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ユリアナ物語  作者:
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第6刊 結束の乙女

【第12話 再びの蹂躙】


魔境を抜けた先に小さな森を見つけた。

目隠しのない荒野では火を使うと何kmも先から視認されてしまう。例え岩陰に隠れても灯りは漏れるものだ。従ってこの数日間は夜も火を焚いていない。だが葉陰に隠れる森ならば立ち昇る煙も含めて散らされて視認はほぼ困難となる。

光属性によるライトは大きさを絞れば岩陰なら使えないこともないが、開けた側に敵の斥候が潜んでいれば位置と存在がバレること疑いなしであろう。


魔境では日のある時間はほぼ移動に費やしており、暗い夜はクロエの結界魔法にて防壁を張り保存食を齧って速やかに身を寄せ合って睡眠を取った。

湯を作り出し身体を拭くなどの時間は取れておらず、皆がまぁ、臭い。


さて、久しぶりに火を焚いて簡単な料理をブリュンヒルデが作り始めた。マグダリアは防水処理を施した布製のバッグを取り出してその中に湯を作り出している。身体を拭く為の湯だ。当然はじめはユリアナからなのだが………


「ユリアン様。魔境での私の働きにご満足は頂けましたでしょうか?」


「うん? ああ、そうだな。移動速度を落とさず進めたのはベアトリクスが先行して魔獣を排除してくれたお陰だな。うむ、満足しているぞ」


「ならば………僭越では御座いますが、褒美を賜りたく!」


「………身体を拭いたら考えよう。いや、皇国へ帰参してからにしないか?」


「今でなければダメなのです」


「………臭いぞ?」


「それこそが至高」


「匂いが褒美だと?」


「匂いも、です」


「………手早く済ませよ」


「あ、有難き幸せに! ささ、此方へ」


既に簡易の寝床が設えてある。しかも他の皆から直ぐ側だ。そりゃあ警護上、離れた場所で隠れてなんて出来る訳が無い。


「こ、ここでするのか?」


「左様にて。目の届く場所でなくば危険故に」


後を振り返るユリアナ。ビバークように切り開いた小さな広場にいる皆と目が合う。直ぐに目を伏せて立ち止まっていると左手首を掴まれた。


「さぁ、ユリアン様。此方へ………お召し物を脱ぎましょうか」


「私がお手伝いいたしましょう」


いつの間にか側に立つクララがローブを脱がせてから革製の肩当てや防具類を手慣れた手付きで流れるように取り外してゆく。僅かな時間で下着姿に剥かれたユリアナ。躊躇なくその股間に顔を埋めるベアトリクスに気を向けていると、胸元にハンナの頭が見える。左右の腕を持ち上げて脇へと鼻を押し付けているエイダとクラウディア。

いつの間にか仰向けに寝かされてブーツを脱がされ、その匂いを嗅いでいるブリュンヒルデとマグダリア。

この辺りの4名はかなりの上級者であろうか?

後頭部はクララの膝の上。

因みにアーデルハイドは距離を取って後追いをしている影らと接触し、エウロスの行軍を監視させる為の人員手配を段取りさせている。後続の影らは里へ飛ぶ鳥を保持しているが故に。


おや? クロエがいない………そう思った瞬間、視界を誰かが跨いで塞いだ。誰かの股間が顔の上に乗っている。この匂いはクロエか。

従者8名全員がユリアナへと群がる。もう止まらないであろう。


「ぷあっ! ま、待って、順番に!」


ほんの僅かな隙間を突いて声を発したユリアナであったが、それに続いて発せられた顔面上にいるクロエからの言葉に沈黙した。


「前回から幾日経ったか。もう限界だったのですよ? これは我等が忠義の裏返し、いえ、魂が欲するご奉仕なのです。主として受け止めて下さいね?」


時間を置きすぎたのか………一人ずつ順番にと意図していたのにまたしても集団に貪られるのか………コレって性的搾取、いや、暴行なのでは?

などと考えを巡らせている間に皆が匂いを堪能し尽くしたらしく、肉欲の求めるところを満たし始めた。すぐさま全身くまなく舐め尽くされて、前後の穴に舌がねじ込まれてくる。人の舌だとは思えないほどに長くてボリュームのあるソレは………ああ、成る程。あの初めての日の翌日にあったソコの違和感はコレか。そう悟った。


散々に蹂躙され尽くしてから皆で夜食を頂いた。

身体中がビビクンッと痙攣してスプーンですらうまく持てない状況で食事の介助を受けた。スープなどは代わる代わる口移しで飲まされた。

正常な思考もままならぬ中で“可愛がられた”ユリアナは何時しか寝落ちしていた。


翌朝。全員裸で包まれるようにして暖められたユリアナはその肉体の檻の中で目覚めた。

昨夜の事は初回と違い割と覚えている。だからこそこの女達の肉欲の凄まじさと自身の贄としての価値をまざまざと思い知らされた。

男ならば勃たなくなればそこまでだ。だが、女でも良いとなればその肉欲が満たされるまで体力精神力の限りこの身に叩きつけられ続けるのだ。


我が身は、我が心は果たして保つのだろうか? そんな身も蓋もない不安がもたげてくる。

この自称臣下の従者らはこの身をその忠誠と等価交換とする生贄と考えて、自己の性的欲求を満たすことを正当化してはいないか?


