思い
海斗が知った菫と千夏の真実。そしてその真実が海斗の心を傷つける。思い淵がれている海斗にかける母の言葉とは。そして新たなに出会う仲間たちと振りかざされる新たな試練とは。次号に登場する八岐大蛇と海斗の先祖神との因縁が明らかになる。日本神話とギリシャ神話が交わるファンタジーアクション。次号に続く!!
第三章
プロローグ
海斗は夢を見ていた。辺りは真っ暗で何にも見えなかった。
そこに突如、一人の女の子が現れる。それは、涙子の姿だった。
涙子は学校の制服を身にまとい、いつもと変わらない姿をしていた。
海斗は涙子に声をかけようとするが、口から声が出なかった。
すると、涙子の顔から血が滝のように流れ出す。涙子は海斗に助けを求める。
「助けて、助けて、助けて・・・・」涙子は海斗に向かって、その言葉だけ連呼する。
海斗は涙子に触れようするが、煙の様に消えてしまった。
後ろからまた声がした。
千夏と菫の姿だった。彼女たちも制服を着ていたが、彼女たちの制服は血で染まっていた。彼女たちも涙子と同じ言葉を連呼する。
涙子の姿も現れ、言葉を連呼する。
海斗はその言葉から逃げようとするが、血だらけの手が足を抑えていた。耳を塞ごうするが、血だらけの千夏と菫が手を抑える。
そして、涙子が海斗の顔に自分の顔を近づける。
海斗はパニック状態に陥り、騒ぎ出す。
「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい・・・・・」海斗は必死に謝る。
「かいくん、あなたは誰も守れない。自分のことさえも・・・・」菫は静かに答える。
すると、涙子の後ろに巨大な鎌を持った死神が現れる。死神は鎌を涙子の首にかける。
「助けて、助けて海斗君。お願い・・・・・・」涙子は海斗に助けを求める。
「やめてくれ、やめてくれ、やめてくれーーー」
死神は海斗の声に耳を傾けようとはしない。
死神は静かに涙子の首を刎ねる。首は、静かに地面に落ちた。
「あーーーーーーー」海斗の声は空高く響き渡った。
第一話
「あーーーーーーー」海斗はその声とともに目が覚める。
海斗は息を荒あげていて、目も水分が無くなった様にカサカサしていた。
服装は前日と同じで制服のまま寝てしまっていた。襟先は少し濡れていた。
手鏡を見ると、涙を流したために目が充血した。
とりあえず顔を洗うために、洗面所に向かう。自分の部屋を出ると、キッチンから水を流す音がした。覗くと母さんが食器を洗っていた。俺は母さんに涙を流した顔を見せたくはなかった。静かにキッチンの横を通ろうとする。
しかし、あっさりばれてしまった。
「海斗、ちょっと来なさい」
俺は呼ばれたが、顔を見られるのが恥ずかしかったので顔を隠す。
「母さんは、お見通しよ。顔見せてみなさい」母さんは海斗に近づき、両手で海斗の顔に触れる。母さんの手は柔らかく、温もりを感じた。
「昨日は、沢山泣いたのね。どうしたの?」母さんは海斗の顔を覗き込む。
「いや、なんでもない」
女の子に守られたなんて、恥ずかしくて言うことができなかった。
「母さんには何でもお見通しよ。差し詰め女の子関係でしょ」
母さんの狙いの的中さに驚いた。
「海斗、昔から女の子にモテモテだったから」
全然違っていた。女の子といえば、恋愛関係という母さんの古い考え方だった。
海斗は小さく笑った。母さんもそれに気が付き、クスクスと笑い出す。
「話してみなさい、気が楽になるわよ」母さんは微笑みかけた。
海斗は一人で考えていても埒が明かないと思い、自分の弱いところを母さんに話し始め
「俺、女の子たちのことを守りたいと思っているんだけど、みんな自分よりを強い力を持っているし、守るっていうか、守られているみたいな感じなんだよね」
「誰が自分より強い力持ってるの?」
「柔道部の先輩とか同級生とか」
「みんな男の子?」
「いや、・・・・女の子」
「へえ〜、その女の子たちがどんな感じで強いの?」
「えっ、何かこう誰にも屈しない強い心とか力みたいな〜」
「それってあなたが一人で思っているだけのことでしょ?」
「えっ、なんで?」
「女の子って、本当はみんな弱いのよ。だから、あなたが思っている強い心とか力って表のことであって、裏はみんな弱いのよ」
「そうのかな・・」
「そうよ、みんな。あなたに守られたいに決まっているじゃない。でもまだ、その守る力があなたにないなら、今はその女の子たちに甘えなさい。でも、いつかはその子たちを守れる力をつけなさい」
自分の何かが壊れたように、自然と目から涙が溢れてきた。昨日、涙を流し尽くしたと思っていたけど、涙は流れてきた。
母さんは海斗のことを優しく抱きしめた。
しかし、母さんの顔は何処か悲しそうな顔をしていた。母さんは海斗から静かに離れると後ろを向いて静かに呟いた。
「あなたには、守りたい人がいて守ってくれる人がいる。その子たちのことを大切にしなさい。ほら、学校でしょ。早く顔洗ってきなさい」母さんは俺の振り向き、俺の肩を優しく押した。
海斗は急いで洗面所に行き、顔と歯を洗い急いで家を出た。
母さんは海斗のことを見送ると、リビングの椅子に静かに座った。
母さんは静かに呟いた。
「海斗、あなたは恵まれているわ。あなたには守ってくれる人がいて、私には守ってくれる人なんかいなかった。私の周りは敵ばかりだったわ」
海斗はいつもと道を歩いていた。少し肩に乗った荷が取れたような感じがした。
やっぱり誰かに相談することはいいなと心の中で思った。
「海斗君、おはよう」
「おう、涙子!」海斗は笑顔で振り向いた。涙子だけには昨日起きたことを悟られたくなかった。
「海斗君、昨日私いなくて帰れた?」
「おい、涙子さん。お前から見て俺は何歳なんだ?」
「えっ、十四歳ぐらい」
「え、何で十四歳?」
「だって、いつも自分で中二病抜けてないとか言ってなかったっけ?」
「確かに抜けてないとか、“中二病は永遠”とか言ってたけど、俺十七歳だから、お前と一緒だから」
「じゃあ、改めるね。海斗君の歳は十四歳から十七歳ね」
「おい、何かゲームの設定年齢みたいになってるぞ。十七歳だから、十七歳!」
「それよりも海斗君、昨日何もなかった?」
「お前、涼しい顔でスルーするな。で、何で?」
「え、何か帰るとき先生たちに挨拶してから帰るんだけど、六時に職員室に行ったら誰もいなかったんだよね」
俺が寝かされていたのは七時半すぎ、でもいつもなら八時までいる先生たちが六時前で帰っているってことは昨日のことは先生たち公認の出来事だったのか。
しかし、先生たちを動かすということは国がそれを容認していることに値する。そんなことはあり得ない、それは国が異界の力を認めているということになる。よくアメリカが宇宙人と交信しているとかのデマ情報が流れるが、日本で宇宙人と交信しているかという情報は流れたことはない。
てことは、日本は他の国々に黙って宇宙人みたいのと交信していたのか。何かラノベのファンタジー小説みたいだな。
俺の隠れていた中二病の精神が活性化されていた。
「海斗君、大丈夫?」
「え、あ。大丈夫大丈夫」
海斗は横に首を振る。
「で、何だっけ?」
「でね、変じゃない?あと、叶ちゃんと帰っているときも、後ろから誰かがついて来るみたいな感じで怖かったんだ」
「あ、そう」
「え、海斗君心配してくれないの?」
「いや、ごめんな。今、自分のことで手いっぱいなんだ」
