表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
88/193

088 東進9 ──【浄化】スキル


 ◇


「そ、そういうえば、スッカさんは【簡易練成】と【料理】スキル以外にも、何かスキルはお持ちなんですか?」

「アタシ、【浄化】スキルというのを持っているんですよ」


 ニンマリとした笑顔を作るスッカさんを見て、僕はこの話題を選択して正解だったと、一人、胸中でガッツポーズを作った。


「【浄化】スキル……ですか。どういうことが出来るんですか?」


 少し汚い川の水とかを綺麗にするスキルだろうか?


「今、アスベさんに使ってみてもいいですか?」

「えっ?」


 僕が虚を衝かれる形で、一瞬、フリーズしていると、彼女は右のてのひらを僕に向けてかざしてくる。

 その姿勢のまま留まること十数秒。


 身体が、淡い空色の燐光を帯びた。

 そして、体表がチリチリするような感覚に包まれた後、風呂上りのようなサッパリとした爽快感がやってくる。



「どうですか?」

 笑みを浮かべてスッカさんが聞いてくる。


「なんか……さっぱりした感じがします!」


 だが僕は、彼女の言葉で頬を平手打ちにされたみたいな──暗に“お前、臭かったんだよ”、と言われたような気がして、急激に恥の意識が込み上げた。

 日本にいた時分から、身形みなりに無頓着な僕ではあったが、流石にここまでされると感じ入るものがある……。


「あ、あの、今まで臭かったですか? すみません。ずっとここに来てから体を綺麗にする余裕もなかったもので……すみません……」


 だけどそんな僕に対し、スッカさんは眉根を寄せて、その後、慌てたように打消しの言葉を並べ立てた。


「あっ、そういうつもりでは。森の中で暮らしていると、それが普通です。だから【浄化】スキルって、村にいたとき、すっごく、みんなから重宝されて、誉められていたんです。強制労働所にいたときも、仲良のよかったエルフの子に喜ばれていたくらいで……」

「あぁ。そうなんですね。すみません。色々とこの世界のことが分からないもので……」


 再び、会話が冷え込みそうな予感に怯えながら、僕は続く言葉を探していた。

 【会話】スキルというものがあるのであれば、今すぐにでも取得したい。


 だが、そんな僕に助け舟を出してくれるかのように、スッカさんが言葉を継いだ。


「あっ、そうだ。魔石で武器を強化してみましょうか? うまくいかなかったら、ごめんなさいですけど」

「あっ! はい。是非お願いします」


 そう返事を返しながら、僕は集めた魔石を全て、皮袋から取り出してスッカさんの前に広げた。そして、二振りの剣を、魔石の横にそっと並べる。


「すごい……よく、こんな沢山の魔石を集められましたね……」


 感嘆の言葉を発しつつ、スッカさんは魔石を一つ一つ手に取り、めつすがめつ品定めを始めていった。


 やがてこれだ、と思った魔石を剣の近くに置くと、彼女はそれらに向けて両手をかざす。


 その状態を維持すること数分間……手を翳した空間がオレンジ色の光に包まれる。


 そして、さらに数分後。



 ・

 ・

 ・



 スッカさんの手元に顕現したのは……グニャグニャに曲がった一振りの剣……。

 ねじ曲がり歪んだその姿は、飢えと渇きに耐えかねて、息絶えてしまった砂漠の旅人のようだった……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