079 スッカ8 ──ユニコーン・キャメル
──翌朝。
スッカさんが全快した。
彼女は土かまくらの前で、軽く屈伸したり、腕を前後に振り回したりして自身の体の動き具合を確認している。
森の天辺からわずかに零れる朝の光が、祝福するように彼女に優しく降り注ぎ、長く黒い髪の中をひらひらと踊っていた。
「なんか、凄く体が軽いです! 力が滾滾と湧いてくるみたい」
「それは良かったです」
スッカさんは試合前の運動選手がそうするみたいに、体を左右に捻りながら嬉しそうにそう言った。
ワニやサルの魔物の粒子を浴びてレベルが2つか3つ、上がったのだろう。
「あっ、そうだ。ちょっと確認したいことがあるのですが、スッカさんもご一緒しませんか?」
「ぇ? あっ、はい」
ふと思い立ち、僕はスッカさんを誘って、とある場所に赴くことにした。
僕らは藪や灌木を左右に掻き分けながら、土かまくらから少し離れた茂みの中にいる壁蔵たちの元へと向った。
辿り着くと壁蔵の脇に大きな樹が一本立っていて、そこに二頭の大柄な動物が係留されている。
──一昨日、神聖騎士団から頂いた駱駝だ。
「どうですか?」
駱駝たちを一瞥した後、少し得意げに、スッカさんの方を振り向いた。
二頭とも、すっかり変わり果てた姿になっている。
額に角が一本と、背中には小さな翼。
順当に魔物化してくれたみたいだ。
“──【魔物】ユニコーン・キャメル【レベル1】──少しだけ飛べる駱駝。“
それにしても神聖騎士団様の駱駝は凄い。まさかユニコーンに化けるとは。
駱駝に角と羽が生えるだけで、全く別の生き物に見えてしまう。迸るオーラもこれまでとは別物だ。
なんとも優美で、気品さえ漂って見える。
僕は自分がこのユニコーンに跨がる姿を想像して、少し可笑しくなった。
なんとも不自然で、不相応で、違和感溢れる。
彼らに跨っただけで、理由もなく世間から石を投げられそうだ。
僕はこの駱駝たちを、コブオとコブコと命名した。
この名前、彼らの外見とは不釣り合いだが、仕方が無い。
ヒー太達との間に、名前格差を作るよりはいいだろう。
そんなことを思いながら、美しくも逞しい、コブオとコブコの姿を満足げに眺めまわす。
そんな僕の隣では、スッカさんが一晩で変わり果てた駱駝の姿を前にして、目を丸くして驚いていた。




