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お出かけすること。

つつつつつ、ついに!今日がキター!なんと、外に出れちゃいます。リゼット曰く、バッテリー残量と自己ステータスが把握できていれば外出おkだとのこと!これで、日ごろのリゼットのいぢめから解放される!バンザーイバンザーイ!

・・・あれ、でも、どこに行けばいいんだろ?行くあてがない。

「何さっきから一人でころころ表情変えて遊んでるんですか?外に行きたいならさっさと行けばいいでしょう?」

なんかリゼットちょっぴり不機嫌。私の自由がそんなに嬉しくないのか。ヒドイ、ヒドイよ!自分のアンドロイドの門出くらい祝うのが普通でしょ!?

「せっかく外に出られるようになったんですよ。パーティーとか、しません!?」

また、リゼットの溜息。

「中途半端に知識があるとテキトーなこといいますね」

適当?お、適して合っているって意味じゃないですか。やっぱり、私はお利口ですね。

「・・・門限は、そうですね、5時です。分かったらさっさと行ってください」

バン!

締め出された。今はまだ午前中だし、結構外にいられる!外に出て初めて気がついた。リゼットの家も地面に突き刺さった建物の一部を使っていた。まずはこのマンションらしき建物の探索からしてみることにした。リゼットの部屋の隣の部屋から。

ガチャリ。

中はかつては人が住んでいた様相を呈してはいるが、

「汚れていますね・・・」

埃は積もり放題、何一つ整理されていない部屋。生体反応はない。空き部屋だ。しばらく進むとベッドの上で何かが風化していた。小さな塊を作っているそれに手を伸ばす。

「骨、だ・・・」

何か動物の骨。人間では、ないみたい。データベースからサイズの一致する猫が適当と判断。薄暗い部屋の探索を続ける。乾ききったバスルームの中に、人間はいた。風化して触れば砕けるようになってしまった人間は頭蓋を足元に転がし、依然と空の浴槽に浸かっていた。私は、その人間が首にかけていたものが目に止まった。

「あ、かわいいペンダントだ。もらっちゃおー」

ペンダントは頭部のない首から簡単に取れた。その時に、首の骨が何本か砕けた。

「ここ、掃除すれば使えるかな?」

特に惹かれることもない死体から目を離し、あたりを見回した。汚れきってはいるが、使えないことはないと思う。というのも、私には今、部屋が無い。最初目覚めたのはリゼットの部屋だったし、あの家には他に部屋は3つしかなく、(誰も使わない)キッチントイレとリビングだけだった。でそれで今は用が無い限りはずっとリビングにいる。充電器もあるので困ってはいないが、リゼットの部屋に入るたびに私にもこんな部屋が欲しいな、と憧れていた。

「でも、綺麗な部屋が他にあるかも・・・」

私はその部屋を後にして、別の部屋を探してみることにした。だが、他の部屋には壁に穴が空いていたり、扉を開けた瞬間、Gがゾワワ~と蠢いたり(死ぬかと思うくらい怖かった!)とても使う気にはならなかった。


ガチャリ。

それでも、まだ探索中。バッテリー残量は残り70%。全然余裕だ。今しがた、扉を開けたこの部屋は恐ろしく片付いていた。というより、誰かいることは明らかだった。リゼットの部屋に戻ってきたわけじゃないはず。同じような構造の部屋を回っていく。死体はない。キッチンに使った跡がある。リビングに向かおうとした瞬間、背中に衝撃が走る。続けざまに4回の衝撃。激しい痛み。後ろを振り返ると銃を構えた少女が立っていた。

「!!」

振り向いた私に驚き、トリガーに手をかける。表面装甲に傷がついた程度、多分勝てる。そう踏んだ私は少女に向かって突進をする。彼女が銃弾を放つ前に銃を取り上げ、後ろに投げ、左手で彼女を突き刺そうとしたとき、

―行動プロテクト 当該行動が許可されていません―

突然、私の体は静止した。

「・・・あれ?動かない・・・助けてー」

目の前の少女に顔で救助を求めてみる。彼女の顔は汗でびっしょりになっていた。険しかったその表情が徐々に緩んだ。

「はぁ~ビックリした」

少女はへなへなと床に座り込んだ。

「あなた、リゼットさんのとこのアンドロイドでしょ。動けるようになったんだ?」

私に危険はないと分かると彼女は話しかけてきた。私は相変わらず、変な姿勢を維持したまま、答える。

「動けないですよ。というより知ってたなら、撃たないで下さいよ~」

彼女は銃を拾いに行き、私の前で胡坐をかいた。

「リゼットさんに怪しかったり、危なかったりしたら壊していいって言われてたから」

からからと彼女は笑った。また、リゼットか。

「でも、壊すってその銃じゃ無理ですよ?」

私は彼女が今手にしている銃をみる。ハンドガン。護身用のものだろうか。それではせいぜい人口皮膚をはがすのが精いっぱいだ。

「ああ、これじゃ無理だよねー」

またからからと笑いだした。無理だって分かってたんだ!?

