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意味のあるもの・いらないもの


屋上で大の字で寝転ぶと、まぶしすぎて目が開けられないことに気づく

まだ春だというのに、日差しは容赦がないらしい

暖かいという表現では庇いきれないくらいの熱で、長袖からはみ出た肌がじりじりと痛む


「またこんなところにいるの?」


キミはよくもまあこんな辺鄙な場所にいる僕を見つけられるなといつもちょっと感心する

僕のいる場所は屋上の隅の隅で、物陰になっているところなのに


「ここが一番落ち着くの」


目を開けるとやっぱりまぶしくて変な顔になりそうだから、僕は腕で自分の目を覆い隠す

真っ暗な視界の中、隣でキミの声だけがするのは僕を不思議なくらいふわふわした気持ちにさせた


「お昼はもう食べたの?」


キミが僕からちょっと距離を置いて座った

でも、このくらいの距離がなんとも言えないくらいちょうどいい

もう一人、二人の間に入れるくらいのこの距離が

キミの息遣いは聞こえなくても、そばにいるんだと教えてくれる


「まだ」


「お昼終わっちゃうよ」


僕はちょっと頭を動かしてうなずいた


「そっか」


僕は昔からお昼ご飯を食べないことが多い

特に食べたいと思ったりしないから


みんな「ちゃんと食べなよ」って言うんだけど

誰もかれも心から心配して言ってるとかじゃなかった

自分よりもダメなところを、普通とはズレているところを見つけたことに喜んでる

そんな感じ


「アキは何が好きなの?」


「食べ物で?」


「うん」


そんなこと考えたことなかった

お腹がすいたら何かあるものを食べればいいって思ってたから


「特にないかも」


って僕が言ったら、キミの笑い声がした

じりじりの熱さを軽く包み込んでしまったシャボン玉みたいな声だと思った

腕を少し持ち上げて横目でキミを見たけど、ずっと腕の重さがかかってた視界はぼやっと白くかすんでて、キミがどんな顔をしているのか見えなかったのはちょっとだけもやもやした


「キミは何かあるの?」


「たくさんあるよ」


「例えば?」


「駅の近くでおばちゃんがやってる小さなお店のたいやきとか

走った後で飲む水とか

ここみたいな景色のいいところで食べる菓子パンとか

他にもたくさんあるかな」


ああそうか

キミにとってはこの世界のすべてに意味がなくて、そのすべてに意味があるのか

きっとキミの見ている世界は僕の物よりずっときれいなんだろう

僕はそんなことを言えるキミがとてもとても愛おしいと思った


大きく白い雲が強い日差しを遮ると、ちょうど僕らを中心にした影ができた

真っ暗な視界の中、体がひんやりとしてきたから腕を下ろしてゆっくりと目を開いた


そして、もう一度キミをみた


僕の視線に気づいたキミは

「雲が出てきちゃったね」といってちょっと身を乗り出す


そんなキミが太陽よりもまぶしく思えるほど、今度ははっきりとキミの顔を見ることができたよ

そして、キミのその笑顔に意味がなくなったとしても、僕の中ではずっと消えることがないことに気づいた

僕の中のキミに意味はいらないから


雲の切れ間から少しだけキミの見ている世界を見た気がした



僕の好きな食べ物は

キミが好きだと言ったものと

キミと一緒に食べたもの


そうしたらたぶん、軽く10個は超えるんじゃないかな



読んでくださってありがとうございました。

ようやく名前が決まりましたので、この場で報告いたします。

僕はアキでキミはハルです。


これからもよろしくお願いいたします。

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