「何、相談事だったら涙子聞くよ?」
やっぱり母さんの言う通りだなと思った。
「バ〜カ、何でもねーよ」海斗は小さく笑い、覗き込む涙子の顔にデコピンする。
「イッタイ〜、海斗君!」
「ほら、涙子。早く、学校行くぞ!」
海斗は涙子の手を引っ張り学校へと向かった。
学校に着くと昇降口で菫が待っていた。
「かいくん、おはよう」
「おはようございます、菫先輩。分かっています、話ですよね」
「うん、ちょっと来てくれるかな」
「はい。涙子、先に教室に行っててくれるか?」
「うん、いいけど。どうしたの?」
「いや、部活の話だよ。だから、心配するな」
「うん。じゃあ、先に行ってるね」
海斗と菫は横に並んで廊下を歩いていた。歩いていると他の生徒たちが僻みを利かす。
学校の美人ランキングトップ10に入る菫先輩は、男子生徒の憧れの的なのである。特に高校三年生の男子生徒たちからは痛み目で見られる。周りを気にする海斗に気付いた菫先輩は、海斗の肩を自分の体に寄せる。
「ちょっと、菫先輩。男子の目が」
「かいくん、静かにしてて。後でみんなには誤解だからって伝えておくから」
「そんな菫先輩だから許されるんですよ。俺、菫先輩がいないところで殺されますよ」小さい声が菫先輩に伝えるが、菫先輩は離そうとはしてくれなかった。
生徒たちの目線は激しかったが、時間が経つにつれておさまった。
そして、菫は海斗を人が近寄らない場所まで連れていくと、テレビお決まりの秘密のボタンを押す。案の定、地下へと続く道が開かれた。
「じゃあ、かいくん入って」菫は海斗を招き入れる。目的地まで続く道は真っ暗で何も見えなかった。菫はそんな海斗の手を引っ張り、先頭をきる。真っ暗なのに菫は転ぶことなく、前へどんどん進んでいく。
菫は横開きのドアを開くと明かりがついた。中には十個の机と椅子が円形状に並べられていて、皆黒いフードとマントを着て座っていた。
菫は海斗の手を放すと中央の椅子に腰かけた。
「じゃあ、かいくん。真ん中に立って、これからかいくんを守る会のメンバーを紹介するわね。右から紹介していくね。一人目 真田 忠孝君」
紹介されるとマントを脱ぐ設定らしい。一人目の奴に聞き覚えがあった。何を隠そう俺と同じクラスの奴だった。
「オッス、海斗!」
「えーー、お前もメンバーだったの?何にも取り柄もないお前が?」
「取り柄がないとか言うな、ちゃんと取り柄ぐらいあるわ」
「ちょっと待て、お前がいるってことはまさかあいつも」
「よくわかったな、海斗」左から聞き覚えのある声がする。いつも、真田とつるんでいる伊達 正忠の姿だった。こいつらは、ホモって間違われるぐらいいつも一緒にいる。食事の時もトイレに行く時も帰る時も、しゃべり方でさえほとんど一緒なのである。
こいつらは名前の通り、真田 幸村と伊達 政宗の子孫なのである。
「なんで?なんで、俺のクラスの奴らがこんなに。まさか、他にも」
案の定、菫先輩が紹介する前に女の子が飛びついてきた。天童 千夏だった。
「海斗君ごめんね〜、昨日は冷たい振り方しちゃって。だから、今日は昨日宣言した通りの髪型にしてきたよーーー」千夏は今日も他のアニメの設定をモロパクリしていた。
今日はちなみにロングのきみどり色をしていた。何のアニメのキャラクターをパクっているかは読者のイメージに任せよう。まあ、俺は一つしか思いつかないが。
「おいおい、俺たちのこと忘れるなよ。まだ菫先輩、俺たちの説明してないぞ」
海斗と菫はこいつらの言ったことをあっさりスルーして次の人の説明をする。
「四人目 ルイス・デット・ブラットリバーちゃん」マントをとると、黒い黒髪と赤い目が光る。何故か顔に手を置き、女の子なのにかっこつけてしゃべる。
「お前の血は何型だ?」
「えっ、AB型ですけど」
「それ、私の大好物のAB型じゃないか。あとで私のところに来い。死なない程度まで血を吸ってやろう」
彼女は笑いながら海斗に言う。彼女に面と向かって言われた瞬間、ゾクッと鳥肌が立った。
「ごめんね、かいくん。ルイスちゃんはヴァンパイアの分家の子孫なのよ。だから、主食は血なの。でも大丈夫、たまにしか人襲わないから」
「えっ、たまにって!たまに襲うんですか?」
「うん、すごくおなかがすごく減っている時だけだから」
確か菫先輩もAB型なんだが、それを平然と言える菫先輩がすごいと感じた。
「五人目 天照 水蓮ちゃん」マントをとると、水色のロングヘアーで水色の目をしていた。彼女のことを学校で一回も見たことがなかった。
「よろしく」
彼女は髪の毛を掻き上げ一言だけ言うと席に腰かけた。
「彼女、最近転校してきたばっかりなの」
何だ、だから見たことなかったのか。あー、何か安心した〜何故か知らないがそんな気持ちになった。
「水蓮ちゃんの隣にいる子は素戔嗚 火垂ちゃん」彼女も水蓮さんと同じように髪と目の色が赤一色で統一されていた。マントをとるなり、俺のことを威嚇し始める。
「彼女、私の幼馴染で高校一年生なの、よろしくね」
右から紹介してもらったが、どこかみんな普通の高校生ではないような感じがした。
「で、会長の卑弥瑠魏 菫と副会長の聖徳 叶ちゃんと書記の蘇我 桐江ちゃん」
全員の紹介が終わると、菫先輩は椅子に腰を掛けた。海斗は周りを見渡すと、一つ席が余っていた。不自然に思い、菫先輩に尋ねる。
「菫先輩、あそこの席は?」
「あー、あそこの席は気にしないで。そこに座る子、年に一〜二回しか外に出ない子だから。とりあえず、この十人で、かいくんのバックアップします。同じクラスの人たちは気合をいれてください。今日の担当は、火垂ちゃんお願いね。今日は、解散」
解散の言葉とともにそれぞれ皆自分たちの教室に戻っていく。
海斗は菫に話したいことがあったため、みんなが部屋を出るのを待っていた。
菫もみんな出るのを待っていた。菫も同じ気持ちだったらしい。
「菫先輩、昨日はありがとうございました。先輩、刀使えたんですね」
「そう?昔から叩き込まれたから、剣術とか柔道、空手、合気道全部やらされた」
「やらされた?」
「代々、私の家系は伊邪那岐の神を祀る家系で、伊邪那岐の当主たちを影から守ってきたの。だから、私は、かいくんを守るという伝統から厳しく躾けられた。毎日泣いてたわ、でも全然苦しくなかった。だって、かいくんを守れるんだもん」菫の目からは涙が溢れていた。
「そうだったんですか」海斗はかけてあげる言葉が見つからなかった。
「昨日だって本当は、あんな姿見せたくなかった。見せたら、かいくんに嫌われるんじゃないかって、ずっと心配だった。だから昨日はわざと突き放した。ごめんね、かいくん」
朝、母さんの言ったとおりだった。先輩も表は強いけど、裏は普通の女の子だった。
「先輩、謝んないでください。昨日、俺先輩に守られたとき、実は心の中で嫉妬していました。俺もこんな力ほしい。この力があれば、自分も涙子も先輩だって守れるって。でも俺にはそんな力どこにもない。だから今は、先輩の力に甘えさせてください。でもいつか、逆に先輩や千夏、涙子たちのことを俺が守って見せます。その時まで先輩の力を伊邪那岐海斗に貸してください」海斗は感謝とこれからのために先輩に頭を下げた。
「あはは、かいくん。それってプロポーズ?」
「違いますよ。てか、これじゃあ、さっきまでのシリアスムード台無しじゃないですか」
「ありがとう、かいくん。何か私、全部言って肩の荷が取れたような感じがする」