だが純粋な忠誠などありえるのだろうかとも思ってしまう自分がいる。

日本での武士道、西洋での騎士道。そうした価値観の殆どは後世に創作された美談であり、裏切りや自己保身、主人の乗り換えなんて当たり前だったというのが学術界隈での認識だと聞いたことがある。


彼女らの自分への忠誠は情欲の延長にある謂わば推しでしかないのではないのか?

リカルダらには先の叛乱に於いて明確な褒賞を与えて形式的に心を取ったという状況を作っている。制度に当て嵌めて体制に組み入れるという意図も込みの施策であり、それは合理としての主従の契約だ。故に信頼できる。


だが、この女達はどうか?


この身体に飽きたら離れていくことだってあり得るのではないのか?

幼少時からの臣下であるハンナとマグダリアとブリュンヒルデは信頼を置いても良かろうが、クロエは………長生なダークエルフの人生の極一部をユリアナに預けるのはさしたることもなしとするならばこれも信頼して良かろうか。創造神の導き云々はこの際おくとしてだ。


リカルダに連なるアーデルハイドとクララは除外するとして、やはりベアトリクスとエイダ、クラウディアは今は情欲による忠誠だと見て余り深く信を置くべきではないのかも知れない。

まぁ、この匂いフェチの変態共を満足させる逸材が我が身の他にどれほど存在するのかは分からんが、この身体に固執しているうちはある程度信用しても良いのかな。


さてと、ユリアナとしての体裁を取り戻そうか。先ずは皆を起こしてお花摘みをせねば。

昨日散々にぶち撒けたのに朝はまたちゃんと出るものなのだな。





【第13話 西の真実】


ものも言わずに身体を拭かれてから身だしなみを整えられ、朝食を食べて動き出す。


会話少なく、誰もユリアナと目を合わせない。

やってしまったことに対する気不味さはかなり強めにあるようで、クロエですらやや下向きに歩いている。

ハンナなどは思い詰めた顔をしている。そのうち腹を切るとか言い出しかねない雰囲気だ。前回に対する反省が全く生きていない証左ともいえる。

もはや昨夜のコトは消化しているユリアナにとっては済んだことなのだが、敢えてそうした意思表明はしない。今彼女らがその脳内で繰り広げている思考は今後のブレーキとなる論理の構築に資する山であり谷なのだ。存分に悩むと良い。

まぁ、そのブレーキが如何ほどの効力を発揮するのかは未知数だが。



その日の夕刻、遥か遠くに城砦らしき備えを有した街が見えて来た。

エウロスに五つある城砦都市の一つ、ターコイズィルだ。

皇国側にある時点でこれは150年前の叛乱以降に作られた防衛拠点だ。


抜けてきた魔境もこうした対皇国防衛拠点も既に知れている情報ではある。しかし直に触れたのは当然初めてであり………


「50年程前だったか、一度訪れたことがある」


クロエが目を細めて呟いた。


「人は多いのかな?」


「当時でも軍属が500程、民は2000程度であったと思う。今ならだいぶ減っているのではないか」


「何故?」


「井戸の枯渇が問題になっていたからな」


「それは………煙は視えるから人はいるようだけど………皇国へ兵を出すならアソコへ集めるのだろう? 水の確保は魔法士頼りか?」


「まあ、そういうことだろうな。さて、軍が集結していたとしてだ、当主はいるかな?」


「当然。と言いたいところだけど前回も前々回も代理人を立てて四大公家当主は誰も前線には出ていないと分かっている。せめて送り出しの地へ顔出しくらいは………居ないのだろうなぁ」


ここで実に苦々しい顔を張り付かせたベアトリクスが語り出す。


「結果論として不要だったとはいえ国境の防備として配置された武門の誉れとしての公爵家がこうも堕落するものか………我が家たるゼフュロスも腐れて久しいので余り他家のことは言えないのですが。

しかし皇家の血は武門の血に御座います。鍛えれば我が身のようにそれなりには戦える武人となれる素養を持っているにも拘らず、それをしない。唾棄すべき同族どもが………」


皆が「お前は違うだろ?」とでも言うような視線を送る。それに気付いたベアトリクスはやや居心地が悪そうに身動ぎしてからユリアナへと向き直る。


「私が見て参りましょうか?」


少し考えたユリアナはふと気になったことを聞いてみる。


「ゼフュロスの者としてベアトリクスは他の大公家と交流はあるのか?」


ゼフュロスは150年前の叛乱のあと早期に帰順を申し出て当時の皇国宰相から撥ね付けられた過去を持つ。それが他の大公家からの侮りと軽蔑を招いたとされている。

だが実際にはゼフュロスの子女はノトスの学院にも就学しているし、どうやら婚姻も結んでいる。実質的には交流がある筈なのだがそれが外からは視えないのだ。


「学院には行きましたし、そこで幾人かの大公家の親類との友誼を持たされました。親の指示でですが。その中には先頃話に出ましたボレアスの長男もいます。ですが、一部の貴族子女を除き恒常的な交友関係は持ちませんでした」


