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安らかに  作者: 秋山 京
3/6

変わる囁き

人が死ぬ表現があります。

暗いので苦手な方は、バックしてください。

行方不明者30人、死者12人。


行方不明者の名前は増えては減ってを繰り返す。

死者の数は増える一方だ。


会社の外に出ると、むっとした暑さが僕を包む。

蝉の鳴き声がうるさい。


駅までの道を歩く。

民家に囲まれたどこにでもある道。


この会社でも、僕の入社前に失踪した社員がいた。

社宅に荷物を全て置いて、いなくなったそうだ。

まぁ、数年後に迷惑をかけたと挨拶に来たらみたいだが。


彼はあの休日に実家に帰ると、同僚に伝えていたらしい。

独り暮らしがしたいと、春に家を出たばかりだった。


あの日帰らなければ、生きていただろう。

あの日帰らなければ、親兄弟を全員失って残されていただろう。

独り残された状態で、生きていた方が良いのか。

親兄弟を失ったことを知らないままで良かったのか。


種の保存としては、独りでも生き残っていた方が良い。

全員無事が良いのが一番だが、良い、悪いではなく、

多くの命を奪った土砂は、ただただ悲劇だった。


20代前半で、僕より10歳以上若い、その未来が潰えたこと心が揺れる。


彼の無事を祈る囁きが1週間で段々と諦めの声へと変わり、

2週間たつと、沈黙へと変わった。

誰も彼の事を話題に上げない。

生きていないだろう事を認めたくない思いが、口に出すのを嫌がった。



彼の家族の名前が行方不明者から死亡者へと移った。


彼はまだ、見つかっていない。



3週間がたつと、

早く見つかってほしいと願う言葉が漏れ聞こえるようになった。

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