「いやー、だってあなたがいる先に破壊用の銃は置いといたからさ」

そう言うと私は目線を彼女が指さす方に向けた。そこにはスナイパーライフルのようなものが転がっていた。私のデータベースにはないが、多分、改造銃だろう。

「ところで、名前なんていうの?」

彼女が人懐っこく訪ねてきた。肩より上で切りそろえられた髪が揺れた。

「えっと、ノエルです。あなたは?」

「あたしはジゼル。にしてもまだ動けないの?」

内部設定によるとあと5分は動けないようだ。リゼットー泣

「動き出したら襲ってきたりして」

「もうしませんよ~」

だが、ジゼルを襲った時の自分の動き。やけに反応が良かった。私、もとは戦闘用のアンドロイドだったのかな?なんかカッコイイかも。


体が動けるようになった後もしばらくジゼルと話をした。ジゼルにはシャルロットという妹がいることやリゼットとはここに越してきたときからの知り合いだということ。武器とかはリゼットにつくってもらったこと。実は私を見つけたのはジゼルだったこと。

「へぇ、リゼットも優しいんですね~」

「はは、結構請求されたけどね・・・」

やっぱり。ただ、というわけではないようだ。ふと、彼女の腕に斑点が付いているのが気になった。私が付けたわけじゃないよね?

「その腕、どうしたんですか?」

ジゼルは慌てて腕を後ろに回す。

「あはは、大丈夫。大したことないから」

何かあの斑点に違和感を覚えた。でも、該当するデータは一つも私の中にはない。そうこうしている内に五時になったので私はリゼットのところに帰った。一応、家出先にしてもいいって、ジゼルに許可をもらった。やったー。



後日。

「やっと、リゼットから解放されましたー」

ジゼルのところに家出してますなう。いやー充電器さえ持ってきてしまえばこっちのもの。耐久テストと称して鞭を振るうのはやめてほしいものです。痛いしね。

「帰って、我慢した方がいいと思うけどなー」

ジゼルはのんきにそんなことを言っている。

「この家、電気、通ってない、から、帰らなきゃ、ダメだと思います」

「えっ!?」

私が掲げていた充電器を見て、シャルロットがたどたどしく意見を述べた。髪型はジゼルと同じ。肩の上で綺麗に切りそろえられおり、慎重そうでいつも困ったような顔をしている。彼女は私のお気に入りだ。小動物みたい。でも結構背はある。そんな彼女の頭をなでてみる。ビクッとシャルロットは縮こまる。

「だ、大丈夫ですよ。その内帰りますから。向こうも居場所が分からないからきっと寂しくて、最後は感動の再会みたいになって、私に優しくなる!それが私のシナリオです。」

自信満々に言ってのける。とそのとき、

バタン!!

玄関が勢いよく開く音。見覚えあるサイドテールがそこに立っていた!!

「すみませんね。シナリオ通りにはいかないみたいですよ」

怖い。なんか笑ってるけど、怖い。リゼットさん怖いです。

「ど、どうしてここが分かったんですか!?」

「信号を受信すれば分かりますし、メモリーを除いたときにここに来たことも知りました。さぁ、帰る時間ですよ」

ああああぁぁぁぁ・・・・後ろで二人が手を振っている。救う気はないんですか・・・。


「はい、私はリゼットのお人形です。どんなことでもします・・・泣」

「良くできました。じゃあ次は・・・」




久しぶりにジゼルに会ったが、斑点が大きくなっていた。随分、進行が早い。シャルロットにうつってないのがせめてもの救いか。結局、彼女たちを救ってあげる方法は、ない。

でも、ノエルを遊びに行かせれば、彼女たちも退屈しないだろう。週4ぐらいで行くようにノエルに設定を施そう。そう言って私はパソコンのキーボードをたたき始めた。

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