2013/02/08 Fri
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ガラガラと扉を開けながら入ってきた少女に対して、三年二組の生徒達は眼を奪われる。特に男子達の視線には熱が篭っているように見える。
碧子は黒髪黒眼の長身……百七十はありそうだ。髪は腰の辺りまで伸ばしていて、彼女の動作につられて靡く様は実に艶やかだ。
眼は切れ長で、少し細いようだ。口元に浮かぶ薄い笑みがこちらを見透かしているかのような錯覚を与える。
整っている顔立ちは利発そうな印象を抱かせている。街中で見かければ十人中八人は振り返りそうな程の美貌の持ち主だ。
制服は前の中学校のものを着ている。地味ーな感じの制服だが、碧子が着用すると、有名デザイナーが作ったような風に感じさせられる。
碧子は黒板にチョークが走らせるとカッカッと音が奏でられた。書き終えてから、くるっとターンをする。
フワリと舞うスカートに男子の視線は釘付け。
「阿僧祇女子中学校から転校してきました朱崎 碧子です。どうぞよろしくお願いします」
凛っとした声は二組の教室を突き抜けた。多くの男子生徒は紅潮している。同性の女子達でさえ頬を朱く染めている人もいる。
逆上せたかのように顔を真赤に染めた男子生徒が一人……徒花 哀人、因みに彼も亦 超人であるのだけれど。
「…………ブッ!」
勢いよく鼻血を噴き出した。そして、ゴンッと音を立てて、机に突っ伏した。
「徒花氏? ……徒花氏っ! 大変だ、鼻血を出しながら痙攣しているぅ!!」
「某の生涯に……一片の悔い、な、しぃ」
「徒花氏ーー!!!! 誰か、誰か!! 血が……血が止まらないんだっ。誰かぁ、誰かあぁぁあああぁーー!!!!」
哀人はとても鼻血とは思えない程の血を垂れ流し続けている。顔は鼻血だらけである(笑
必死な様相なのは化野 愛彦ただ一人。クラスのみんなは亦かよ……と思っている。
それ(鼻血ぶーっ)を見ながら彰敏は思った。だって碧子だよ? そんなになるのか、と。
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