094 東進15 ──狩り
──空はすっかり晴れていて、梢の隙間から零れる朝の日が、無数の光線となって降り注ぎ、まだ僅かに残る朝靄に天使の梯子を描いていた。
それは大層美しく、有り体に言えば、とても幻想的な光景だった。
そんな朝の空気を十二分に呼吸してると、なんだか厳かな気持ちが胸の内を満たしていく。
「アタシが先を歩きますから、アスベさんは後ろを付いて来てください」
スッカさんはそう言うと、表情をキリリと引き締め、僕を先導するように出発した。
彼女に従い、【気配感知】と【隠密】スキルを発動させつつ、黙って後ろを付いていく。
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前方には【隠密】スキルを駆使しながら、慎重に歩みを進めるスッカさんの背中。
そして、後方には気配を殺して付いて来る──フェネックたち。
スッカさんは妙に張り切っていた。昔の血が騒ぐのだろう。
森の中は様々な動物の鳴き声に満ちており、四方八方には様々な生命体の気配が点在している。
僕は何度も鳥や小動物の気配を掴んでいたが、彼女はまるで気づいていない様子。
現時点では、僕の方が探知能力が高いのだろう。
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20分ほど、森の中を進んでいると、スッカさんがそっと片手で合図をくれた。
彼女の指差す方を見てみると、20メートルほど先の木の枝に、鶏くらいの大きさの鳥が一羽、羽を休ませている。
僕の【気配感知】に先程から引っ掛かっていた鳥だ。
スッカさんはその場に立て膝を突く姿勢になり、矢を番えた。
狙いを定め、意識を集中させる彼女の横顔は凛々しく、澄んだ瞳の中には透き通るような静かな光を宿している。
彼女は、時が止まったような空間の中で、静かに矢を放った。
その矢は見事一撃で鳥の心臓部分を射抜き去り、鳥が真っ逆さまに地に落ちる。
ミー太、ツー太、カー子が獲物の元へ走りだし、小躍りするような様子で鳥を咥えて戻ってきた。
スッカさんが少しはしゃいだ様子で、獲物を手にすると、流れるような動作で鳥の頸を刎ね、逆さまにして血を抜き、毛を毟り、その後、指でズルズルと内臓を引きずり出した。
最後は、ミー太に水を出してもらい、鳥の内部を丁寧に洗う。
「久しぶりでしたけど、意外と体が覚えているものですね。でも、お湯があればもう少し手早く、毛を毟れたかも」
僕は少し引きながら、彼女のすることを黙って見ていた。
スッカさんが慣れた手つきで、鶏肉を大きな木の葉で包んで皮袋に入れると──。
「今日はこれだけあれば、晩御飯は十分ですね」
そう言って、彼女は機嫌良さそうに皮袋を背負った。
現地人は逞しいなぁ……
そんなことを思いながら、僕はぼんやりと彼女の後姿を見つめていた。




