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067 亜人2 ──蜘蛛の子を散らすように……


 彼等の反応は、先程の騎士団員たちのそれと似たものだった。


 瞳に嫌悪と殺気を宿すか──不安と怯えを湛えるか──あるいは、関わり合いにならないよう、僕の存在に気付かぬ素振りを決めこむか──そのいずれかだ。


 平静さを保っている者が……どれほどこの場にいることか……。



 それはそれとして、僕はヒー太たちに命じ、生贄たちの鎖を噛み千切ってもらうことにした。

 このまま放っておく訳にもいかないだろう。


 【テイム】スキルで念を飛ばすと、五匹のフェレットが四散して、柱と異形の存在を縛り付ける、金属の鎖に飛び掛かる。と同時に小さな口で噛みついた。

 愛らしい顔立ちとは裏腹に、魔物化したフェネックの歯は鋭く、顎も強靭だ。

 すぐさま、鎖が崩れるように石畳に落ちていき、ジャラリ──という冷たい音が重く響いた。




 その瞬間。解放された生贄たちの間に、緊張が走る。

 “どうしよう……”という気まずい雰囲気が、またたく間に醸成された。


 解放されたのは嬉しいが、解放してくれた人物が不審者以外の何者でもない。

 まずは礼を言うなりコミュニケーションを取るべきだろうが、最初のアクションをどう起こしてよいのか分からない。いや、そもそもそれ以前に話し掛けることが適切なのか?──悪手であるか可能性も濃厚だ。どう身を振るべきが最善なのかと、考えを巡らしつつも、判断が下せない──生贄たちの身体の強張りは、そんな逡巡を現していた。


 一方の僕も「どうしよう……」と困惑している。

 僕をどう扱ってよいか戸惑う亜人たちに対し、僕自身もどう対応してよいのか分からず、フリーズしてしまったのだ。


 なんとも言えない居心地の悪さが、この場の空気を支配する……。

 

 やがて硬直したままでいる僕の脇を、とある亜人がすり抜けるようにして通り過ぎた。そしてそのまま、速度を上げて、タッタッタと祭壇の階段を駆け下りる。


 それを皮切りに、他の生贄たちも次々に先を争うようにして、僕の脇を素通りし、石段を小走り気味に降りてゆく。まるで蜘蛛の子を散らすように……。

 



 後には、僕とヒー太たち、そして中央付近の柱の前に──一人佇む小柄な女性が残された。






 その人も異形だった。


 遠目に眺めるに、綺麗で上品そうな普通の女性に見えたが、よく見ると、額には六つの瞳が──紅く妖しく輝いている……。

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