[大幅改変中] 銅級を目指して 4 ランクアップ
<ゴブリンファイター>を倒した俺はその魔石を袋に入れ、<初心者の森>の奥から帰って来た。
ドロップアイテムは魔石と石のハンマーだった。石のハンマーはゲームだとたった100Y程度のくせに重くて、荷物になるから置いて来たけどあれってただの石だよな、この世界でも売れるのか?
勿論他にも帰りに出会った魔物のドロップアイテムも回収した。地味に敵が多くて、森から出る頃にはなかなかの量が集まった。
清々しい気分で冒険者ギルドの門を通って中に入る。今日は人が多く、賑わっている様子だ。
俺はこれまで結構遅くまで森にいたので、昼過ぎのこの時間帯に来るのは2回目ぐらい。いつも来る時間帯ならこんなに賑わってない筈なので、皆この時間までには仕事を終わらせてるのだろう。
達成感からか浮かれており、無駄な考えをしながら雰囲気の違う冒険者ギルド内を見渡している。
そんな良い気分の中、受付に並びドロップアイテムの入った袋を渡す。
俺の冒険者登録の時や怒られた際に受付してくれた女性が受付してくれる。あれ、毎回この人しか受付嬢を見ていないんだがもしかして人が足りて無いのか。
人手不足で長い行列に並ぶ事があったら嫌だなと思いながらも、今日に限っては好都合。こいつには目に物を見せてやるって決めたからな。
「あっクロウさん、今日は早いですね。それなのにこんな量もあるなんて、もしかしてアドバイス通りに森の浅いところでっーーーーーー!!」
いつもよりご機嫌に迎えてくれた受付嬢は、中身を見て黒縁メガネ越しの目を大きく見開く。
「ふっ、どうですか?これで俺の実力がーーー
「ク ロ ウさん〜〜??」
………はい」
整った顔立ちに青筋を浮かべながら、怒りのオーラを発している受付嬢。
いやめっちゃ怖いんだが。
「これは!一体!どういう事ですか!」
受付の机をバンバンと叩きながらこちらに圧を掛けてくる。だが、これでも元勇者、負けるわけにはいかない。
「落ち着いてくださいよ。これは俺の実力を証明するために
「レベルは?」
えっ?
「レベルはいくつですか?」
えっと………」
冒険者カードを出して、ステータスを確認。おっ、17レベルまで上がってんじゃん。でもゴブリンファイターって推奨レベル20なんだよな〜。
チラッと見る。
キッと睨んでくる。
後ろを見ても並んでいる人はいないので一旦逃げるのも無理。クソっ、かくなる上は嘘をつくしか無いか。
「そういえば、知ってましたか?登録用の水晶には冒険者の情報が覗き見れるとか何とか」
「17レベルです」
いや怖っ。冒険者カードは身分証明にも使えるのに、登録してしまえばステータスが覗かれるとかとんだ罠じゃねえか。登録がタダな理由ってもしかしてコレか?
