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093 東進14 ──当然のように話しが盛り上がることはなく


「アタシ……怖いというか……気持ち悪くないですか?」


 一瞬、凍結状態になりながらも、僕はなんとか言葉を返した。


「え、何言ってるんですか。そんなこと全然ないですよ」

 やや早口に、動転しながら否定の言葉を口にする。


「本当にそう思ってますか? 目が八個もあるって、ヒト族からみると、異様に見えるんじゃないですか?」

 スッカさんは観察するような眼差しを、じっと僕に向けてくる。


 これには内心、かなり動揺した。

 本音を言うと、彼女の言うとおり、目が八つもある人間は……グロテスクだ……。

 正直、彼女と出会って数日経った今でも、たまにギョッとすることがある。


 その一方で、僕は彼女を美しいとも感じていた。これは本心だ。



 僕は言葉を選びながら、慎重に応じた。



「初めてお会いしたときは、確かに……目が八つもある人間に会うのは初めてで……驚きましたけど、今はそんなこと思っていませんよ。それと……矛盾したことを言うようで、変かもしれませんが…………なんと言っていいか難しいのですが……スッカさんのことは…………綺麗な人だな、って思っています……」


 実際、彼女の外見は若かりし頃をしのばせるようなそれで、昔は随分とモテたんだろうなと思わせた。


 さらに言うと、彼女の立ち振舞いには女性としての自信のようなものが、自然とまとわりついていて──。

 その優々たる所作や、会話の端々に見せる恬淡てんたんさと爛熳らんまんさ、彼女が持つ胆力や寛容さ──そういったもの全てが、彼女を余裕のある、眉目みめ好い大人の女性に見せていた。


 そんな寸感が思わず口から滑り出そうになったが、慌ててそれらの言葉を飲み込んだ。

 そこまで言うと、流石に気持ち悪がられるだろう。

 


「本当ですか? まあ、お世辞でも嬉しいです。……それはそれとして、こうして額を隠していれば、ヒト族と見た目は変わりませんよね?」


「そんなことを気にして手拭いを作ったんですか。気にすることじゃないですよ、そんなの。というか、自分も気になっていたんですが……スッカさんの方こそ、僕のことが……なんというか……嫌じゃありませんか? その……これまでヒト族に酷いことをされていた訳ですし。あと、僕、禿げてますし……外見もブサイクですし……。ヒト族に僕のような容貌のヒトって、いないですよね?」



「…………ヒト族のことは、正直言って……今でも憎んでいます……でも、アスベさんは別です。アタシの恩人ですから」


 スッカさんは禿についても、ブサイクについても言及することなく、言葉を返した。


 僕はそれを彼女の優しさだと受け取って、その話を深く掘り下げることはしなかった。


 

 ・

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 その後、当然のように話しが盛り上がることはなく、僕らは食事の後片付けを済ませると、狩りに出掛ける運びとなった。

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