066 亜人1 ──異形
そこには九本の石柱があり、それぞれの柱には生け贄と思しき生命体が、鎖で磔にされている。
彼らの姿を見た瞬間、恐怖で身体が硬直し、心臓が痛いくらいに縮みあがった。
眼の前の光景を、脳がうまく解釈しない。
理解可能な出来事として、既存の何かに落とし込めない……。
磔にされた“人っぽい”生き物は、みな、見たこともない異形の生命体だったからだ。
真っ先に視線が向かったのは、茶色のカマキリの姿をした生き物だった。
それは身長が二メートルほどあり、カマキリの六本の手足のうち、二本の足が人の脚に置き換わった姿をしている。
二本あるはずの鎌のうち、一本は肘の部分から下を失って、緑灰色の体液をトロトロと垂らしていた……。
それは直視する勇気を奮い立たせるのが困難なほどの悍ましい姿……。
他には身長170センチくらいの、人の手足を持つ魚がいた。
その魚の口の下には、人の形をした顔がついている。
大きな魚を背負った人間、と表現すれば分かりやすいだろうか?
その魚人間は何故か鱗の大半が剥がれており、見るからに衰弱していた。
半開きにした口をパクパクさせながら、ドロリと濁った瞳を宙空に彷徨わせている……。
僕が生理的に受け入れられたのは、ファンタジー世界のドワーフのような姿をした、毛むくじゃらの矮躯の老爺くらいのものだった。
ゴブリン、オーク、全身毛だらけの狼男、身長50センチくらいの緑色の小人、蛇の胴体に人の上半身を持つ女性……などもいる。
ファンタジー世界でいう、所謂、亜人という人種なのだろう。
たが……どの亜人も……実際に目の当たりにしてみると……生々しくて気味悪く……全身が総毛立った……。
全員に共通しているのは、年老いてるか、怪我をしているかのどちらかで、みな、生気が無い。
そしてすべからず、身体のどこかに直径20センチ程度の大きさの、細緻な模様が施された紋章が印されていた。
おそらく生け贄だか奴隷だか、そんな感じの烙印のようなものなのだろう。
九人の亜人たちの顔が、ドミノ倒しのような連鎖反応で振り向かれ、視線が僕へと集った。