「何故?」


「クズしかいなかったからです」


「一部の貴族子女とは?」


「………好きな見目の娘でしたので」


「成る程、承知した。それでは絶縁は元より左程には避けられていたわけではないということだな?」


「まあ、その辺りの流言飛語は当時意図的に流した策略の一環だったようです」


「ほう?」


「寧ろゼフュロスだけが皇国への帰順を申し入れたのは四大公家を代表しての試行だったそうです。もし上手く運べば他の大公家も後に続いて一旦関係を元に戻す腹づもりだったのだとか」


「あり得る話だな。そして上手く行かなかったことを逆手に取って関係性の悪化を周知し、西の孤立を強調したと」


「その通りです」


「ならば今回の決起にゼフュロスも参加するのか?」


「少なくとも私にはそのような話は回ってきませんでした。またそうした動きも感知しておりません」


「体力的な問題かな?」


「………ゼフュロスへ流入する食糧はノトス経由の経路しか有りません。そのノトスが………数年前から値上げを言い出しまして。まぁ、旅の途中で見た限りあそこもギリギリのようです。悪意からではないのでしょうが………もはや兵を起こすなぞは………」


「まぁ、西での演習は実際に行うから兵力は配置される。仮に軍を編成し東進しても直ぐに阻まれるであろう。無為なることよな」


ユリアナの言葉に俯くばかりのベアトリクスである。


「ベアトリクス。お前を勧誘した際の約束は必ず果たす。全て終われば民は救われよう」


顔を上げたベアトリクスの目には愁いがあった。


「あの様な事をした私に………なんと慈悲深いことか」


「他の者らはともかく、お前には褒美を取らすと約した上でのこと。お前にはなんら思うところはない」


「な、んと。我が主は………誠に得難き主なり」


「ふん、ならばもっと労れ。精魂尽き果て水分も涸れ果てたわ」


「………二人きりならばもっと慈しむ情交がいたせまするが」


「………何れな」


「! はっ! 全霊を以てお尽くしいたしましょう!」



昼前、順当に追いついたアーデルハイドには休息を命じ、クララへ夜間の偵察を命令してから一先ずはターコイズィルまでの距離を半分にまで縮めた。


2日後の朝、帰還したクララからは概ね予想通りの報告がもたらされた。


「軍は明日進発とのことにございます。兵力は2800程、指揮官はイーラ伯爵家当主ウリガルド・フォン・イーラ、副将は子息たるハロルド。尚、エウロス家当主、ブラドは領都を動いておらず不在にて」


「2800とは………皇国は過小評価されているのか?」


「ボレアスからは4000出すそうですが、あくまでも都を制圧した後の治安出動との位置づけなのだとか」


「ノトスの兵については? 何か情報はなかったか?」


「兵力は不明ながら、港町アウラへ侵攻予定だそうです」


ここでクロエが発言する。


「これで全容ならば………詰んだな」


「軍事については国とリカルダに任せよう………さて、奴等には敗北と絶望を味あわせてから復讐をと企図していたのだが、満月から報告が届くまでの期間もこの地に留まるのも無為であるな。クロエ、ここからボレアスまで如何ほどの日数を要するのだろうか?」


「うむ、我らの足ならば20日ほどかな」


「丁度良いか」


「ユリアン様、魔境越えの監視報告はいかがいたしましょうか?」


「それは仇の討ち漏らしがあった際の逃走経路予測に使うつもりでの………ふむ、ブラドに監視を付けよ。あとは直系の子らの位置確認だな」


「はっ、ノトスはいかがいたしますか?」


「あそこにはヘルガがいる。影も一人付けている故、その辺りは抜かりなかろうよ」


「では仇討ちはボレアスからにございますな?」


「ああ、そうなるな………エイダ、スマンな」


「いえ、父はもう何年も前に見放しておりますゆえ。今現在に於いてわたくしは家名も捨てております。むしろ我が生命を長らえさせると仰るユリアン様には感謝しか有りません。ましてやこのように従者として重用までしていただけるに至っては………誠に至福に御座いますわ」


「わたくしも同様に御座いますわ。父らは奸計を用いて唾棄すべき行ないを実行致しました。しかも今回またしても………飢えたる民に一瞥もせず、欲心のみにて愚策を巡らせる愚か者。存分にご両親様の仇をお討ちなされませ」


「クラウディア………エイダも、家名はいずれ私が授けよう。我が支えとしてこれからも側にいてくれようか?」


「「我が生涯を共に!」」


少しずつ固まってゆく主従。ユリアナに惹かれて共に旅をしてユリアナを知るほどにさらに想いを深くする。それは彼女らだけではないのだろう。


さて、そこにある想いとは忠節なのだろうか。或いは………

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