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082 東進3 ──魔石


 ハヤナの先導に従って、東に向かってひたすら進む。

 

 歩きながら、僕はスッカさんに尋ねた。


「そういえば魔物を倒すたびに、『魔石』という石が手に入るんですけど、これってどんな使い道があるかご存知ですか?」

「あぁ。それですか。アタシ達の村では素材に使っていましたよ」


 スッカさんは事も無げに即答した。


「素材……ですか?」

「はい。それを武器や防具に取り込むことで、性能が凄く上がるんです。それ以外では、村の防壁の補強とかにも使ってました。防壁の土壁に取り入れるだけで、只の土壁が固く、丈夫になるんです」 


「へぇ……」

「魔術が堪能な他の亜人種なら、魔力を溜めたり、魔術を込める、といったことも出来る……と聞いたこともあります。八ツ目族は魔術は不得手なので、詳しいことは分からないのですが……子供の頃、村の長老がそんなことを仰っていました」


「それは興味深いですね。ミー太が水魔法で作った水を魔石に溜めたり出来るのかな? 今度、色々試してみたいところですね。ちなみに、スッカさんはこの魔石を使って、武器を強化したり出来ますか? なんというか……神聖騎士団から預かった剣を少々持て余していまして……」

 そう言って、腰に下げていた剣をスッカさんの前に掲げて見せる。


「うーん……アタシは【簡易練成】っていうスキルを持っていて、簡単な武器や道具の練成なら出来るんです……でも、魔石と武器の融合……これは【魔石融合】というスキルなんですが……」


 そこで彼女は言葉を溜めた。

 

「…………」


 続くところを無言で待つ。


「……アタシも若い頃、何度かやったことがあるんですが……一度もうまくいかなくて…………まだスキルを獲得出来ていないんです…………」


 返ってき彼女の返事は、やや尻すぼみ。眉根もなんだか薄い八の字をていしてる……。



「うーん。無理そうですか。残念です……」


 だが僕が諦めようとした、まさのその瞬間、彼女は前言をひるがえした。


「あっ、でも……! 村にいた時に大人たちがやっているのを、子供の頃、隣でよく見ていたんです。それを思い出しながら、やってみることは出来ますけど……」


 彼女は少し悩む風にそう言うと、パッとした感じで表情を切り替えて、後の言葉をこう続けた。


「うん! 今はあの頃より、身体能力も上がっているし、出来るかもしれません。もし失敗したら、その剣、ダメにしちゃうかもしれませんけど、いいですか?」


 笑顔で【魔石融合】のチャレンジを申し出たスッカさんに対し、当然こう答えるしかない。


「是非、お願いします」


「はい。さっそく、今夜やってみますね」

「お手数かけてすみません」


「そんな、そんな。失敗するかもしれませんし」

 そう答えたスッカさんは、少し神妙な表情を作った。そして、僕の目を真っ直ぐに見つめると…………。



「それはそうと、アスベさんて凄いですよね。奴隷紋の消し方を知っていたり、神聖騎士団の人と戦って勝ったり…………一昨日の夜も……あまり覚えてないんですけど、大きな魔物を簡単に倒したり……」


「いや……そんなことは……奴隷紋の件は、ヒー太たちの手柄ですし……」


「いえいえ、そもそも、そうやって動物を仲間にしてる時点ですごいんです! それにアスベさん自身も随分と、強いようですし……!」


 八つの瞳で僕をしっかり捉えながら、畳みかけるような彼女の口調は、なんだか高揚するように弾んでいる…………そんな彼女に対し、僕の言葉は自然とよどんだ。


 普通に生きていて、人に褒められることが皆無であるため、どう反応してよいか分からず、返答に窮したのだ。

 当意即妙な返事をして会話を転がすスキルなど、僕には実装されていない。


 だけど構うことなく、スッカさんの饒舌は、軽快さを増してゆく。


 深く暗い森の中。彼女はテンポ良く歩き、リズムよく言葉を紡ぎ続けた。

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