行方不明
人が死ぬ表現があります。
全体的に暗い物語です。
苦手な方はバックしてください。
休日出勤したあの日、昼休憩から帰ったら部下がやばいと騒いでいた。
どうしたのかと問えば、妻が土砂崩れに巻き込まれそうになったとのこと。
帰宅を促したが、怪我も無く連絡が取れているから平気だとそのまま残っていた。
帰りの電車で確認すると、家屋を飲み込んだ土石流はニュースになっていた。
海沿いの道路は通行止めで、県をまたぐには山を越えなければいけないらしい。
行方不明者が××人…、××地区は断水で…、続々と情報が追加されていく。
会社から車で30分もしない距離での出来事だけれど、
僕にとってちょっと遠い出来事だった。
翌日出社するまでは。
「鈴木さんと連絡取れない…。週末実家に帰るって言ってたから巻き込まれたのかも」
部下の一人が心配そうに話していた。
それを聞いた時、彼とはロッカーで会わなかったなと思った。
また、勤務時間の30分前に出社する彼が連絡なしに休むのは異常だと。
次の日から2つ隣にある彼のロッカーを気にするようになった。
数日過ぎても彼の姿は、無い。
会社前の道路を、自衛隊の車が通るようになった。
道路の土砂を取り除いてくれているらしい。
2週間がたって、
行方不明者に彼と、彼の家族の名前が公表された。