「好かれるということ」
「ほんっとに、みんながリュートさんの話をしたがってるんです」
リナが笑う。
木漏れ日が差す村の中央広場。
子供たちに囲まれながら、俺は“話し相手”として大人気だった。
「ねえお兄ちゃん、昨日の怖い話の続き聞かせて!」
「ちがう、剣の話がいい!」
▸「どっちも順番に話してあげるよ」【好感度+2】
▸「今日は剣の話だな」【好感度+1(偏り)】
▸「また今度ね」【−1(子供)/+1(大人)】
「どっちも順番に話してあげるよ」
俺がそう言うと、子供たちは一斉に歓声を上げて、膝にしがみついてきた。
(……うん、悪くない)
もしかしたら今の俺なら、
人に嫌われず、穏やかに生きていけるのかもしれない。
***
その晩、リナの母親にも夕食に招かれた。
田舎料理とは思えないほど温かくて、優しい味だった。
「リナから聞いてますよ。怪我人を助けてくれたって」
「いや、俺は何も。むしろ助けられたのは、こっちで……」
▸「リナさんに救われました」【母親+1/リナ+2】
▸「ご縁に感謝します」【+1(全体)】
▸「あまり覚えてないんです」【母親−1】
「リナさんに救われました」
その言葉に、母親は目を細め、リナは少し照れたように笑った。
食後、戸口まで見送ってくれるリナの背中に、
“次に選ぶべき言葉”がまた浮かぶ。
⸻
◆【次の選択肢:「また明日、会いにきてもいい?」】
◆【効果:信頼+2/恋愛フラグ+1】
⸻
俺は迷いなく、口にした。
「……また、明日も来てもいいかな?」
リナは目をぱちくりとさせ、やがてこくんと頷いた。
「はい。……お待ちしてます」
(スキルって……すごいな)
選ぶだけで、人がこんなに笑ってくれる。
ずっと孤独だった俺にとって、それは夢みたいだった。
***
数日が経った。
村人たちは俺を“聞き上手な旅人”として完全に受け入れ、
リナとの距離も少しずつ近づいてきていた。
選ぶ言葉を間違えなければ、傷つけることも、嫌われることもない。
(あの日願った“誰かに好かれたい”って気持ち……今なら、わかる気がする)
ただ、少しだけ、
「これで本当に良いのかな」と思う自分もいた。
けれど、それでも――
「嫌われない日々」は、確かに“幸せ”だった。
***
そんな穏やかな午後。
森の入り口で草を集めていた俺とリナの前に、
一人の青年が現れた。
日焼けした肌に、鋭い目。腰には刃こぼれした剣。
「……リナ」
彼の視線が、まっすぐ俺を貫いた。
リナが微かに声を震わせる。
「あ……アレン」
その名前を聞いた瞬間、俺の視界にまた浮かぶ。
⸻
▸「やあ、リナの知り合い?」【好感度±0/印象:柔和】
▸「こんにちは。リナにお世話になってます」【好感度+1(リナ)/−1(アレン)】
▸「……誰?」【好感度−2(アレン)】
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(……この選択肢、どうする?)
どれを選んでも、“波風”は立ちそうだった。
そして俺は、また“言葉”を選ぶことになる。
非検体038です。
最後にアレンとの出会いです。
どうなるのでしょう?