菫はいつの間にかいつもの笑顔を取り戻していた。
突然後ろから視線を感じた。
後ろを振り向いたがそこには誰もいなかった。
「どうしたの?かいくん」
「いや、何か誰か見られているような感じがして」
「気のせいじゃない?それよりも、早く教室いかないと授業に遅れちゃうよ」
菫は、立ち上がり後ろから海斗の肩を押しながら、その場を後にした。
菫と海斗が出口に出ると、窓には昨日見た鳳凰に似た鳥が木にとまり、海斗のことを一直線見つめていた。その鳥は、数秒海斗のことを見つめると、空へと飛び立って行った。
「かいくん、どうしたの?」
「いえ、何でもないです。行きましょうか」
「うん、途中まで一緒に行こう」
菫と海斗は二人横に並び自分たちの教室に向かった。
教室に着くと、昨日学校に忘れていったかばんと作文用紙が自分の机の上に置いてあった。
そして昨日休みだったテルーの席を見る。席は空席になっていてテルーの姿はなかった。
海斗はテルーが風邪かなんかで休んでいると自分の中で納得する。納得するとともに担任の先生が教室に入ってきた。みんなはそれと同時に自分の席に座る。
先生は今日学校の都合上で四時間授業になったことを生徒たちに伝えた。
男の生徒たちからは歓声が上がり、女の子サイドからは『これから買い物行く?』などの提案があがる。先生は生徒たちの歓声を一喝して治める。
先生は迅速に授業の準備に取り掛かる。
生徒たちは授業の準備をする。俺も授業の準備に取り掛かった。
授業が始めると四時間授業っていうこともあり、時間の進みが早く感じた。時間を見ると、四時間の授業は終わって、帰りのHRに入っていた。
HRも終わり、帰り支度をしていると千夏が後ろから抱きついて来る。
「かーいーとくーん」
海斗は勢いのあまり顔を机にぶつける。千夏はそんな海斗を気にすることなく、自分の胸を海斗の背中にこすりつける。
海斗は最初、千夏を怒ろうとしたが後々になると嬉しさ半分、興奮した感半分になっていて怒る気になれなかった。
「海斗君、この後どうする、どうする?」
「わり〜な、千夏。今日、部活なんだ」
「あっれ〜、海斗君知らないの?菫先輩が主将の阿保島先輩にしばらく部活を中止にしてくれって頼んだらしいよ」
「えっ、マジで!そんなのこと、朝言ってなかったぞ」
「さっき決まったんだって」
「じゃあ、どうするか」
「じゃあ、海斗君遊ぼう、遊ぼう!」千夏は顔を近づけてくる。
「遊ぶとしたらどこで遊ぶんだ?」
「じゃあ、アキバで!」
「じゃあ、行くかって俺が言うと思ったか?ここどこか分かってるのか?ここ京都ぞ、京都!」
「じゃあ、立川!」
「だから、ここ京都!東京じゃないの!呼び方似てるけど違うの!アニメの聖地とか学園都市じゃないの!どっちかと言うと、お寺の聖地なの!」海斗はついつい千夏のボケにツッコミを入れてしまった。これではアニメの聖地や学園都市に行くどころかお笑いの聖地に足を踏み入れそうになってしまった。
「さっすが、海斗君!いつも以上にツッコミキレてるね」千夏は面白おかしく笑っていたが、まだ教室に生徒がいる中でやったため俺はすごく恥ずかしかった。
そこに真田が話しかけてくる。
「おっまえら、コンビでも組めよ。海斗がツッコミで千夏がボケで」
「いいね、海斗君!私と一緒にKー1を目指そう!」千夏は親指を立てて、言ってきたが最近どっかの神様にも漫才を組まないかって頼まれたようなと、海斗は自分の記憶を思い返す。
しかし、それよりもまたツッコミをしたいという衝動に駆られる。真田や千夏は、俺の方を見ながらニヤニヤと笑っていた。奴らは俺がツッコミを入れるのを待っているのだ。
読者の皆様方、五〜六行前の文を見てほしい。明らかに千夏は俺がどうしてもツッコミを入れたくなる布石を打っているのだ。彼女のセリフ、明らかに英語の文字が違う。
Kー1では格闘技になってしまう。これではお笑いの聖地を目指すどころか、格闘技の聖地を目指す羽目になってしまう。
千夏と格闘技の聖地もお笑いの聖地も目指す気はさらさらない。こいつらを適当にあしらう方法を考える。
確か真田もアニメオタクなのである。因みにこいつはツンデレっ子に目がないのである。
真田の親友、伊達に聞いた話だがツンデレっ子を見ると、レットブルーを飲んだように翼が生えるらしい。あくまで自慢の脚力を使い、飛び跳ねているだけのことである。
「あっれ〜、立川で○○星祭やってね。○坂が超電磁砲打ってね!」海斗は窓を見ながら見えるはずのない東京のウソの状態を二人に伝える。バカでもわかることだが、アニメ好きの千夏とツンデレっ子が大好きな真田はそれに飛びつく。
「え、どこ!どこどこ!」
「え、伝説のレベル7が!」
二人は、窓に引っ付く。できるだけ近くで見るために二人は窓の場所を争いだす。
京都から531km離れている東京なんて見えるはずがないのに無駄な争いをする二人を心の中で笑う。
海斗は静かに教室を出るとともに学園都市を作ってくれた憧れの鎌池さんにお礼と勝手に作品を使ってしまったことを謝る。
急いで涙子の教室に向かうが千夏たちのジャレあっていたせいで、涙子はクラスメートの女の子たちと帰ってしまったらしい。
海斗は一人、昇降口に向かう。そこには菫と火垂さんが、海斗が来るのを待っていた。
菫は口をふくらませていて火垂さんは横を向き地団駄を踏んでいた。
「かいくん、遅いよ!」
「すみません、千夏たちが帰らせてくれなくて」俺はペコペコ頭を下げる。
「今度は、気負つけてね!」菫は微笑みながら言った。
海斗はいつもの菫先輩に戻ったなと心の中で安心する。
「じゃあ、火垂ちゃん。あとよろしくね!」
菫は海斗たちが帰るのを笑顔で見送る。
火垂さんは俺と目線を合わせようとはしなかった。むしろ何かイラついている様子だった。
帰り道火垂さんが前を歩き、一定の距離を開けながら歩いていた。何か話そうと話題を考えていると、火垂さんの方から話しかけてきた。
「先輩、少し私の家寄っていきませんか?」
海斗は突然家に誘われ、戸惑う。最初少し考えたがこの後何もなかったので了承した。
「うん、いいけど。何か用事?」
「はい、とても大事なことです」火垂は静かに言った。
火垂が先に歩きその後を海斗がついていく。他人から見ると喧嘩中の恋人同士である。
火垂はとある壊れかけの神社に入る。海斗は鳥居をくぐり、彼女についていく。
「ここは?」
「ここは、死んだ武将たちを祀る場所だった。そしてこれからあなたの墓場になる場所」
「えっ?」
海斗に背を向けている火垂の方から何かが飛んでくる。それは海斗の頬をかすり、鳥居の柱に突き刺さる。海斗が振り向くと鳥居には小刀が突き刺さっていた。
かすった場所から温かいものが流れ出る。
海斗は頬を触る。そこからは最近貧血になりそうなぐらい流れている真っ赤な血だった。
火垂は無言で歩きだし、神社の片隅に生えている一本の木を蹴るとガサガサと一本の刀が落ちてきた。
「先輩、後ろの小刀抜いてください。武器を持っていない人を殺しても胸糞悪いだけなんで武士の情けって言うことでその小刀貸してあげます」海斗は今起きている状況を把握することができなかった。火垂とは今日初めて会ったばかりで彼女から恨みをかう理由が見つからなかった。
「先輩早く抜いてくださいよ。私は別にあなたを斬ってもいいんですよ。でもあなたが死んだとき菫お姉ちゃんに報告する理由がないんです」火垂は刀を抜き、鞘を放り投げる。
