キミのいる世界
学校があってもなくても
毎朝5時にアラームが鳴るようにしている
そんな習慣が僕にはある
そしてそこから浅い眠りにつくと
決まって同じ夢を見て、覚めないことを祈るんだ
「今日は何の夢を見たの?」
ってキミは僕に必ず聞くね
本当は事細かく、全部を話したいんだけど
いったん目が覚めてしまうとその夢すべてがおぼろげで
出会った人の顔すら出てこない
だから
「いつもと同じだった」
って言うしかないんだけど
「いい夢だったらいいね」
とキミは笑ってくれる
うん
毎日見たいと思えるほどそれは素敵な夢なんだよ
同じ風景をただずっと眺めているだけの夢なんだけど
そのすべてが幸せだって感じるんだ
言葉も顔も風景もぼんやりと湯気みたいに消えていくけど
このあるかもわからない心にさ
春が芽生えていくみたいな嬉しさが
ずっとずっと残って消えないんだよ
僕の前を歩いているキミの向こうに
まだ頼りない入道雲が見える
キミの柔らかそうな髪の茶色と
白いシャツがゆっくり大きく風に揺れる
明け方の夢を思い出せないのはきっと
今僕が見ている世界が夢よりももっと鮮やかだからなのかな
「ねえ見て」
キミは振り返って、少し間を置いて後ろを歩く僕を見て
そのさらに後ろ側を指差した
キミの指を辿ると
深く透明な青い空の中に
真ん丸な灰色の月が浮かんでた
それはまるで僕の夢のように
この世界の色に押されて霞んでいたけど
そうか
キミは見つけてくれたんだね
勇気を出してお礼を言おうと思ってキミを見たら
「今日は満月だね」
ってその月を見て楽しげに言うから
キミに伝える言葉はありがとうじゃないと思えてきて
出かかった言葉を仕舞い込んだ
でも、それでいいんだ
こうして毎朝キミと一緒に歩けるだけで今の僕は精一杯だから
読んでくださってありがとうございました。
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