はんたいこ、バンザイ?
僕のお母さんは怖い。
朝おきないとおこってくるし、ゲームをやっていてもおこってくるし、宿題をすぐにやらないとおこってくる。
小学校から帰って来て手を洗っていると、鏡の中の僕が、とつぜん話しかけてきた。
「コッチのお母さんは、はんたいこで優しいよ。僕とこうたいする?」
「ほんとうに? じゃあ、こうたいする!」
鏡の中は、すべてが逆だった。
2階につづく階段の場所が逆。
キッチンとテレビの部屋が逆。
ご飯を食べるテーブルで、お母さんが雑誌をめくっている。
「お母さん、ゲーム、やってもいい?」
「いいわよ」
「まじで? やった!」
お母さんは、にこにことしている。
僕はバンザイをして、ゲームをやり続けた。
あたりが暗くなるころ、僕はゲームをやめた。
目がしぱしぱしてきたし、おなかがすいたからだ。
「お母さん、夜ごはんは?」
同じ場所でスマホを見ていたお母さんは、スッと千円札をさしだした。
「コンビニで好きなもの買って食べてね」
「ほんとに? やった!」
僕はバンザイをして、コンビニでカレーライスを買ってきた。
コンビニのカレーは、僕にはからくて、ちょっと量が多かった。
もう一回ゲームをしても、ゴロゴロしながらテレビをみても、お母さんは優しかった。
早く寝なさいと言われなかったから、僕は11時までおきていた。
ねむくなって、ベッドに横になって、僕は思い出した。
「宿題してない!」
僕はおきあがり、いそいで漢字の宿題をした。
つぎの日、僕はねぼうした。
お母さんは僕をおこしにこなかった。
お母さんはにこにことしていておこらなかったけど、テーブルの上に朝ごはんはなかった。
僕は洗面所の鏡をどんどんとたたいた。
「ねえ、はんたいこ、もうやめたい!」
はんたいこじゃないお母さんは、朝ねぼうした僕におこりながら、朝ごはんを出してくれた。
お母さんは、やっぱり怖かった。
ご一読いただき、ありがとうございます。
はるか昔、地元の新聞の童話コーナーで小さな賞をいただいた思い出の作品です。
今読むと、けっこうホラーでした……。




