第5話 はぁ?神官になる?そんなことをしたら浮気できなくなりますが大丈夫でしょうか?
「ユフィ決めたぞ!もう家のことなんて懲り懲りだ。僕は神官になる!」
「はぁ?」
前回は意図せず自分の家の不正を報告したら実は政敵の不正を発見していたという、信じられない方法で派閥間の争いに手を出した結果、中立派の財務大臣から感謝されるという意味不明なファインプレーを繰り出した旦那さまでしたが、その結果意中の相手からフラれたようで、意気消沈した旦那様がまたこんなことを言いだしました。
そもそも自分の家の不正を報告するというのが意味が分かりませんが、あれは角を立たせずに不正を指摘する唯一の方法だったと周囲の貴族を言いくるめました。
既に合格印を押された書類を引っ張り出して財務大臣に見せるなど、それだけで信用していないと言って喧嘩を売る行為なのですが、合格したものだからあっているものとして別の不正を見つける根拠に使ったと言われれば反論は難しいのです。
思いもよらないファインプレーに、なぜか公爵様がどや顔をしていたので手に持っていたワイングラスを投げつけたくなりましたが堪えておきました。
しかし思いもしない素晴らしい結果だったので、懸念を表明していた執事に対して私もドヤ顔をしておきましたが、カウンターで大量の書類を渡されるという散々な結果に終わりました。
これは普段あなたがしている仕事でしょ!!!!!!!
しかし結果は結果。良い結果を出したのだから報いないといけません。
お金を渡すと思いあがって娼館などで使い切ってしまうので、代わりに次の希望はなるべく答えてあげようと思っていたところにこれです。
どうやら意中の相手が今回の件で職務を解かれてしまい、神殿入りしてしまったようです。
男爵家の令嬢だったようです。
まぁ私も伯爵です。一度決めたことを覆すのは嫌なので、旦那様の希望通りに神殿に入れて差し上げました。
どうせ神の目を忍んで浮気などは控えるべきところ、欲望のまま致してしまって追い出されるのが関の山です。
と思っていたのですが……
「今帰ったぞ」
「はっ?」
なんと1か月も経たないうちに帰ってきました。
その体は今まで20年もの間積もりに積もった贅肉が落ち、髭もそって髪を整えた凛々しいもの……。
てっきり公爵様が冗談で演技でもしているのかと疑いましたが、まぎれもなく旦那様……。
彼の中で別人格でも目覚めたのでしょうか?
それとも異世界転移していた勇者様でも目覚めたのでしょうか?
っていけませんね。ついつい最近読んだ小説のことが意識に残っていたようです。
ですが、それほどの衝撃です。
頑張ってきたようなので、一晩くらい抱かれても問題ありません。
しかし、翌日とんでもないことを言いだしました。
「ユフィ、聞いてほしい。私は神殿長を目指すので寄進してもらえないだろうか」
「はぁ?」
なぜか僕から私に変わっていて、言葉遣いまで少し丁寧になっています。
話しを聞くと、意中の相手が完全に神殿に売られてしまい、救い上げるには神殿長になるしかなく、仕方なく努力したそうです。
昨晩の私の純情を返せ!
あと、私がどれだけ言っても豚のままだったのに、そいつのためなら頑張れるのかと、ちょっとどころではなくショックだったのですが……。
仕方なく寄進して差し上げました。
クルスローデン家としても領地経営が順調なのでこういった慈善活動は大事です。
やっておかないと、あそこは私腹を肥やしているなどと噂されてしまうのですから。
催促しているのが浮気相手に夢中な旦那様ということを除いて全く問題がないのがまた癪ですし奇妙です。
まぁ、もうこれで最後です。
きっと神殿長になればもう戻ってこないでしょうから、昨日のことはあれで最後の思い出だと割り切りました。
誰か慰めてほしいのですが……執事長は顔を逸らしてどこかに行ってしまいます。
むぅ……。
家のことも順調だし、おそらく数か月後には離婚となるでしょうから、私は私で社交界で相手を探しましょう。
可愛げのない性格かもしれませんが、これでも女伯爵なので誰かしら見つかるでしょう。
そう思っていた時期が私にもありました。
「ただいま……」
「はっ?」
なんとエラルドが返ってきました。
また豚のような姿に戻って……。
どうしたのかと聞くと……
「酷いんだよラフィ!」
酷いのはお前だ。
私はユフィだ。
お前の浮気相手の名前ラフェリアと混ぜるな。
思いっきり頬を張っておきます。
「ぐぅ、なぜ」
「私はユフィです!」
「あっ、すっ、すまない。でも聞いてくれ」
怒っていますと顔に書いている私を見てもこのバカはそのまま話し続けます。
「私は人生ではじめて努力して修業を行い、寄進を集め、ついに神殿長への推薦状を集めたんだ」
なるほど、そこまでは頑張っていたらしい。
「そうしたらラフェリアが喜んで褒めてくれて、ついそのままいたしてしまったのだ……」
まぁそうでしょうね。あなたがそれを我慢できるとは思えません。
「それを見ていた神官たちに脅され、推薦状を盗られ、地下に閉じ込められた……」
だいぶきな臭くなってきましたね。
というか衆目の中いたしたんか~い!!!!
「そこで食事だけは与えられていたが、ラフェリアとも会えない日々……」
知らんがな
「ついに出してくれたと思ったら神殿長選挙は終わった後。私を脅した神官たちは奪った推薦状でラフェリアを推薦して、彼女が神殿長になった……」
はっ?
「そして私を追い出したんだ。酷いだろ?あんなに愛し合った仲なのに、あなたの姿かたちには幻滅しましたなんて言われたんだ」
なにが酷いって、全部酷い。お腹痛い。
こいつらはどこまで私を笑わせれば気がすむんだろう。
私の腹筋が死ぬ……。
私はとりあえず推薦状に確認を取って推薦状の偽造を告発し、ラフェリアを引きずりおろし、代わりにローアン・ラヴェロア氏を推薦しておいた。
バカのおかげで再びラヴェロア侯爵に恩を売れたことを喜べばいいのでしょうか?
それともバカが戻ってきたことを嘆けばいいのでしょうか?
もういっそ冒険者にでもさせて炭鉱ダンジョンに放り込みましょうか?
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