072 スッカ1 ──八ツ目族
──彼女は名は「スッカ」といった。
八ツ目族という、亜人の一族の出であるという。
その八ツ目族の一族は、スッカさんが17歳の時にヒト族の集団に襲われて……皆殺しにされた──。
その時、人間たちは彼女一人だけを“記念として”奴隷に落とし、今の歳まで彼らの下で使役させていたのだという。
スッカさん曰く──。
この世界のヒト族は、亜人たちを蔑視しており………………捕縛しては虐殺したり……もしくはゲットーに収容し、坑道堀りや機織などの単純労働業務を強いて、怪我や老いで利用価値がなくなると、ゴミのように捨てるのだ──と語った。
そして性質の悪いことに、ヒト族の神官は亜人を使役する不思議な力を持っている…………とそこまで話すと、スッカさんは小さな顎をくいっと上に持ち上げて、喉元にある黒い紋章をつんつんと指でさし示した。
「これは、“奴隷紋”って言われてるものなんですけど」
「……」
「これのせいで、ヒト族に歯向かえないんですよ、アタシたち……」
そう言うと、彼女は俯き、視線を焚火の根元あたりにそっと落とした。
「…………」
「逆らったり、逃げたりすると、紋章に込められた神官の魔術が発動して……殺されるんです……」
「………………」
「昔、そうなってしまった亜人の人を見たことがあって……」
「……………………」
どうリアクションしてよいか分からない。
随分と重たい話だ。だけど、彼女は信じられないような落ち着いた声音で、淡々と話を続ける。
八つの紅い瞳が再び、僕へと向けられた。
「だけど、アタシ、本当に驚きました」
「……えっ……?」
突然の話の変転に、どう相槌を打っていいものかとフリーズしてると、こちらの困惑をほぐすように彼女が言葉を畳みかける。
「普通、他の種族同士で、言葉って通じないので……八ツ目族以外の人でアタシの言葉を理解したり、話したり出来る人に会ったのは、今日が生まれて初めてです」
「…………」
「……」
「……あぁ……そうだったんですね……」
彼女の表情から視線を外せず……相変わらずどう反応していいものか──正しい言葉を見つけ出せないまま、曖昧な返事をなんとか喉から絞り出す。
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