074 スッカ3 ──奴隷紋
──スッカさんは、強制労働所での暮らしについても、僅かばかり語ってくれた。
同じ時期に連れてこられたエルフの女の子と、言葉は通じないけど仲がよかったこと。
たまにエルフの秘薬と思われる、若返りの薬を内緒で飲ませてもらっていたこと。
いつか、エルフの国へ行き、若返ってもう一度人生をやり直したいということ……。
──夜中になっても、僕らの会話は切れ切れに、だけど途絶えることなくポツリ、ポツリと続いてゆく。
それはとても清らかで、幸福で……贅沢な時間だった。
かまくらの中、焚き火が作り出す彼女の影が、壁の中で揺れている。
その影の揺れに合わせるように、フェネック達が尻尾を振りながら僕らの話を聞いていた。
──だが、そんな穏やかな時間が流れる中。
突然、スッカさんが喉元の紋章を抑えて呻き始めた。
紋章が警告を発するかのように青白い閃光を放ち、爆発するようにかまくらの中で輝き始める。彼女がのたうつに応じて、かまくらの外へと逃れた光芒が、豪雨の幕に青白色の動線を描いた。
神官の奴隷化の魔術に違いない……
スッカさんが彼等の下から逃れた所為で、それが発動したんだっ!
咄嗟にそう思い、慌ててシロに回復魔法をかけてもらうが、効果は何も見られない。
彼女の表情に険しい皺が刻まれ、その皺が生き物のように蠢き、無数の皺を増殖させる。
僕も顔を歪ませて、何か救出法はないかと考えを巡らすが、思考は何にも引っ掛かることなく、滑り続ける。
脳味噌はパニックを起こし、いつものように僕を周章狼狽するだけの役立たずにさせていた……。




