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不自然な二人  作者: 日浦怜
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何回も書き直してやっと更新できました…

大変お待たせ致しました!!

「僕だけちがうんだ…僕だけ…」


そう言って、少年の大きな瞳からポロポロと涙が零れ落ちる。目の前の少年に何と声をかけていいか幼い怜央にはわからなかった。


「僕は、きっとひろわれた子なんだ…」

「そんなこと…」

「あるんだ!僕だけ独りなんだ!」


両親どちらにも似ていないと親戚が集まる度に冗談で言われ、ずっと傷付いていたのだ。


「じゃあ…」


怜央の一言で少年は、潤んだ瞳に頬を紅潮させて満面の笑みを浮かべる。


自分は、何と言ったのだろう…。そう思った時に目覚ましの音で起こされた。


「懐かしい夢…」


まだ佳暁と幼馴染と素直に言えていた時期の夢だ。今の二人では考えられない程、昔の二人は仲良しだった。


「さぁ、起きますか」


眠い目を擦りベッドから起き上がる。一日が始まる。


今日は、一限の講義を受けたら午後まで暇という残念な時間割である。必須の講義の為休むわけにはいかず、空いた時間を図書館やカフェで潰すしかない。


講義を終え図書館で適当に本を借り、カフェに移動をする。お気に入りのカプチーノを手にし天気も良いのでテラス席でゆっくりする事にした。


30分程経った時、周りが急にざわめき出す。ふと顔を上げると中性的な顔立ちの美形が目の前に座っていた。


「怜央ちゃん、おはよう」

「おはよう、大我君」


本を閉じカプチーノを一口飲み喉を潤わす。彼が一人で怜央を尋ねる時は、決まって頼み事がある時である。


「大我君、もしかしなくても講義のノート?」

「さすが!よくわかってる!」


彼は、満面の笑みを向け小さな箱を差し出す。


「これは?」

「今日は、講義受けられなかった理由(わけ)です」


箱を開けると桜色と若草色の和菓子が顔を覗かせる。


「五月発売の新商品。俺の初作品です」

「すご!本当に!?」

「うん。ノートのお礼にぜひ」

「ありがとう!」


怜央は、鞄からノートを二冊取り出し渡す。受け取ったノートの内容を確認し笑顔を向ける。


「本当ありがとう。怜央ちゃんのノートが一番きちんと書いてあって、安心出来るんだよね」


彼、春日大我(かすがたいが)は中等部から同じクラスで、男性が少し苦手な怜央が唯一二人っきりで居ても大丈夫な相手である。


「これが売れたら、跡取り第二試験受けられるんだ」


大我は、何代も続く老舗の和菓子屋の息子で昔から家を継ぐ事が夢であった。実際は、経営の方を継ぎたいらしいのだが、職人としても継いで欲しいらしく試験内容の中に組み込んであるそうで、そのせいで進みが恐ろしい程悪いのだ。


