076 スッカ5 ──慣れない笑顔と、筋肉痛
──翌朝、目を覚ますと、雨が上がっていた。
足もとの草がその葉に存分に滴を宿らせ、零れる朝日を受けて、キラキラと煌めいている。
僕はスッカさんの寝ている、“かまくら”へと向かった。
昨晩、ツー太に頼んで、彼女のために新しいかまくらをもう一つ作ってもらったのだ。
そのかまくらの入り口の前に立ち、声を掛ける。
「おはようございます」
「はぁ~い。おはようございますっ。いててて!」
「大丈夫ですか? 起きられますか?」
「あっ、はい。大丈夫で、痛っ!」
彼女はそう言いながら、這い蹲るようにしてかまくらの外へ出て……首を懸命に上げて、僕の顔を覗き込む。
「筋肉痛……ですよね? 大丈夫ですか?」
そう言いながら、僕は膝を突いて目線を合わせた。
「は、はい……なんとか……っ……」
声がなんだか苦しそうだ。
「昨晩、魔物のエネルギーを大量に取り込んだせいですね。でも、しばらくしたら治るので、大丈夫だと思いますよ」
「ま、魔物ですか?……痛っ」
「はい」
「……?」
「……えぇっと、その件は後でお話しますので、それはそれとして、肝心の喉の紋章は…………」
説明はちょっと面倒になりそうだ。そう思って、後回しにしてスッカさんの喉元に視線を向ける。
「念のため、ちょっと喉の下のあたりを見せて頂けませんか?」
「??? こう? ……です……か……?」
そう言いながら、彼女は苦しそうにしながらも、なんとか顎を小さく上げた。
「……うん。やっぱり綺麗さっぱり無くなってるようですね。よかったです」
「……?!」
「えっと……それと……筋肉痛以外に、体調におかしなところはありませんか?」
「えぇっと……筋肉痛以外は……多分……大丈夫……ですっ」
顔を顰めながら、スッカさんがそう答える。
「はい。それなら……とりあえずはよかったです」
「はい……」
「では、僕はこれから朝ごはんの準備をしますが……といっても、ワニの肉を焼いただけのものですけど……ワニ肉は食べられますか? 無理なら魚を捕りに行ってきますけど」
「あっ、ありがとうございます。ワニ、食べたこと無いですけど、多分、大丈夫ですっ……痛っ」
「分かりました。出来たら持って来ますね。それまでゆっくり休んでいてください」
僕は慣れない笑顔を無理に作って、スッカさんのかまくらを後にした。
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