とりあえず海斗は鳥居に刺さっている刀を抜く。
しかし明らかに海斗が不利だった。まず刀の長さが違っていた、火垂の刀は海斗の刀より1メートル近く長かった。それに今日が生まれて初めて刀を持つのである。
当然刀の振り方なんか知らない。
「火垂さん、これちょっと不利じゃありませんか?」
「だから、私はあなたが死ぬまでの過程がほしいだけなんです。別にその刀を捨てて素手がかかってきてくれてもいいんですよ。そうしたら死んだ理由は、そうですね・・・女の子を犯したいという欲望負けて、私を襲った瞬間に正当防衛で殺されたでいいですかね」
「そんな欲望に駆られたことなんか一回をねーし、あと俺年下には興味ねーんだよチビ」
チビって言った瞬間に彼女の頭がピクッと動く。
「今、死ぬまで過程を思いつきました。私の逆鱗に触れて殺されたことにしましょう」
彼女は地面を思い切り蹴り一直線に向かってきて、刀を振り下ろす。海斗は咄嗟に小刀を前に出す。カキンの音とともに一瞬火花が散る。刀を受け止めることができたが、体小さいくせに剣戟が重かった。目を見ると本気で殺しに来ていた。
海斗の持つ小刀にひびが入り始める。
火垂は海斗の腹を思い切り蹴る。海斗は無抵抗だった腹に蹴りを入れられたため気持ち悪くなる。
しかし、昼食を食べる前だったので、苦い胃液だけが出る。
海斗には思いたることが全くなかった、彼女に襲われる理由が。昨日襲ってきた奴らの手先と思ったが、夜に襲ってきたやつらがこんな真昼間に襲ってくるわけがないし、ハデスの手先でもなさそうだと思った。海斗は彼女に尋ねた。
「何で俺のことを襲うんだ?」
「あなたは私の大切な場所奪ったんです、孤独だった私の場所を」
「場所って?」
「そんなところまであなたに教える必要はありません。なぜならあなた一秒後に死ぬんですから」
最近、死ぬとか殺すとか何回言われたっけと頭の中で巡らす。
火垂は刀を下から上へと斬り上げる。その時に持っていた小刀が真っ二つに折れ、刀が目の前を横切る。
火垂はそのまま刀を斬り下げようとする。海斗は咄嗟に刀を捨て、彼女の刀の持っている手を掴む。
「やるじゃないですか、先輩。でもこれがいつまでも続きませんよ」
火垂は刀を無理やり斬り下げようとする。海斗はあまりの重さに地面に膝をつける。
やばい、斬られると心の中で呟いた瞬間空から何かが海斗の前に降ってきた。海斗と火垂はともに吹き飛ばされる。
「せっかくあとちょっとだったのに」
「いてえ〜、一体何が」
砂煙の中から見たことのある物体が現れた。
第二話
太陽の光に照らされ紅く光る鳥が大きく翼を広げる。
鳥は海斗を守るように火垂の前に立ちふさがる。
「貴様、何者だ!」すでに火垂の言葉遣いは男勝りになっていた。
「祖先神の俺にそんな言葉使いしたやつは初めてだ」
「祖先神・・・・」火垂は少し動揺した様子だった。
鳥はしゃべりだし、さらに大きく翼を広げる。神社の木々が熱風で燃えはじめ、空気中の水分が無くなっていく感じがした。翼はさらに広がりブロック塀に触れる。ブロック塀は溶岩のように溶け始める。
「この力、本当に・・・・」火垂の中で疑惑が確信に変わっていく。
ここは地下の教室。
海斗たちが帰った後、菫は制服から巫女装束に着替え神棚に祈りを続けていた。その近くには聖徳と蘇我がキーボードを打っていて教室にはキーボードを打つ音だけが響いていた。
そこにいつもは二人でいる伊達が一人で入ってくる。
「菫先輩、今日も精が出ますね」
「「今、先輩はお祈り中です。お静かに」」聖徳と蘇我が伊達のことをじっと見つめる。
「いや、お前らのキーボード打ちもうるさいけどね」
ガーンと二人は肩を落とす。
菫は祈りを終え伊達に話しかける。
「あれ今日は一人なの?」
「あっ、はい。真田は千夏と窓の場所を争っていますよ」
「争っている?」
「あんまり気にしないでください、あいつらバカなんで。でもよかったんですか?あいつら一緒に帰らせて」
「これからのためにみんなが仲良くなきゃね!」
「海斗はどっちかというとフレンドリーな方なんでいいですけど、火垂さんは菫先輩以外とは口きかないからな」
「きっと大丈夫よ。私もかいくんに会って自分を変えられた。火垂ちゃんも変われるはず、きっとね」
「そんなもんですかね」
「かいくんは、人をつなぎ合わせる力を持っているかもしれない、現に私たちもかいくんがいなかったら赤の他人だったかもしれないしね」菫は肩を落としている二人の肩に腕をのっけて笑顔で彼女たちの顔を覗き込む。彼女たちも菫に笑顔を返した。
その時神棚に置いてある鏡にひびが入る。
菫は鏡が割れているのを見ると、突然彼らに指示を出す。
「伊達君は出来るだけ人数を集めてください!」
「了解です!」伊達は驚いた様子で急いで教室を出た。
「聖徳ちゃんと蘇我ちゃんは地域住民に避難要請を!私は先に鬼道術で現場に向かいます」
「「菫先輩大丈夫ですか?」」彼女たちは心配そうに尋ねる。
「私は大丈夫。私、もう迷わないから!」そういうと菫の姿が消えた。
鳥は大きく翼を広げ、目の前の火垂を吹き飛ばす。
火垂は大きく吹き飛ばされ壊れかけの神社にぶつかる。神社は大きな音ともに崩れ始め、熱風により燃えはじめる。
火垂は瓦礫の下敷きになる。
「そこまでやんなくても・・・・」海斗は鳥に話しかける。
「誰もお前の助けるなんて言ってねーぞ。俺もお前のことを殺しに来たんだからな」
「えっ?」
燃える神社が崩れ始める。その中から制服が所々焦げた火垂が現れる。
「そんな・・・、私の祖先は封印されたはずじゃ」
「お前、俺の子孫だけあるな。確かに俺は後ろの男の祖先に封印された。だが最近封印が解かれた、だから俺が後ろの奴に復讐する」
鳥は鳥の姿から人の姿に変化する。その姿は男を模り炎で編んだ浴衣を身にまとい長い赤髪をしていた。その姿は火垂と同じ姿だった。
男は海斗の方を振り向き海斗の胸倉を掴み持ち上げる。
男の体からは熱線が出ていて、これ以上体に付けられたら体が蒸発しそうな勢いだった。
「私のことを無視するな!」火垂は男に一直線に突進する。
男の身長は2メートル近くあり、火垂とは50センチ近く違っていた。
火垂は男の前で跳躍すると、後ろから男の頭を刎ねる。頭は地面を転がる。
「祖先神やった!私が祖先神を・・・・」
しかし、地面に転がった顔がしゃべりだす。
「頭を落としただけで俺の子孫は勝ち誇っているのか。お気楽なやつだ」
頭は消えてなくなり残った体から頭が生える。男は海斗のことを放す。
「ゴホッ、ゴホッ、ゴホッ」海斗は咳き込む。
男は火垂の方を振り向くと彼女の顔を掴む。
「あとな、女。その刀は俺のだ」男は火垂から刀を取り上げると、顔を思い切り掴む。
火垂は痛さのあまり暴れだす。
「おい、やめろよ!彼女、痛がってるじゃねーか!」海斗は男に言うがやめようとせず海斗の方を振り向く。
「じゃあ、お前が先に死ね」男は火垂から取り上げた刀を振り上げる。
その瞬間、暑かったはずの空気が急に冷たくなる。
「刀を御収めください。スサノオノミコトよ」
「あん?誰だ」
燃えていた神社が凍り始める。
「私は卑弥瑠魏 菫、神の導き手で御座います」
凍った神社から菫先輩が現れる。いつもの姿と何処か違っていた。
顔を見るといつもかけているメガネがなく、何処か冷たい雰囲気を醸し出していた。
