2013/02/10 Sun
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哀人が保健室へ運ばれた頃、二組の教室ではお決まりである転校生への質問責めが開始されようとしていた。
哀人の事を心配したのは現情を把握出来ていなかった碧子以外、殆んど居なかった。慣れとは恐ろしいものである。
哀人の鼻血ぶーっは最早、クラスお決まりの出来事として捉えられているのである。哀れ哀人。
女子の団体さんが碧子の周りを陣取り、男衆は首を伸ばして遠くから眺めている。
「碧子さん……あっ碧子さんって呼んでもいいよね?」
もう既にそう呼んでいるではないか、と思ってはいけない。間違っても口にしてはいけない。絶対に。
碧子はクールに受け応えをする。
「ええ、どうぞ」
それからはわんやわんやと会話が弾み、男子達は耳に全神経を集中させている。
彰敏は肩肘を付きながら、これから面倒なことが起こるなと思った。
「碧子さんは何処に住んでいるの?」
女子の一人がそう問い、それみたことか! と彰敏は思った。飛火してくること間違いなしの質問。
碧子は一度彰敏へチラッと視線を送ったのだか、そのことに気付いた人は愛子以外誰もいなかった。
彰敏は祈る。どうかこの平凡な日常に波風立つようなことを言いませんように、と。碧子はニヤリと笑いこう言った。
「そーだね……彰敏の家に住んでいるよ」彰敏の祈りは届かなかった。
「「「………………」」」
嵐の前の静けさとは正にこのことだろうと彰敏は思った。男子からも女子からも問いただされる五秒前。
彰敏は窓の外を遠く見ながら諸手を挙げた。降参ですよと。
中学生という身分でありながら、同衾というちょっとアダルトな経験をしているのはどんな気分だろうか?
別に大したことではない。昔と変わらず彰敏は彰敏で碧子は碧子なのだ。いきなりポルノグラフィックな性活になるはずもない。
更に言えば、この作品には年齢制限は掛かっていない。この物語に登場する人物は、全員十八歳以上という縛りもない。
健全で健康で健闘し続ける中学生がドタバタするラブラブコメコメな物語は今始まる…………。
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一気に放出しました。
僕の中ではこれまでがプロローグです。
これからは毎日更新を目指します。
……上の文章を何回か目にした気がする。