4
大我のありえない言葉に、全員が慌てて席を立つ。
「お前、沢口がいんのに何言ってんだよ!」
佳暁が、凄い剣幕で怒っている。今にも大我に掴みかかろうとし手を出した瞬間、一に羽交い締めにされ動けないでいる。
怜央は、言っている意味がわからずに開いた口が閉じない。大我の言葉が全く入ってこないのだ。
「意味がよくわからないのだけど…」
「ちょっ、俺の体力がなくなる前に早く説明を!」
「大我、それだと簡潔じゃなく簡略よ」
「いやぁ、怜央ちゃんが二番目の彼女だったら幸せだな~」
はっ!
大我にウインクされて、飛んでいた意識が戻ってくる。
「大我君…」
「心配しないで伊音の事が好きだから、男女の交際の方じゃないから」
「そうだよね。跡継ぎ試験もあるのに女二人も相手出来ないって」
「試験がなかったら、二人くらい大丈夫って聞こえるからやめてよね」
「いやぁ、大我なら上手くやって4・5人彼女いてもなんとか出来そうだよね」
「ちょっ、さっちゃんの中で俺のイメージ悪くない?!」
「そっか?器用って意味だけどな」
「そうかぁ…」
「てめぇら!話がずれてんだよ!!」
未だに離してもらえない佳暁は、暴れて一が可哀想な程である。
「佳暁、落ち着けって」
「てめぇ、言って良い事と悪い事があんだろ!」
「冗談なのに、マジにとるなよ」
「もっと冗談に聞こえるように言いやがれ!
「はいはい。おとなしくさっさと座れって」
佳暁は、渋々ながら一に無理矢理座らせられる。何をそんなに荒げているのか怜央は不思議でたまらない。
「真面目な話、俺の跡取り試験の事みんな知ってるだろ?」
「あぁ。だから?」
「一次試験は、結果待ちで二次試験の店の売り上げ3パーセントアップは、今の見込みの段階でまず問題ないって言われてる」
「じゃあ…」
「あぁ…」
大我が、チラッと伊音を見てため息をつく。
「三次試験の内容は、結婚なんだ」
項垂れる大我に、みんな何故そんなに落ち込んでいるかわからなかった。交際期間も長く周りからいつ婚約するのかと聞かれる程、二人の仲は安泰である。さらに、家族も公認で旅行も互いの家に泊まりもよくするのに…。
「付き合うのと結婚は違うのよ…」
伊音が、机にうつ伏せになり疲れた様に言う。
「みんなも知ってるだろ?うちの小悪魔の事」
『あぁ…』
小悪魔と聞き、全員思い当たる人物の顔を思い浮かべる。
「反対してるのって…」
「あいつだけだ」
「ですよね…」
小悪魔とは、大我の妹である。見た目は大我とあまり似ていないが、着物の似合う和風美人だ。見た目だけでなく中身も素晴らしく、家事が出来るだけでなくお茶やお花などの教養もバッチリ。
大和撫子の妹であるが、性格に難があるのだ。大我曰く、天然で世間知らずと言われるが、大概の人は頭のキレる腹黒女優だと思われている。
「っで、続きは?」
「妹が…」
『お兄様は、中等部から今現在まで体調を崩した事は一度しかありません。常に私が、栄養バランスの取れた食事や快適に過ごせる環境を整えているからです。それが、貴女に出来ますか?お兄様の体調を崩させた原因の貴女に…』
「だってさぁ…」
『あぁ…』
見事に全員がハモってしまった。よく見ると佳暁の顔から血の気が一気に引いているのがわかる。
「それで、怜央に何の用なの?」
「そんなの決まってる」
『花嫁修行を手伝って下さい!』
二人に頭を下げられて怜央は、首が千切れてしまうのではないかと思う程横に振る。
「無理無理無理!」
「そこを頼むよ!怜央ちゃん以外に伊音を更正させられる人なんていないから」
「いや、絶対いるって!」
何としてでも逃げたい怜央は、必死な声をあげる。
「怜央ちゃんのお蔭で、あの事件は一度で終わったんだよ」
「事件って、そんな言い方…」
「あれは殺人事件…いやっ、テロだ!」
佳暁が、伊音を睨みつける。
「俺は、二度と忘れない。サッカー部全員に、消えない恐怖が植え付けられたあの日の事を」
伊音の起こした事件とは…?
ちょっと詰め込み過ぎて半分に分けました。次の話は、半分まで書けていますので、多分、GW中に投稿出来ると思いますので、よろしくお願いします!!