「その神の導き手が俺に何の用だ?」
「今の伊邪那岐に復讐してあなたは満足ですか?それであなたの四千万年間の恨みがなくなるのですか?」
「それで俺に如何しろと?」
「ここは退いてはもらえないでしょうか?」菫先輩は男を睨み付ける。
「はあ、お前の顔に免じて退いてやろう。しかしタダで退くわけにはいかねーな、そうだなお前を人質として預からせてもらおうか」男はため息をつく。
「私如きで退いてもらえるなら行きましょう」
男は頷くと火垂を放り投げる。刀は上にあげると鞘が飛んでいき自動的に収まる。
「おい、伊邪那岐!四日やる、四日後の正午延徳寺にこい。俺は、気が短い。だから時間通り来なければこいつを殺し、お前も殺す」そういうと男は大きく跳躍し、空へと飛んでいく。
「菫先輩!」海斗は菫に近づく。
「かいくん、私待っているから。かいくんが助けに来てくれることを」それだけを海斗に伝えると菫は男の後をついていく。
「菫先輩ーーー!」海斗の声は空高く響き渡った。
「海斗悪かったな、間に合わなくて」伊達が海斗に謝る。
「それよりも火垂さんのこと頼む。俺は、今すぐやらなくちゃいけないことができた」
海斗は伊達に背を向け走り出そうとする。
「ちょっと待てよ!お前、火垂さんがお前を襲った理由知りたくないか?」
「なんだよ!そんな大事なこと早く聞かせろよ!」海斗は伊達の肩を強く掴む。
「火垂さんが今気絶しているから言えることなんだが、菫先輩のことお姉ちゃんとか言ってなかったか?」
「ああ、確か言ってたな」
「火垂さんは菫先輩を本当のお姉ちゃんのように慕っているんだ」
「朝、紹介してもらったとき幼馴染とか言ってたっけ」
「それは嘘なんだ。彼女が菫先輩と初めて会ったのは小6。その時彼女は家族や身内の人たちから酷い仕打ちを受けていたらしい」
「何でそんなことに?」
「代々、素戔嗚家は跡取りが男性って決まっていて次の跡取りのために火垂さんの母親が出産したのが女である火垂さんだったんだ」
「何で男性決まっているんだよ?別に女だって」
「海斗、さっきお前は会っているだろ。男の人に」
「あー、会ったな。急に殺されかけた」
「あれが初代祖先神スサノオノミコト」
「えーー!あれが、火垂さんのおーーーーーーーーーーじいちゃん?」
「うん、多分だけど初代が男ってだけで跡取りは男じゃないといけないって決まったのかもな」
「そんなむちゃくちゃな」
「でも現にそうなっているんだからしょうがない。それで火垂さんは大きくなるにつれて家族で孤立するようなり、学校では一回も笑顔を見せず友達をできなかったんだ。でも菫先輩との出会いが彼女を変えてくれたらしい」
「それが何で俺が殺されるんだよ」
「お前、鈍感だな。嫉妬だよ、嫉妬」
「はぁ、嫉妬!」海斗はしょうもない理由に驚きを隠せなかった。
「多分、火垂さんは海斗に菫先輩を取られると思ったんだろ。火垂さん、菫先輩しか友達いないからな」
「俺、嫉妬で殺されたら命いくつあっても足りねーよ」
「モテるやつは身を滅ぼすみたいな〜」
「まぁ、いいや。ありがとうな教えてくれて。これでまた戦う理由が増えたわ」
「何か頼りたいことが言えよ」
「バ〜カ、お前に頼むことなんもね〜よ。」
海斗は小さく笑い背を向け走り出した。
海斗は自分の家にたどり着くとリビングに駆け込む。リビングには親父一人が新聞を読んでいた。海斗は親父の前に行き土下座で頼み込む。
「親父!俺に稽古をつけてくれ」
「お前なんだよ、急に。もう三時すぎじゃないか、やるなら明日からだ」
「それじゃ時間がないんだ!今日から、いや今から頼む」
「一昨日は急に変なこと言うし、昨日は帰ってきた早々自分の部屋に入って出てこないし今日は稽古をつけてくれとか、最近のお前変だぞ」
「今までことは後で話す!でも・・・・・俺には時間がないんだ。頼む」海斗は床におでこをつけて土下座をする。
「おい、海斗!顔をあげて、目を見せろ」海斗は顔を上げ、親父の顔を一直線に見る。
海斗の目には一切の迷いはなかった。
「フン、一切の迷いはないと見た。すぐに着替えて、道場に来い!」親父は立ち上がり道場に向かう。
「おう、わかった!」海斗は自分の部屋に向かい、道場着に着替えに行く。
海斗は道場着に着替え家の隣にある道場に向かう。
そこでは道場着に着替えた親父が先に待っていた。
「遅いぞ、海斗!」親父の意外な気合の入り様に少し驚く。
「さぁ、何から始める。筋トレかそれとも道場の掃除何でもやるぞ」
「いや、筋トレも掃除いらない。まずは自分を知れ」
「そんなのはどうでもいいんだ。俺は今すぐ強くなりたいんだ」
「じゃあ、聞くが私たちの先祖神は何の神か知っているか?」
「そう聞かれれば解んないな」
「全部だよ、全部」
「全部?」
「火も水も風も雷も時間も次元さでさえも」
「それを知ることが何で強くなることにつながるんだ」
「私が何で最初にお前に柔道を教えたかわかるか?」
「それはいつかかのためにじゃなかったっけ?」
「別に何だってよかったんだ。剣道でも合気道でも空手何でもな、今のお前だったら基礎ぐらいだったらできるだろう。だが一番お前に向いてそうだったのが柔道だっただけだ」
「そうだったのか」親父の意外な真実に驚く。
「だから今は自分のことを知れ。それが、お前が強くなるための一番の近道だ」
海斗は親父の言葉を信じ、特訓に励むのであった。
その夜、菫は昼の男と一緒にいた。菫はいつものようにメガネをかけていた。
「悪かったな、俺たちのことに巻き込んでしまって」
「いえ、私がここにいるのは私の本意ですから」
「固い奴だな、お前は」
「スサノオノミコト、あなたの本意は何なんですか?」
「俺の本意か?やはり神の導き手はお見通しか。ここではなんだから、町で何か飲みながら話さないか?」
「私はいいですが、スサノオノミコトあなたはどうするのですか?」
「俺は普通の人間には見えないんだ。幽霊と一緒だよ、幽霊と」
「そうなんですか。じゃあ、私が町まで案内しましょう」菫は鬼道術を使い町はずれの場所に転移する。
「スサノオノミコト、どちらに行きますか?少しなら案内できますが・・・」
「いや、俺の知り合いがやっている場所があるんだ。そこへ行こう」スサノオは菫を連れ町はずれの奥深くに入っていく。
そこには一店舗だけポツンとたち薄暗く明かりがついていた。スサノオが横開きのドアを開けると厨房に一人だけいた。菫も入るとそこからはいい香りがした。
「いらっしゃいませ!あ・・・・」顔を見るとどこにでもいるやさしいそうなおじいさんだった。
「おう、ひさしぶりだな。オヤジ!」
「これはスサノオ様。会うのは何年ぶりですかね」おじいさんはスサノオの姿を見ると感激した様子だった。
「三千万年ぶりじゃないか?封印されたのがそのぐらいだからな」
「もうそんな時間が経ったのですか。早いものですね、時間っていうものは。其方の方?」
「私は卑弥瑠魏 菫と申します」
「お前、もしかして卑弥呼様の子孫ですか?」
「はい、私の祖先を知っているのですか?」
「ワシは元々土地神だったんじゃ。土地神たちでは卑弥呼様は有名でしたから」おじいさんは菫先輩のことがわかるとお礼を言い始める。
「それよりもオヤジ、何か飯あるか?」
「ありますよ!それはもう沢山っていうほど!ひさしぶりのお客様がスサノオ様と卑弥呼様の子孫さんなんて感激だ!ちょっと待ってもらえますか」おじいさんはそう言うと急いで食事の支度を始める。