「やっぱり!!何が自分の実力ですか、20レベルのも達してもないのによくそんな事が………大体………ちょっと聞いてますか!?」
そういえば前世で泊まった場所では、よくお偉いさんから勇者パーティにかけられた迷惑や被害に対する愚痴やら皮肉やらを長々と言われたなあ。
そんな嫌な事を思い出しながら説教を流していると、白髪の爺さんが声をかけて来た。
「これこれ、なんの騒ぎじゃ」
「あっ、支部長!」
「むっ、それは」
白髪だがかなりの毛量で、皺の少ない顔や芯のしっかりした身体も相まって衰えを感じさせない。日本風の渋い着物にマントを羽織った姿をしており、威厳が滲み出ている。
杖を中心につきながらこちらを見据える爺さんは、俺の取ってきた魔石達に興味を持ったようだ。
「ふむ………そうじゃな。こんなところで話すのもなんじゃから上の階で話そう」
一度俺を値踏みした上で話し合う事を決めたようだ。言い終わった後は反転して、階段のある方向へと向かっている。
「支部長………はあ、分かりました。クロウさん、説教はこの辺で終わりますが無理に高い推奨ランクの場所に行くのは辞めてください。良いですか」
「ういっす。じゃあ行ってくるんで査定はお願いします」
「はあ、全く。分かりました」
受付嬢には適当に返事した後、一気に頭を働かせる。
普通に突っ立ってたときは感じなかったが、こちらを値踏みする時はかなりの圧力を感じた。強敵の雰囲気を持ちながらそれを隠せる実力。つまり、あの爺さんはかなりの強さってわけだ。
銅級になるための正念場。テンプレ的にここの一番上と戦う試験があるかもしれんが勝つ気で行くぞ。
気合いを入れて、爺さんの後をついていくと二階のある支部長室と書かれた部屋の前で止まることになった。
「入りなさい」
爺さんが支部長室の扉を開けて入り、俺もついて行く。
中は思ったよりも狭く、扉の近くから順にソファー、テーブル、ソファー、机、そして壁に付いた大きな窓見えた。部屋自体は狭いが小物は少なく、棚等に綺麗に収納されてているようで窮屈には感じない。
「座りなさい。お茶はいるか?欲しいなら儂が入れるが」
「いえいえいえ、大丈夫です。それよりも俺をここに呼んだ理由を教えてほしいんですが」
ソファーに腰を沈めながら、食い気味に爺さんの提案を断る。偉い人にわざわざお茶を入れてもらうわけないだろうが。
「そうか、なら仕方ない、本題に入ろうか。お主を銅級にランクアップさせてやろう」
………えっ
「えっ、いいんですか?」
いやいや、そんな感じでいいの?最悪殴り合いぐらい覚悟してたんだが、それとも何か裏があるのか。
「ふむ、実はオウガからお主のことは何となく聞いておってな。見込みがありそうな奴がいたと。おぬしがわざわざ低レベルでゴブリンファイターを倒してきたのも、オウガから聞いた話が理由じゃろ?」
「えっと、ええ、まあ。ちょっと金が欲しくて、無理しちゃいましたね。」
「ほっほっほ。なに、格上相手に生きているなら上々。有望株を燻らせておく趣味は無いのでな」
修羅場をくぐってきたのだろう。話の最中から、その目に映る覚悟と滲み出る強さ。死線を乗り越えることで強くなる事を知っているのだろう。
聞きたいこともあるがあまり深入りは良くない。取り敢えず話題を変えよう。
「ありがとうございます。………ところでオウガって、多分あのアフロ頭の人ですよね。知り合いなんですか?」
「むう、オウガの奴、名前も名乗っとらんのか。お主の言った通り、そのもじゃもじゃアフロ頭の熊みたいにデカいおっさんがオウガじゃ。あやつは友人の息子でのう。子供の頃から王国騎士を夢見とったから、いろいろと世話を焼いてやったんじゃよ」
「騎士には成れたんですか?今は冒険者をやってるようですが」
「十年前にな。だが、最近何かあったらしく、騎士団をやめてしまったようじゃ。あやつは、俺の問題だから気にするなと言っておったが心配でのう」
やっぱりか。特に描写はされて無かったが、オウガは周りに危害が及ばないように遠ざけてたっぽいな。だが、俺に目をつけられたのが運の尽き、死んでもらうわけにはいかないなあ。
「そうなんですか。確かにそれは心配ですね。オウガ…さんのアドバイスのおかげで目標を持って頑張れたんです。少し気にかけておいてくれませんか」
「そうじゃな。あやつも大人になったとはいえ、儂からしたらまだまだ子供。もう少し気にかけてみよう。お主も何かあれば相談しに来なさい。この推薦状を受付に渡せば銅級にしてもらえる」
「ありがとうございます。それでは失礼します」
何回か頭を下げながら部屋を出ていく。
幸運にも未来を変える一手を打つことができた。まだまだ足りないが、それでも大きな一歩だ。
「15歳にして銅級か。全く、今日までで何人の少年少女が銅級以上になっておるんじゃか。………魔王復活、近いのじゃろうな」
扉の閉まった部屋でため息を吐く老人。その目には未来への憂いを帯びていた。




