何故か吹っ飛んだの…」
「は?」
「一瞬目を離した隙に、超常現象が起きたのよ」
出し忘れた食材を冷蔵庫から出そうとした瞬間、後ろからポンッといい音がしたと思ったら鍋の蓋が上から降ってきたのだ。
「そりゃまたすごいねぇ」
「でしょ?全く目を離せないね」
「一品でも作れる様になったわけ?」
「とりあえず、ご飯は炊ける様になったよ」
「は?それって、炊飯器に入れてボタン押せば出来るじゃない!」
「うん。そうなんだけどね…」
伊音は、機械音痴でもあるので電化製品を壊す天才だ。それを知っている家族は家電製品に極力触らせない様にしていたらしい。
「おにぎりは、一応三角に握れる様になったし、スクランブルエッグも何とかなってるよ」
「どっちも包丁使わないし、ぶっちゃけ料理ってレベルじゃないし」
「そうなんだけど…」
1ヶ月は、包丁を持たせず卵料理やダシをとったり味付けをメインに教えようと考えているのだ。
皐月は、伊音の料理音痴も怜央が必死になって教えている事もわかっているので、これ以上は何も言わないが、内心は呆れて言葉も出ないのだ。
二人でそんな話をしていると、後ろから大声で名前を呼ばれる。
「怜央!」
「伊音、慌ててどうしたの?」
「今週の金曜日と土曜日空いてる??」
「金曜日と土曜日?」
手帳を開いて予定を見ると、珍しくバイトが入っていなく、予定が空いていた。
「予定はないけど…」
「じゃあ、お願いしたい事があるの!」
お願いなんて聞くんじゃなかったとこの後すぐに思うのであった。
その日の夜…。
いつも怜央は、佳暁が帰って来るのを待たずに寝るのだが、今日は伝えなければならない事があり寝ずに待っている 。
深夜1時を回ったところで、玄関が開く音が聞こえた。
「おかえりなさい…」
怜央は、恐る恐る佳暁を迎える。こんな事は、結婚して初めてである。勇気を出して声をかけたが、佳暁は靴も脱がずに固まっていた。
「どうしたの?」
「いや…」
佳暁は、口元を抑えて何やらボソボソと言っている。何を言ってるのか怜央にはさっぱりわからない。
「話があるんだけど…」
「何?」
「先にお風呂に入って来てよ。疲れてるでしょ?」
「あっ、あぁ…」
何やら嬉しそうな佳暁に怜央は首を傾げる。機嫌が良さそうならいいかとそれ以上考えるのをやめる。話がしやすくていいかと軽く考えていた。
佳暁が出て来るまで、佳暁の弁当箱を洗う事にする。弁当箱を開けるといつも通り全て食べてある。
苦手な野菜も入っているはずが、佳暁は怜央が作るご飯を残す事は絶対にない。お弁当だけでなく朝御飯の時も文句を一言も言わずに食べるのだ。
佳暁との結婚で、一番嬉しい事である。
そろそろ佳暁が出てくる頃なので、電子レンジでミルクを温める。結婚して思い出した昔の佳暁の習慣。佳暁の家に泊まりに行くと夜必ず飲まされたのを覚えている。
電子レンジが鳴るのと同時くらいに佳暁がお風呂から出てくる。ほんのり頬が赤くなって首筋に垂れる水滴が色っぽい。
「きちんと乾かさないと風邪引くよ」
「話があるんだろ?早い方がいいだろ?」
「そうだけど…」
目のやり場に困り温めたカップを握りしめてしまう。
「怜央?」
話し出さない怜央を心配した佳暁は顔を覗き見る。至近距離で目が合い怜央は、びっくりしてマグカップを放してしまい少し手にかかってしまう。
「バカッ!」
佳暁に腕を引っ張られて水道で手を冷やす。流水が、手だけでなく怜央の頭も一気に冷やす。
「こっ、これくらい大丈夫だよ!」
「痕が残ったらどうすんだ!てか、何持って…」
佳暁は、カップの中身を見て言葉を失くした。
「お風呂上りに飲むかと思って…」
「だとしても、自分でするからいい」
「ごめんなさい…」
「いや、謝る事じゃないけど気を付けろよ」
「うん…」
怜央は、注意をされて用件を言い出しにくくなってしまった。佳暁の機嫌の良い時にしたいと思っていたからだ。
「っで、話したい事って?」
「え?」
「何かあるんだろ?」
怜央は、あまりの緊張に心臓がありえない程ドキドキしている。
「何?」
「えっと…」
「うん」
せっかちな佳暁が、怜央の言葉を待っていてくれている。一度深呼吸をしてゆっくり佳暁を見る。
「今週の土曜日って、予定空いてたりしないかなって…」
「いつも通りバイトだけど」
「ですよね…」
「何かあった?」
「ちょっと…」
「何?」
女は度胸だ。
勇気を出して佳暁に伝える事に。
「伊音に新しく出来るテーマパークに誘われたの」
「それって、港に出来たやつ?」
「そう。そのプレオープンが土曜にあって、チケットあるから行こうって、それで…」
「行って来れば?別に俺の許可いらないでしょ?」
「そうなんだけど…」
「くだらない。そんな事で起きてたのかよ」
ため息混じりの佳暁の言葉に、珍しく怜央は腹が立ってきた。何でいつもそんな風にしか言えないのか…。
「そうね。くだらない事で悪かったわね」
「別に悪くはないけど…」
「金曜日から伊音の家に泊まるから、私のいない幸せな週末を過ごして下さい」
「何だよその言い方」
佳暁の眉間の皺が一気に深くなる。
「別に、もう寝る」
「おっ、おい!」
怜央は、佳暁とこれ以上話したくなくて、さっさと部屋に向かう。
「おやすみなさい」
バタンッ!
苛立ちを表す様に、勢い良くドアを閉める。
「何なんだよ…」
残された佳暁は、訳がわからずしばらくの間動けなかったのだった。