スサノオと菫は厨房の前のカウンター席に座る。
「スサノオ様は飲み物何に致しましょう」
「俺は店の最高の油をくれ」
「お嬢さんは何に致しましょう」
「私は・・・・じゃあオレンジジュースで」
「わかりました。それでは少々お待ちください」
「それで、あなたの本意は何なんですか?」
「とりあえず、乾杯しおうや!」
おじいさんは二人に飲み物を出す。
「スサノオノミコト、これは何の乾杯なんですか?」
「俺の復活した乾杯だ。それと俺のことはスサノオでいいぞ」
おじいさんとスサノオは乾杯するために盃を持っていたが、菫は少し遠慮気味だった。スサノオはそんな菫に無理矢理コップを渡す。
「ゴホン、それじゃあ俺の復活を祝って・・・・」
「「「乾杯!!!」」」二人の男たちは大きな声で叫び盃に入った飲み物を一気に飲み干す。
菫は控えめに言うと、コップの飲み物を少しずつ飲む。
スサノオは菫のコップを口に押し込む。菫は息することができず、口の中のものを吐き出してしまい、吐き出したオレンジジュースが着ていた巫女装束に降り注ぐ。
巫女装束がオレンジ色に変色する。
スサノオはそんな姿を見て馬鹿笑いするとおじいさんもそれにつられて厨房の隅っこで笑い出す。
「スサノオ様、これはどういうことですか?」菫はカンカンになって怒り出す。
「あっはははは。余興だよ、よ・き・ょ・う。俺は固い奴が嫌いなんだ」逆にスサノオが菫に怒り出す。
「いえ、神前なので」
「俺にそんなことする必要はない。楽にしろ、楽に」
「努力してみます」菫は静かに項垂れる。
菫は海斗や友達の前では自分らしさを出せるのだが、神前の前だと家で教わった固い礼儀作法がそのまま出てしまうのである。
「それでなんですが、スサノオ様の本意って一体?」
「お前にだけは話しておくが、三千万年の恨みなどありはしない。俺が本気で戦っても伊邪那岐には勝てないだろう。しかし、それはあくまであの坊主が伊邪那岐の力を完全に覚醒したらの話だ」
「でもかいくんは力を覚醒したはずじゃ・・・」
「いや、覚醒したのはあくまで一部に過ぎない。まぁ、俺は復活しているがな」
「かいくんの覚醒=スサノオの復活ってことですか?」
「いや、違う。正確言うと力の覚醒=復活=化け物の復活だ」
「化け物って一体?」
「神の導き手なら聞いたことないか?八岐大蛇の伝説を」
「ええ、多少は。スサノオノミコトが八岐大蛇に酒を飲ませ、今持っている十握の剣で八つの頭を切り落としたっていう伝説ですよね」
「正確には倒せなかったんだ、奴のことを」
「これって伝説上の話じゃ・・・・」
「少し昔話をしよう。およそ二十六億年前、伊邪那岐と伊邪那美は倭国を創造し次に万物の源となる五行を司る神々を創造し万物を創造した。その時に八岐大蛇も生まれた。最初は小さな蛇で環境にも害を及ぼさない生物だった。しかし、急速な成長と生物の死霊を取り込むことで巨大な力を得た。そして俺たち五行の神々が討伐に向かったときには倭国の生物が半分以上八岐大蛇に食べ尽くされていた。五行の神々が戦ったが倒すことができず、戦いは長引いた。だが伊邪那岐の介入により奴を封印することができた」
スサノオは盃に入った油を飲み干す。
「それで八岐大蛇は封印されたのですか?」
「いや、出来なかった。できない理由があった」
「もしかして・・・・・・」
「そう、八岐大蛇と伊邪那岐は共鳴していた。伊邪那岐を封印しない限り八岐大蛇は封印できない。だから伊邪那岐は自らの力を封印し、それと同時に俺と八岐大蛇を封印した」
「伊邪那岐の力を封印するだけなら、何故スサノオ様は八岐大蛇と一緒に封印されちゃったんですか?」
「五行の誰かを錠にすることによって永遠に封印しようとした。つまりは俺が錠で伊邪那岐が鍵ってことだ」
「じゃあ、かいくんが力を覚醒させてしまいスサノオ様の封印が解かれてしまった。それで今、八岐大蛇は?」
「奴は富士の山とかいう山の中心で寝ている。しかし、山の噴火は奴の復活を意味する」
「でも・・・・かいくんの力をまた封印すればいい話じゃないですか?」
「奴は現代まで何も食べていない。だから、本体である伊邪那岐を食べない限り封印は出来ないし、進化もしているだろう」
「進化?」
「奴は百年に一回脱皮をし、脱皮するたびに頭を一つ増やしていく。おい、オヤジ!今年は何年だ」
「今年は2013年ですが」
スサノオの隣で菫が頭の計算をしだす。
「一、十、百、千・・・・・・・無量大数!」菫はその数に驚く。
「今の奴を倒せる見込みも封印できる見込みをない。あるとすれば伊邪那岐の完全なる覚醒」
「それじゃあ、八岐大蛇の力も増幅されちゃうんじゃ・・・・」
「完全に覚醒することにより五行の神々と一つになることができ、覚醒時の力の五倍の力が出せる」
「でも、今のかいくんじゃあ完全に覚醒させるのは無理では?」
「だから、俺が四日後に決闘を申し込んだんだ。だから、お前もそのかいくんって奴が危なくなっても手を出すなよ」スサノオは菫を指さし忠告する。
「わかりました。でも本当に危なくなったときは助けますよ、かいくんのことを」
「フン、勝手にしろ。まぁ、今日は宴会だ。楽しめ」おじいさんは厨房からたくさんのご馳走を持ってくる。出てきた料理は今までに嗅いだことない美味しそうな匂いだった。
彼らの宴会は夜遅くまで続いた。
第三話
決闘が申し込まれてついに四日目の朝がやってきた。
海斗の姿は何処か変わっていた。体の形状は三日前と変わっていなかったが、海斗の心は変わっていた。
朝早く静かに家を出ようとする。しかし、玄関には親父が立っていた。
「朝早くどこ行くんだ?」
両親にばれずに行こうと思っていたので言い訳を考えてなかった。少し考えていると親父の方から切り出す。
「まぁ、お前がどこに行こうがお前の勝手か・・・。お前がこの三日間やってきたことはきっと役に立つはずだ。さぁ、行ってこい!」親父は海斗の肩を強く叩く。
そんな親父を見ていると俺の行く場所がわかっている様な雰囲気だった。
「おう、行ってくる」海斗は自分の拳を親父の前に出す。
「何だ、これは?」親父は首を傾げる。
「親父の拳を俺の拳にぶつければいいんだよ。本気でやるなよ、親父が本気でやると俺死んじまうから」海斗は親父に冗談気に言った。
親父は俺の拳に優しく拳をぶつけた。
「行ってきます」海斗はそういって家を後にした。
海斗が行くことを確認するとひっそりと母さんが現れた。
「いいんですか?見に行かなくて」
「スサノオなら海斗の力の覚醒は間違いないだろう」
「あの特訓何か意味有ったのですか?」
「あれに意味なんかない。所詮海斗は人間だ、四日間特訓しただけでは勝てるおろか触れることさえできないだろう」
「じゃあ何で特訓なんか・・・」
「海斗の熱意負けただけだよ」
「それで八岐大蛇はどうするのですか?なんだったら私も手を貸しますよ」
「お前はもう“神”をやめた身だろ。私も手を出すつもりはない」
「そうですか・・・・、私もひさしぶり戦おうと思ったのに」
「お前が出て行ったら八岐大蛇おろか地球まで滅ぼしかねない。それにオリンポスの神々にも生きていることがばれるぞ」
「あらあら私ひどい言われようだわ。でもそうね、私もう“神”をやめたんだったわ」
「若い力に任せようじゃないか。老いた私たちの出る幕じゃない」親父は優しく母さんの肩を抱いた。
