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2013/02/06 Wed

…………*


GW(ゴールデンウイーク)と雖も縣 彰敏には心身ともに休まる安息日とはならなかった。


彰敏の家にやって来た少女、朱崎 碧子の所為である。碧子は彰敏のことを(しもべ)かなにかのように扱う。


彰敏は幼稚園の頃もそのように碧子側に居たので、特に不快感も抱かず、はいはいと二つ返事で付き従う。


ただ、彰敏には彼女……哀島 愛子……が出来ているので昔のような関係には戻れない。碧子はその事にまだ気付いていない。



彰敏は肩肘をつきながら、ボンヤリとGWのことを思い出していた。場所は教室、彰敏の在席している三年二組である。


短過ぎる連休が終わり、生徒達はダルそうに登校していた。


何処から情報を拾うのか、生徒達は転校生の話で持ちきりだった。


「転校生ですぞ。て・ん・こ・う・せ・い! 某はツンデレ、ツインテ、幼馴染をキボンヌ! 口癖は『アンタバカなの死ぬの?!』。化野氏はどう思いまする?」


「拙者は体育会系、小麦色の肌、ポニテ、活発な娘をキボンヌ! 序でに手を繋ぐと赤面すると尚グッジョブ! 徒花氏は狙い過ぎですな」


「いぇいぇ、ご謙遜なさらずとも。化野氏も中々現実を視ておらぬ。デュフフ」


「しかし徒花氏、最近の流行は『厨二病』。ツンデレは一線を退いたのですぞ。オウフゥ」


「某、ツンデレを愛す者なり。化野氏、某も『厨二病』の少女は好きなりよ。最近の書籍や番組では増えてきまするな」


「徒花氏、拙者、『厨二病』の次『DQN』がブレイクすると愚考する始末なのですが……」


「デュフフ!! 某もそのように思っていたのですぞ!」


「オウフゥ!! そうなのですか。拙者、大変嬉しいですよ」



…………偶然、彰敏の耳にもその言葉、転校生という話題は届いていた。


「転校生、ね……」


彰敏の口からポロリと言葉が漏れた。その転校生が一体誰なのか想像ついている。つい先日、我が家に居候することとなったアイツだと。


「おい! 聞いたか皆?! センセーは転校生が気になるご様子だぞ!!」


一人の男子生徒が、声を上げる。


「なんだって?! あの不動明王と畏れられるあのセンセーが!?」


悪ノリする男子達。


「これは愛子さんに危機が訪れるのではないですか?」


と、茶化すように哀島 愛子に話が振られた。愛子は、はっとして慌てた様子で彰敏へ詰め寄る。


「彰敏ぉどーゆーこと。わたしが居るというのに……!」


愛子は彰敏の学生服を掴み、思いっきり揺さぶる。彰敏の頭はグラングランと揺れる。


「落ち、着き、なさい」


と言いながら、彰敏は愛子へとチョップを喰らわせた。


「あぅ……」と愛子は声を漏らす。


「うはっ! 見せつけてくれますな。徒花氏っ如何しますか? いっそのこと血祭りにでもしますか?」


「デュフフ、落ち着き給え化野氏。彼奴らは某達になんの危害も加えずなり。如何して某が彼奴らに攻撃しなければならないか」


「……それもそうですな。ところで徒花氏、今夜放送される『アダ☆コイ』の展開についてなのですが……」


「化野氏、それはだね……」


と彰敏達を傍観していた男二人はまた自分達の話題に没頭し始める。彼等にはもう周りは視えていない。


愛子は叩かれた場所を両手で摩りながら、涙眼で彰敏を見上げた。


「…………で?」


彰敏は腕組みしながら尋ねた。


「ごめんなさい」


「よろしい」


彰敏は微笑みながら応えた。言葉を交わさずとも、二人の間には通じ合えるなにかがあったようだ。


…………*


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