095 東進16 ──雨季
──帰り道。途中から、僕が先頭になって帰途に就く。
時々、後のスッカさんの方を振り向くと、彼女は深く考え込むような眼差しをしていることが屡々あった。
そして、彼女は僕の視線に気が付くと、いつもの通りの笑顔に戻り、いつも通りの微笑みを返してくれる。
そんなことが何度か続くと、なんとも言語化出来ない違和感が僕の胸の内に芽生えたが、彼女に訊ねることも憚られ、当たり障りの無い話や、あるいは沈黙でもって帰路の時間を過ごした。
何を、思い煩っているんだろう?
この違和感の正体が気になり、僕は何度か道を間違え、その度にヒー太たちに連れ戻されるという失態を繰り返していた。
そんなカッコ悪い感じの帰り道ではあったが、お昼前には壁蔵たちの元に無事到着。
そしてタイミングよく、帰宅と同時に大粒の雨が空から大量に落ちてきた。
その出来過ぎた幸運に、次は悪いことが起きるに違いない──そんな嫌な予感がお腹の奥に渦巻いた。
27年生きてきて、すっかり身についてしまったネガティブ思考。“我ながらみっともない”とか“卑屈だなぁ”とか思いつつ、スッカさんに声を掛ける。
「また、雨が降ってきちゃいましたね」
「はい。ギリギリ、セーフでしたね。流石、アスベさんです」
この時、“何が流石なんだ?”、と心に微かな引っ掛かりを覚えたが、続く会話に流されて、深く考えることはしなかった。
「しかし、最近は雨がよく降りますね」
「今はもう、雨季に差し掛かっていますからね。あと四、五日もすれば、一週間、朝から晩までずっと雨ですよ」
「えっ! そうなんですか?」
「はい。ご存じありませんでしたか?」
「知りませんでした。そっかぁ、雨季なんてあるんですね」
「遠い国から来られたのですから、知らなくて当然です。でも、アタシたちにとっては好都合かもしれません」
「と言いますと?」
「雨季に入ってしまえば、神聖騎士団の騎士たちも、おそらくですが……追ってこれなくなりますから」
「なるほど、それは助かります」
ありがたい情報ではあるけれど。うーん。朝から晩まで雨は困る。
あと四、五日のうちに、バオバブ広場に辿り着かねばならないということか。
この日はもう移動は諦めて、僕らは雨が降り頻る中、土かまくらで午後の時間を過ごすことにした。
スッカさんは【簡易練成】で布を織ったり、籠を編んだり、予備の矢を作ったり……。
──僕は今後について、あれやこれやと思案した。