海斗は約束場所の延徳寺に向かっていた。海斗の家から延徳寺までは走って三十分ぐらいだが山道が多いため倍の時間がかかってしまう。
海斗は学校の前を通っていくと、そこでは伊達がサングラスをかけ外車によりかかっていた。
「遅いぞ、海斗」
「お前何やってるの?そんなダサい服とサングラスかけちゃって」
「ダサい服とか言うな。まぁ、いいや乗れよ」
「お前その外車どうしたんだよ」
「えっ、俺のだけど。新車だぜ」
「お前こんなのいつ買ったんだよ。これ007モデルの外車じゃねーか」
「外車はもういいだろ。早く乗れよ、時間厳守なんだろ」
海斗は伊達に無理矢理すすめられ助手席に乗り込む。
「よっしゃ!かっとばすぜ」伊達は車のギアを最大にし、アクセルを思いっきり踏み込む。
「おい、伊達!安全運転で頼むぞ!」海斗は上の手すりを掴みながら叫ぶ。
「じゃあ、安全運転で飛ばすぜ!」伊達は基本速度50キロの場所を100キロで運転する。
「海斗、ちょっといいか?」
「何だよ、お前は運転に集中してろよ」
「火垂さんが家から消えたらしい。さっき真田から連絡があった、多分お前たちのところに行くはずだ」
「そうか・・・・」
「多分火垂さんのことだから菫先輩を助けた後にお前を殺すだろう」
「大丈夫。俺が菫先輩のことも火垂さんのことも受け止める」
「海斗お前言うようになった。じゃあ、二人のこと頼んだぞ」
伊達は延徳寺の入り口の前に車を止めると、海斗にエールを送る。
「海斗がんばれよ!あ、そうだ!」伊達は急いで車のトランクを開けると木刀を取り出す。
「手ぶらじゃ心細いだろ。これ持っていけ!」伊達は海斗に向かって木刀を放り投げる。
「いらねーよ、相手真剣だし」
「友達の貰い物は素直にもらっておけよ。何か役に立つかもしれないだろ」
「わかったよ、ありがとよ」海斗は伊達に背中を向け、手を振った。
そして海斗はスサノオが待つ本堂に向かった。
土曜日の正午前だというのに観光客おろか住職の姿さえなかった。何の音もせず聞こえてくるのは風が木を揺らす音しかしなかった。
本堂の前に着くとそこではスサノオ一人が目を瞑り仁王立ちして待っていた。
「逃げずに来たようだな。この四日間待ちかねたぞ」
「悪かったな。俺のために四日間も待たせちまって」
「ほう、口だけは一人前だな。ほら早く始めようぜ」
「それより菫先輩はどこだ?」
「女には手を出していない。ほら、あそこにいるぞ」スサノオはこの場所から少し離れた場所を指さす。そこには巫女装束を着てメガネをかけた菫先輩が立っていた。
「安心した。ふぅー、よし行くぞ!」海斗は深く深呼吸をすると、スサノオに突進する。
海斗は伊達から借りた木刀を両手に持ち、前のめりになりながら突進する。
スサノオは右手で刀を抜き、刀を振りかざす。
海斗はスサノオの目の前まで近づくと、下から上へ木刀を振り投げる。
咄嗟のことにスサノオは木刀を見上げる。上を見上げた瞬間海斗はスサノオの顔に右ストレートをくらわすと、左手で空中に浮いた木刀を取ると喉を思い切り突く。
スサノオは一歩下がると刀を持ち、替え剣先を下に振り下ろす。海斗は木刀で薙ぎ払うと腹に前蹴りをくらわす。海斗はその後もスサノオを圧倒する。
「かいくんがスサノオ様を圧倒している。でも・・・・」菫は海斗の成長ぶりに感激していたがそれ以前にスサノオが一割も本気を出していないことを菫は一瞬で分かった。
所詮特訓したって人間は人間なのだ。神と相対することが同じ神か異能の力を持つものしか相対は出来ない。
「あー、全然だめだ!」スサノオの目が変わる、目が変わった瞬間海斗は一瞬たじろぐ。
そしてスサノオは体と刀に炎を纏う。海斗も途中から気づいていた。前会ったときの空気を震わすほど存在感と体の水分を無くすほど炎が感じられなかった。さらにこの体たらくさ薄々気づいていた。
海斗が木刀を構えた瞬間、スサノオの手が顔の目の前にあった。その瞬間、衝撃波が顔を襲う。空中に浮いていると思ったら地面に寝ていた。そしてその後に襲ってきたのは顔の激痛である。おでこと鼻からは血が流れ、頬はやけどをした様に熱く痛かった。
海斗は木刀を支えに立つと、もう一度木刀を構えスサノオに突進する。しかし、体に炎を体に纏ったスサノオに触るどころか近づくことさえできなかった。
スサノオは刀を振り下ろす。
海斗は両手で木刀を持つと刀を受け止めようとするが一瞬で真っ二つされ、スサノオの刀が地面を叩き割った瞬間その衝撃波で海斗はまた吹き飛ばされ背中が地面に叩きつけられる。
「やはり、四日与えたが人間は人間か。しょうがない、あの女を殺すか」
「おい、まだおわってねー。まだ、俺はやれる」海斗はヨレヨレになりながらも立ち上がる。
「終わりだよ、終わり」スサノオはあきらめると菫を連れてくる。
スサノオは菫先輩の両手を片手で持ち上げる。菫は何かを覚悟したように目をつむる。
「やめろ、俺はまだやれる。だから、菫先輩を殺すのだけはやめてくれ」
「終わりだ」スサノオは菫の首に刀をつける。
その時、山から誰かが降りてくる。それは火垂の姿だった。
火垂は木々を抜けるとスサノオに突進し菫の手を掴んでいる手を斬り落とす。
「菫お姉ちゃん逃げて、私が時間を稼ぐから」火垂はスサノオの手を斬り落とすと菫先輩向かって叫ぶ。
火垂は刀を構える。スサノオはすぐに手を再生させる。
「お前はそんなに死にたいのか」
「私は菫お姉ちゃんのためにここに来たんです。死ぬことなんて怖くない」
「じゃあ、望み通り死ね」スサノオは火垂に刀を振りかざす。
「でもタダじゃ死にません。私の全てをかけてあなたという存在を消します」
スサノオと火垂との剣戟が始まる。二人の刀からは火花が飛び散る。二人の剣戟はビデオを高速再生しているかのようだった。
しかし、その戦いはすぐに決着がつく。火垂の刀が刃こぼれし始める。
それも仕方がないことである。かたや名刀と普通の刀である、耐久性も美しさも名刀が勝る。
ついに火垂が持つ刀が折れるとともに胸倉を掴まれ頭に頭突きされ、そのまま地面に叩きつけられ火垂は痛さのあまり地面にうずくまる。
「おい、スサノオ!狙いは俺だろ、いたぶるなら俺をやれ」海斗は叫ぶがスサノオはチラッと見るだけ手を止めようとはなかった。
スサノオは火垂を何度も踏みつける。火垂は小さい声で呻き声を上げる。
菫は我慢できずに火垂を助けようするが、スサノオに睨み付けられ体が動かなかった。
「お願いだ、やめてくれ。お願いだ・・・・」海斗は地面に手を付け、頭を下げる。
「かいくん・・・・・・」
「はぁ、落ちたな。伊邪那岐がここまで落ちていたとはな。なら仕方がない」
スサノオは火垂の髪の毛を掴み上げる。火垂の顔は痛さでひきつる。
「やはり四日前のお前も四日後のお前も結局は何も変われなかったってことだ」
スサノオは菫にした様に火垂の首に刀をつける。
「早く殺してよ、私はあなたのせいで一回も生きた心地がしなかった。あなたが男ってだけで・・・・だから早く殺してよ。こんな弱いところ見せたら菫お姉ちゃんも私のことを嫌いになる。私はいつまでも一人ぼっち・・・・」
「そうか、それだったら望み通り・・・・死ね」
「ちょっと待てよ・・・・ちょっとまてよ!」海斗はヨレヨレの体で走り出す。
海斗の頭にはいつか夢で見たことがフラッシュバックされる。
死神が涙子の首を斬りつける夢を。
そんなこと絶対にさせない、絶対にさせない、絶対にさせない!