「それで、怜央ちゃんに…その…」


大我が、何か言いにくそうに話し出した時先程よりも周りが一気に騒がしくなる。嫌な予感がして入口を見ると佳暁が何人もの女の子を侍らせて入って来たのだ。


佳暁は、キョロキョロと見渡して誰かを探しているようだ。怜央は、心の中でこっちに来てくれるなと願うが、残念な事に佳暁のお目当てのモノは、目の前の人だった。


「大我、四限の佐々木教授の講義受けるよな?」

「あぁ。これ写したら行くよ」

「じゃあ、待ってるな」

「了解」


佳暁は、怜央を視界に入らないようにしているのか、大我から目線を一切動かさない。


「佳暁君、講義まで時間あるならまだゆっくり出来るんでしょ?」

「あっちで話しましょ?」

「佳暁君」


女子達が佳暁の腕に絡み付いているのを見て、胸の辺りがムカムカする。毎日の様に見る光景であるが、こんなに間近で見たのは初めてだ。


「先行くな」

「あぁ」


佳暁が出て行くと、カフェは元の静かな状態に戻る。さっきまで美味しかったカプチーノは、味を無くしてしまいこれ以上飲めなくなってしまった。


「怜央ちゃん、さっくり写すからちょっと待っててくれる?」

「うん。ゆっくりでいいよ…」


今は、一人になりたくない…。


怜央は、気分が落ち込んでいるのがわかりより落ち込んでいく。落ち込んでいる理由を考えないようにするが、なかなか頭から離れず早く親友二人に会いたいと思った。自分を簡単に振り回す二人に…。

何とか時間が過ぎ…。


「れ~お~!」


ガバッ。


「うひゃっ!」


振り返ろうとすると後ろから抱き締められる。毎日される事だが、突然されるので全然慣れないのだ。


「あぁ…この抱き心地マジ最高!!」

「ちょっ、皐月!変なとこ触んないで!」

「少しだけ。この程良い弾力のある胸に腰から太腿にかけての素晴らしいこのライン…たまんな~い!!」

「そんな変な事大声で言わないで!!」

「ぐふふっ」


このおっさんの様な言動をするショートボブの美人は、怜央の一番の親友の七瀬皐月(ななせさつき)。中・高と同じクラス同じ部活でずっと一緒、怜央の事を一番わかってくれる人物である。


「さっちゃん、それ女同士でもセクハラよ」

「怜央ちゃん、毎日ご苦労様」

「二人とも助けて!」


やって来たのは、大我と彼女の沢口伊音(さわぐちいおん)である。伊音は、170cm近い長身の美人で今でこそ髪が長いが、高校時代はベリーショートで少年に間違えられる事が多かった。大我と並ぶと男女逆転して見えていた程であった。


「いおちゃん、大我君昨日ぶり~」

『ぶり~』

「ハモってないで助けてよ!!」


皐月の手が怜央のシャツの中に入ろうとした瞬間。


バンッ!


「お前らうるせぇよ」


眉間に皺を寄せ不機嫌丸出しの佳暁がやって来た。


「いつも佳暁の方が騒がしくさせてるけどな」

(はじめ)、黙れ」

「皐月、これ以上やると怜央ちゃんファンが増えちゃうから駄目だよ」


彼は佳暁を完全に無視し、まだ怜央に巻き付いている皐月に注意をする。皐月は、彼に言われると素直に怜央を離す。

坂本一(さかもとはじめ)は、皐月の幼馴染であり彼氏であり婚約者である。スッキリとした短髪にオシャレ眼鏡が印象的な好青年だ。


「佳暁、何で鞄持ってんの??」

「本当だ!明日雨?や、嵐が来る?!」

「俺が鞄持ってちゃ悪いのかよ!」

「悪くないけど、大学入って丸二年間ファイルとシャーペンしか持って来た事ないくせに」

「そんな事ない!」

「選択全部一緒なんだから間違いないわよ」

「その鞄の中身気になる!見せなさい!」

「やめろ!!」


伊音と皐月に両側からイジられ、佳暁は必死になって鞄を抱えている。怜央は、そんな様子を冷めた様に見ている。同じグループにいるが怜央と佳暁は、用事が無ければ全く話さない。話しても敬語で六年も同じクラスとは思えない。普段の二人はこんな感じなのだ。


「話があるんだろ!さっさと話せ、昼の時間が無駄だ!!」

「そうだね。さすがに佳暁が可哀想だし止めてあげなさい」

『はいはーい』

「大我、さっさと話せ」

「そうだね。怜央ちゃん」

「はい」

「簡潔に話せよ。簡潔に」

「じゃあ、簡潔に」


大我は、にっこりと何か含んだ笑みを向ける。佳暁は、嫌な予感がした。


「怜央ちゃん、俺と付き合って下さい」

『はぁ?!』


さて、波乱の幕開けである。

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