B面 (没)
(没)です。たぶん消去してしまう内容なのです。
悩んだのですが結局上げることにしました。
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B面
今朝は、珍しいことに早く目が覚め、普段通りダラダラと仕度を整え終えた。ん~っと伸びをした後、家にいても仕方ないので、テストもあるし、学校で勉強しようと思ったのは、ほんの偶然で。
のんびりと雲でも眺めながら誰もいない歩道をチャリで颯爽と軽快に走っていると、今日の放課後に起こるイベントが気になりはじめた。なんて、本当は昨日の夜から緊張しているのだけど、あえて見栄を張る。特に意味などない。
今日の放課後、即ち、テスト終了後には同じクラスの友達とカラオケに行く。ここで注意してもらいたいことは、その友達が『男』であればなんの気兼ねもなくハッチャケるのだが、嬉しいことに今回一緒に行く人は俺の好きな人。しかもふたりきりで。
青春を謳歌していても、いなくても、一般男児であるならば年頃の女の子と戯れたいと思うのは至極当然な訳で、だけど、個人の差はあるだろうけど大なり小なり緊張するのもまた当然と言えるだろう。
俺は中学の頃、とある部門のコンクールに何度も出演していたので、ある程度は緊張に慣れたつもりだ。現に今、クラス委員長という微妙な大役を務めている。ま、人前でなにかをするぶんには心配ない。アドリブだってきかせられる。女子とだって普通に会話出来るさ。
だけどな、好きな女の子と話すのはどうもダメだ。幾度も同じ瞬間を過ごしてきた今でも動悸が鎮まらない。視線が交錯するだけで心臓が跳ね上がる。そんな現状。
校門まで残り弐百メートル弱。登校している生徒は少ない、よりか、むしろ零に等しい。学校へと続く坂道には俺以外、見当たらない。
それもそうか、今日ばかりは早く来すぎた。
よし、と一声合図とともに力一杯ペダルを踏み込む。ズシリと足に重みが伝わる。腰を浮かせて立ち漕ぎへと移行する。
駐輪場へ到着する頃には軽く息が弾むくらいになっていたが、運動音痴ではないのでさして問題ない。駆け足で下駄箱へ向かう。見上げると雀かな? 二羽の鳥が仲良さそうに、じゃれあうように羽ばたいていた。
自分の上靴を取り出す時、誰かの外靴が収められているのを発見する。っと、彼女のだ。俺は急いで廊下を歩いているだろう彼女を追い掛ける。と、すぐに見つける。
階段の踊り場にいる。
すると、好きな人にイタズラしたくなるという、男子小学生のような意地悪な心が芽生える。足音を殺してこっそりと近寄る。
一歩、また一歩とだんだん距離はせばまる。気付かれないことに対して少しだけ悲しい。だけど、彼女の驚いた顔を見るためだ。辛抱辛抱。
「楽しみしているのかな、私」
どきりとする。鼓動が速まる。息が出来ない。手に汗が滲む。彼女から目が離せない。
大丈夫、落ち着け俺。深呼吸深呼吸。
「なにを?」
俺は出来る限りいつも通りの声になるよう細心の注意を払うも、残念ながら震えている。セーフ。普通の範囲内のはずだ。
「カラオケに行くこと」
更に心の臓は早鐘を打ち始める。それはそれはそれは、俺と一緒に行くからと、自惚れても良いのかな?
「俺もだよ」
そうだ。俺も彼女とカラオケへ行くのが楽しみで仕方ない。
「ホント?」
パアッと明るい表情になる彼女。嬉しい。まるで俺が彼女を喜ばせているみたいで。
「本当にほ、ん、と。夜、眠りづらかったもん」
その通りだ。約束した日から継続的に現在進行形で緊張している。
「私も」
その言葉を聞いて躍りださなかった俺を褒めてほしい。
…………○
彼女とこうやって出逢ったのはほんの偶然に過ぎないのかとちょっと不思議に思った。
今日、朝早く目が覚めたのも。
今日、早めに学校に着いたのも。
今日、楽しいひと時を過ごしているのも。
今日、こうして彼女と一緒に会話している時間も。
今日、明日、そしてこれからの未来も。
それらをすべて偶然で片づけるのはもったいない気がした。
ふたりを結びつけたのは偶然ではなく。
運命だとか引力だとかそういう類いの力である。そんな気がする。
俺と彼女は出逢うべくして出逢ったのだと信じたい。なんて思ったんだ。
…………○