その瞬間心の中から誰かが語り掛けてきた。
「助けたいか・・・その者を助けたいか」それは初めて聞く声だった。
「あー、俺はあの人たちのことを助けたい、守りたい!」
「汝の願い、確かに受け取った」海斗の中の何か暴れだす。
菫の視界から海斗の姿が消え、スサノオに捕まっていた火垂の姿もなかった。
菫の隣に火垂のこと抱いた海斗が立っていた。
「この子を頼む」海斗は菫に火垂のことを任せ腰にさしてある刀を抜き取る。
菫が火垂の表情を見ると一時的に気絶していた。
そして海斗の姿が消えた。
海斗はスサノオの少し離れた場所に立つ。スサノオも海斗の姿の違いに気が付く。
「やっと、入ったか」スサノオは小さい声で呟く。
海斗の髪は地面に着くぐらいまで伸びエメラルドグリーンに輝いていた。
海斗は菫から借りた刀を抜く。
「名刀 凍瀧霰か。私が創った名刀の一つじゃないか。スサノオ、三千万年ぶりにお前の遊びに付き合ってやる」海斗は刀でスサノオのことを指さす。
「いや、俺はお前のことなんか知らないぞ」スサノオは顔を横に振る。
「そうか、ここまでやって知らないフリか。お前も偉くなったな、スサノオ・・・」
海斗はスサノオのことを横目で睨み付け、地面を思い切り蹴り突進する。
蹴った瞬間に地面が割れ、小さな地震が起こった。海斗はスサノオの腹部を拳で殴る。
スサノオは炎に戻り周りに飛び散り一回は地面に落ちたが、炎は飛び海斗を襲う。
海斗は襲ってくる炎を次々と真っ二つにしていくが、炎は小さくなっても襲ってくる。
そして炎は小さくなり海斗の周りを囲み、一斉に襲い爆発する。
「かいくんーーーー」
スサノオは炎を一つに集め人の形に戻る。
「やはり、この程度か」スサノオはため息交じりに言う。
すると、爆発の中から厚い氷の壁に囲まれた海斗が現れた。氷は海斗を守ると崩れて消えた。
「お前こそその程度か」海斗はスサノオに笑いかける。
「「フン」」海斗とスサノオはともに笑う。
「伊邪那岐、ここから第二ラウンドだな」
「あぁ、行くぞ!」
海斗とスサノオはともに突進する。二人は同時に刀を振り構える。
そして刀が交わるとともに火花が飛び散る。二度三度と刀が交わる。
二人は一回距離を取るともう一度刀を交える。海斗は刀を下から上へと上げ、スサノオは上から下へと斬り下げる。周りに爆風が吹き荒れる。
スサノオは距離を取り刀から炎を打ち出す。海斗もすぐに反応し氷柱を打ち出す。
二つがぶつかる瞬間所々で爆発が起きる。
爆発が起きた瞬間気絶していた火垂が目を覚ます。
「菫お姉ちゃん?」
「火垂ちゃん、大丈夫?」
「私、お姉ちゃんのこと助けられませんでした。もう私要らない子ですよね」
「そんなことないよ。火垂ちゃんはここまで助けに来てくれただけで充分だよ。それに要らない子なんて言わないで。私たち友達、いや家族のようなものでしょう」
「私たち?」
「うん、私も聖徳ちゃんも蘇我ちゃんもルイスちゃんも天照ちゃんも真田君も伊達君、今戦っているかいくんだってみんな家族でしょ」菫は火垂に微笑みかけた。
火垂の目からは涙が溢れ、そして目から涙がこぼれる。
「菫お姉ちゃん、菫おねえちゃーーん」火垂は菫の胸の中で泣きじゃくった。
菫は優しく火垂の背中を擦る。
「火垂ちゃん、あれを見てなさい。あれが神同士の戦い、人間には手を出せない領域」
菫先輩は海斗たちの戦いを指さした。
二人の戦いは地形を歪める。周りの木々は倒れ地面は剥がれる。
「伊邪那岐、やはりお前は面白い」
「お前はそれを誰に言っているんだ。私はお前の生みの親だぞ」
「あぁ、そうだったな!」
彼らの戦いはかれこれ十五分以上続いていた。
「伊邪那岐いや親父、次の一手最後にしようぜ」
「いいぞ。まぁ、お前が私に勝てるとは思わんが」二人の顔からは笑みがこぼれていた。
スサノオは持っていた刀を鞘に納めると体全体から炎を巻き上げる。それは人の形態からの更なる形態の変化だった。
体は大きくなり、顔や体には炎の鱗が生えだす。最終的には体は龍の形を模り山のように聳え立つ。
「火の龍」スサノオは海斗に向かって咆哮する。咆哮は爆音のように響き渡る。菫や火垂は耳を塞ぐが咆哮は風の様に入ってくる。
しかし、塞いでいなければ鼓膜が割れそうな勢いだった。
「お前どうするんだ、伊邪那岐。そのままでいいのか」
「お前に面白い余興見せてやろう」
海斗は上を見上げ、刀を空高く上げる。空高く刀を上げるとマジックの様に剣先から飲み込んでいく。
海斗は最後まで飲み込んでいく。その姿は菫たちからすれば目の覆いたくなる光景だった。
海斗の体は凍り始めと凍った場所からひびが入り崩れていく。崩れた海斗の体は身の回りのものを凍らせていく。それらを合成していきスサノオと同じく龍の形を形成していく。
そして出来たのがスサノオと同じ高さ、同じ形質の龍が出来上がった。
「氷の龍」
二つの龍がお互いに睨み合う。いつの間にか晴れていた空が黒い雲で覆われていた。
まさに最終戦争を漂わせる雰囲気だった。
二つの龍がぶつかる。ぶつかるとともに風が吹き荒れる。
炎の龍は氷の龍の首にかみつく。炎の勢いは増し氷が解け始め、水が滴り始める。
炎の龍は首をかみ砕こうと首を振り回す。氷の龍の頭が取れかかる。
しかし、その時白い火の玉の様なものが氷の龍の周りを飛びまわる。その火の玉は氷の龍に吸収される。火の玉は次々に現れ氷の龍の周りを飛び回る。
吸収されていくにつれて滴り垂れる水が氷柱のように凍り始めかみつく火の龍の頭を飲み込み始める。白い火の玉は氷の龍に翼を齎しその翼は炎の龍を包み込む。
1000℃を超える炎の龍の体は氷像の様に固まる。
固まる直前に炎の龍は一言呟いた。
「これが伊邪那岐の真の力、霊おろか神を束ねる力」その言葉とともに体は凍り付く。
氷像は時間が経つとバラバラに崩れ、元の人間の姿に戻る。
スサノオは倒れ、海斗はそれを見下ろしていた。
「俺の負けのようだな。だが負けたのにこんな気持ちになったのは何時以来か」
「ああ、私もだ。スサノオ、お前がこの場所を選んでいる時点で私を復活させようとしていたのは目に見えていたから」海斗は倒れているスサノオに手を差し伸べる。
「ここは最も霊が集まる霊山、伊邪那岐の根源となる聖なる力だからな」
スサノオは海斗の差し伸べた手に掴まり立ち上がる。
菫は火垂に肩を貸し、海斗たちに近づく。
「この姿で御無礼をお許しください」菫たちは海斗たちの前で膝をつく。
海斗は火垂の方を向く。
「君が、彼がどうしても守りたいって言っていた子か。スサノオ、お前に似やわず中々かわいい子じゃないか」火垂は顔を見上げ頬を赤くしながら海斗のことを見つめた。
「俺は子孫なんか創った覚えはないんだが、祖先神としてお前に言っておく。古い形に模られるな。お前が思ったことをするがいい。それすればいつか道は開けるだろ」
「お前は形に囚われるのが嫌いだったな。創造神として言うが自分のことを要らない子とか言うもんじゃない。君が生まれたことには何か意味があるはずだ。これからまだ先は長いんだ、自分を見つける旅にでも出るといい」
「お前にこれを返しておこう、もう俺には必要のないものだ。俺の相棒“十握剣”を」スサノオは跪く火垂に刀を託した。
「もう行くのか?スサノオ」
「ああ、俺のやることは全て終わった。あとはこれからの戦いに備えることだけだ」
そういうとスサノオは鳥の姿に戻り飛び立って行った。
「菫と言ったか、君は?」
「はい、卑弥瑠魏 菫と申します」
「今まで彼のことを影から守ってくれたこと感謝する」
「いえ、私なんかにはもったいない言葉です」
「いや、君には感謝している。君のおかげで彼も強くなること決めたらしいからな。そのおかげ私も目覚めることができた」
「え!かいくんが・・・・・」菫の頬がピンク色に染まる。
「そろそろ時間のようだ。君に借りた刀返しておこう。あと彼に伝えておいてくれ、自分の力を信じろとな」エメラルドグリーンの瞳と髪の毛は元の色へと戻っていく。
「また会おう、次の戦で」海斗は元の姿に戻り前に倒れる。
菫は倒れそうになる海斗を支え、顔を見ると目を瞑り寝息を立てていた。
「お休み、かいくん」
厚く覆われた雲から暖かな日差しが顔をだした。
エピローグ
ここはとある神社の境内である。
日も暮れ辺りは真っ暗な状態である。そこに鳥になったスサノオが下りつく。
スサノオは人の形になり周りを見渡す。
「あらあら、遅かったじゃない〜」木の陰から月の光に照らされ女の子が現れる。
「お前は甘すぎる。一緒に封印されて自分の心さえ忘れてしまったか」
「我ら兄弟が行っていれば、あの方はすぐに目覚められたはずだ」二人の男が神社の前に座っていた。
「文句を言うな。俺も自分を思い出したんだ、文句はねーだろ。それよりも月夜見は見つかったのか?」
「それが見つからないのよ。あの子恥ずかしがりやだから・・・」
「まぁ、いい。それよりも時間がない。各自よろしく頼む」スサノオが言うと四人は頷き東西南北に飛び散る。
ここは富士の山。
ここである災厄が起きようとしていた。
テレビはそれを連日放送していた。
「皆さん、おはようございます。今日一番のニュースをお伝えします。現場から伝えてもらいましょう、現場の桐山さん!」
「現場の桐山です。今、富士の山の前に来ています。いつもは登山者で賑やかなこの山も今は登山者おろか地域の住民さえいない状態です。先日発表された富士の山の一千万年ぶりの大噴火。地域の住民からは不安の声が広がっています」現場のリポーターは今の状況を詳細に知らせる。
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